「・」(ラジカル) |
なんだこの題名は?と思った人がほとんどであろう。これは ラジカルである。ラジカル?っていわれても大学で化学を習っている習った人以外はわからないだろう。そこで、まずラジカルについて解説しよう。
▼ラジカルとは?
ラジカルとは簡単にいうと原子の周りを取り巻く電子のうち、普通電子は二つずつペアで同じ軌道上に存在している(共有電子対)のだが、何らかの条件で、同じ軌道上にひとつしかない電子(不対電子)のことをいう。 (中性子1つ追加,除去したもの、ラジカルアニオン,ラジカルカチオンというのもある)
例えば、意外と知らないのが、 空気中の酸素もラジカル状態で存在していると言うこと。三重項酸素分子は、2個の不対電子を有するビラジカル(二つの ラジカル)とみなされている。 これ→ ・OーO・
では、どんな特徴、有用性があるのか?
▼ラジカルの特徴
1、ラジカルの大部分は不安定な状態なので、反応性に富む短寿命の中間体として存在していているから、かなりの速さで他の非ラジカル種と結合をして別の化合物を生成すること。
2、独自の反応性を示す(中性、温和な条件下で進み、高度の化学的選択性、位置選択性、立体選択性を有する)
3、イオン反応に比べて、立体障害や溶媒効果を受けにくい。
4、極性変換できる。(極性変換については有機用語参照)など、有機化学で重要な役割を示している。
ここからはちょっと難しい。 反応の例としてトリブチルスタンナンによるラジカル環化反応の連鎖機構を 述べてみよう。(図1)
図1 トリブチルスタンナンによるラジカル環化反応の連鎖機構
ラジカル反応は開始剤(initiator)を与えると連鎖反応で勝手に反応が進む。 開始剤としてAIBN(2,2-アゾビスイソブチロニトリル)を用いる。 まず、これが開始反応としてだけ使って、後は勝手に進んでくれるので触媒量ですむ。 次に、環化のところだが、普通のイオン反応でラジカルのところがカルボカチオンならば6員環が生成してしまう。(図2)これが位置選択性で異なっている部分である。
図2 図1の下から3行目のラジカルがカチオンだった場合
その他のラジカルの有用な反応はこちら↓ ・ラジカル重合 ・チオールのアルケンへのラジカル付加 ・光化学反応すべて などがあります。 それでは、どのように生成するのか?
▼ラジカルの生成
ラジカル生成には主に2つの方法がある。 1、熱、光、放射線などのエネルギーを供給する。 2、酸化還元反応を利用する。
空気中の酸素は光によってラジカル化しているんだね。
まず1について例をあげてみよう 光を使うとラジカル生成する。まあ!なんて簡単!である。 しかし、もちろんラジカル生成のためには開裂する結合の結合解離エネルギー以上のエネルギーを与えなくてはならないから、そう単純にいかないものもある。
生成例としてアゾ化合物をあげる。 脂肪族アゾ化合物は一般に安定なトランス異性体として存在しているが、光照射すると不安定なシス体に異性化し、多くの場合さらに熱で分解してアルキルラジカルを生ずる。(図3)
図3 アゾ化合物のラジカル化 アゾ化合物として例えば、先ほどのべたAIBNは室温で光によりアルキルラジカルと窒素に容易に分解する。 次に2について述べる。 代表的なものは一般過酸化物と金属イオンによる酸化還元反応により生じる(図4)
図4 酸化還元反応によるラジカルの形成
例としてはFenton反応剤。過酸化水素とFe2+の組み合わせでヒドロキシラジカル・OHを生じる。 簡単にラジカルについて述べてみた。もちろんこのほかにもたくさんの用途、生成方法がある。 興味をもった方はラジカルについての参考書で確認してみよう。 有機って面白いよね!! (by ブレビコミン 2000/7/9)
▼参考、関連文献
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【用語ミニ解説】
取り扱い難いフリーラジカルを制御すれば合成への新しい応用が見つかる。溶媒に水が使えれば人へも環境へもやさしい。そんな新しいフリーラジカルの使い方を解説。
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