DNAと遺伝情報 |
「遺伝子」「DNA」などの言葉は今ではすっかりおなじみです。今回は、高校生物をかじった方ならご存じかもしれませんが、そのDNAの構造の成り立ちと、どのようにして遺伝情報が伝えられているのか、といったことについて基本的な部分をお話ししたいと思います。
▼ 核酸とヌクレオチド
塩基部分は各核酸について4種類づつ存在していますが、DNAとRNAでは塩基の構成が微妙に異なります。DNAではThymine(T)が構成要素に入っていますが、RNAではそれがUracil(U)に置き換わっています。
核酸は5'位と3'位との間にリン酸を挟んだリン酸エステル多量体の形で存在します。一端は3'炭素についた遊離ヒドロキシル基(3'末端)、もう一端は5'炭素についたリン酸残基(5'末端)です。
RNAの構造は、基本的にはDNAと同じです。構成塩基の種類と、糖部分がリボースであることが違いです。RNA分子はDNAに比べて小さく、分子量は35000程度から存在します。
▼ DNAの二重螺旋構造
1953年、James D. WatsonとFrancis H. C.
CrickはX線結晶構造解析などの結果から、DNAの二次構造に対するある提案を行いました。それは、「DNAの構造は、2本のポリヌクレオチド鎖が絡み合った二重螺旋構造である」、というものでした。それぞれのヌクレオチドは右巻きで、互いに逆方向を向いています(図参照)。
A-T間の水素結合は2本であるのに対し、G-C間の水素結合は3本存在します。DNAは熱を加えると二本鎖がほどけて一本鎖になるのですが、G-Cペアの方が結合は強いため、完全にほどけて一本鎖になる時の温度は、DNAのG-Cペア含有量にほぼ比例します。
▼ 核酸と遺伝
生物は、DNAに記述された塩基配列を読みとってRNAに写し取り(転写)、そのRNAの形で不必要な情報を除去(スプライシング)し、必要な情報のみを使ってタンパク質を合成する(翻訳)というプロセスをとっているわけです。細胞分裂などの際、全く同じDNAが作られる必要がありますが、このプロセスが複製です。DNAの場合半保存的複製という方式がとられます。
▼参考、関連文献
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・「マクマリー有機化学
第5版(下)」John McMurry 東京化学同人
・DNA 一般の読者に遺伝学を説明している類書は多く出ているが、本書のほかにない特徴は、あの有名なワトソン&クリックのジェームス・ワトソンその人が著者であることだ。ワトソンと共著者のアンドリュー・ベリーは、メンデルからゲノム配列解析までの遺伝学の歴史を明確に分かりやすく説明している . . .
▼関連リンク
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・セントラルドグマ |