芳香族って何モノ? |
高校化学を学んだ人ならだれもが何度となく耳にする「芳香族化合物」。今回はこれにスポットを当てた話を少々。 ▼ 芳香族とは
ほうこう[芳香] やわらかな感じの、いいにおい
芳香族と名前はつけども、特に臭いのしないもの、香料として用いられるもの、柔らかな香りどころかいかにも有機薬品的においを発する物質、といった風に実際は様々です。芳香族という名前はどうもその臭いとは関係ないようです。
▼ ベンゼンと亀の甲
しかし実験によると、ベンゼン分子では、6本の結合はすべて同じ長さの平面正六角形構造で、しかもその長さは単結合と二重結合のほぼ中間ということが分かりました。そこでKekuleは以下の図3のように二つの構造が素早く相互変換している、というモデルを考えました。
現在ではこの考えは間違いだとされていますが、このモデルが有機化学界に与えた影響は多大なものでした。
▼ 非局在化エネルギー
さて、このようにπ電子が非局在化すると分子にとってどういうメリットがあるのでしょうか?一般に、電子が非局在化すると分子構造は安定する、という事実があります。
▼ Huckel則
ドイツの学者Huckelは、「一般にπ電子が4n+2個ある環状共役系は安定な構造である」ことを示しました。これがまさに広義の芳香族化合物の定義で、この規則は提唱者の名を取ってHuckel則と呼ばれています。ベンゼンは6つのπ電子を持つn=1の場合に当たるわけです。
▼ ベンゼン環を持たない芳香族化合物
フランは酸素原子の非共有電子対を一組π電子として使うことで6π電子系を構成しています。シクロオクタテトラエンは金属カリウムなどから電子を二個受け取ったジアニオンの形では10π電子系を構成し、非常に安定に存在します。 一方、π電子が4n個の共役系をもつ化合物を特に反芳香族化合物と呼び、Huckel則に従わないので安定に存在しにくいとされています。上記のシクロオクタテトラエンを例にとってみると、電子を受け取ったジアニオンの状態では10π電子系で芳香族性を示しますが、電子を受け取る前は8π電子系の反芳香族化合物です。シクロオクタテトラエンジアニオンは8つの構成炭素原子が同一平面上にあり、π電子が全体に非局在化した形をしていますが、非アニオン型シクロオクタテトラエンは下図に示すようにでこぼこした形をしており、π電子軌道がうまく共役系を形成できず、電子が非局在化することが難しくなっています。そのため、非アニオン型はジアニオン型より不安定になります。
有機って面白いよね!! (2002.2.7 by cosine)
▼参考、関連文献
・マクマリー有機化学〈中〉東京化学同人
▼関連リンク
・有機って面白いよね!〜香りの化学〜 |
【用語ミニ解説】
■Friedrich・A・Kekule
(写真:Wikipediaより)
1866年に"ベンゼンの炭素原子は環を作り、しかも単結合と二重結合が交互に結合しており、それぞれの炭素に水素が1個ついている’という仮説を唱えた。 (有機化学の偉人より)
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■非局在化エネルギー
delocalization energy。非局在化電子をもつ結果として
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