2001年化学関連ニュース |
21世紀の最初の年であった2001年も今日で終わり。明日から2年目に突入となる。
今年は一般ニュースとして、米ブッシュ大統領就任、小泉内閣の発足、狂牛病、米国の同時多発テロ等、コンピュータ関連では新型ウィルスの猛威、WindowsXPの発売、スポーツではイチローが大リーグで大活躍等々、様々な話題があった。 化学関連のニュースはどうだったであろうか?男性2人のグループ「Chemistry」もブレイクし、今年は化学ブームであった。(笑)それは冗談として、やはり日本で今年一番のビックニュースは、野依名古屋大学教授のノーベル化学賞受賞だっただと思う。それではインターネットで得られる情報を中心として、化学業界動き、技術・研究の動向、化学関連の賞、化学とインターネット関連、その他に勝手に分類して今年のニュースを振り返ってみることにしよう。 (注:ニュースへのリンクは当時のものであるためほとんど切れております。ご了承下さい。)
▼化学業界
・グラクソ・スミスクライン始動、医薬世界トップに並ぶ【化学工業日報/1.5】 http://www.chemicaldaily.co.jp/news/200101/05/02801_0000.html
・大正製薬−田辺製薬が事業統合へ、来春に持ち株会社【化学工業日報/9.18】 http://www.chemicaldaily.co.jp/news/200109/18/01101_0000.html
・米製薬大手の業績好調、新薬効果ハッキリ【化学工業日報/1.30】 http://www.chemicaldaily.co.jp/news/200101/30/02801_0000.html
いきなり製薬系の話題になるが、昨年の年末海外での、製薬企業グラクソ・スミスクラインの発足に始まり、日本でも製薬業界での再編が開始された年といえるだろう。10月1日に三菱東京製薬とウェルワイドが統合し三菱ウェルファーマが誕生した。大正製薬と田辺製薬の統合も破談にはなったが大きな話題である。中外製薬のスイスのロシュ傘下入りもあった。製薬外資大手企業は日本市場でいまだトップ10にはいないが、某外資大手の話ではこの先5年の間に多くの外資系大手がトップ10入りすると話している。日本企業の統合には企業文化等の違いもあり、統合することでの効率化等の利点が短期間で得られないという。といっても、製薬業界の統合、再編はさけられない。さて、来年はこの再編が加速されるのか、それとも・・。
・昭和電工、来月末めど国内1000人削減【日経/12.13】 http://www3.nikkei.co.jp/kensaku/kekka.cfm?id=2001121303908
・三井化・住友化のポリプロピレン事業統合、公取委が承認【日経/12.13】 http://www3.nikkei.co.jp/kensaku/kekka.cfm?id=2001121308408
・三菱化、ゲノム創薬の新会社設立【日経/12.11】 http://www3.nikkei.co.jp/kensaku/kekka.cfm?id=2001121105304
・ゲノム研究強化へ3年で220億円投資−三共【化学工業日報/1.19】 http://www.chemicaldaily.co.jp/news/200101/19/02801_0000.html
・三菱化学-富士通ゲノム創薬提携-都内で会見、合意発表【毎日新聞/3.5】 http://www12.mainichi.co.jp/news/search-news/841436/89bb8aw-0-1.html
・協和発酵、ケモインフォマティクス・システム構築【化学工業日報/4.13】 http://www.chemicaldaily.co.jp/news/200104/13/02801_0000.html
・欧米化学大手、1−3月期業績が軒並み悪化【化学工業日報/5.8】 http://www.chemicaldaily.co.jp/news/200105/08/02501_0000.html
・「社内カンパニー制」の導入【旭化成PR/5.18】 http://www.asahi-kasei.co.jp/asahi/jp/news/2001/ze010518_1.html
・欧米化学の業績に暗雲、2・四半期軒並み下方修正【化学工業日報/7.4】 http://www.chemicaldaily.co.jp/news/200107/04/01101_0000.html
化学系大手を見ると、米、日本景気がよくない。人員整理、事業統合、構造再編が多くの話題だ。多くの企業が、構造改革を行っている。また、今年は旭化成が社内カンパニー制を導入した。自主自立の部門体制を確保することによりフットワークを軽くできる。来年も増えていくだろう。企業の研究方向としては、昨年後半に引き続いてゲノム創薬、ナノテクノロジーへの投資というものが目立った。
▼技術・研究
・三井物産と国際石油開発が低公害軽油事業に参加【朝日新聞/12.28】 http://www.asahi.com/business/update/1228/001.html
・理研−科技団、分子素子の基本技術となるナノ配線に成功【化学工業日報/2.18】 http://www.chemicaldaily.co.jp/news/200102/08/01102_0000.html
・工場を変えるバイオ合成法 微生物で化学製品【朝日新聞/2.26】 http://www.asahi.com/science/waza/010226.html
・「シガテラ中毒」起こす海水魚の毒素合成に成功 東北大【朝日新聞/11.30】 http://www.asahi.com/science/news/K2001113000160.html
・京大、三菱化などとナノテクで協力【日経/11.13】 http://www3.nikkei.co.jp/kensaku/kekka.cfm?id=2001111304579
・三井物産、カーボンナノチューブ世界初の量産へ【日経/12.27】 http://www3.nikkei.co.jp/kensaku/kekka.cfm?id=2001122704183
・三井化学が次世代の重合触媒、メタロセンの300倍の活性【化学工業日報/4.17】 http://www.chemicaldaily.co.jp/news/200104/17/01101_0000.html
・たん白質の基本構造・機能を3千種以上解明へ−文部科学省【化学工業日報/8.13】 http://www.chemicaldaily.co.jp/news/200108/23/01101_0000.html
・三井化学、FI触媒ポリマーの用途開発加速【化学工業日報/8.31】 http://www.chemicaldaily.co.jp/news/200108/31/01201_0000.html
・カーボンナノチューブ利用で世界初の燃料電池/NECなどが開発
・JST−東大、日本人SNPs15万カ所の探索終了【化学工業日報/10.9】 http://www.chemicaldaily.co.jp/news/200110/09/02801_0000.html
やはり、ゲノム、ナノテクノロジー関連が多かった。私が目を引いたのは東北大の平間教授のシガトシキン全合成の達成のニュースである。同一分野なので知っていたが、まさか新聞に載るとは思ってもみなかった。同一分野だけに私もがんばりたいものである。
▼賞
・ノーベル賞:野依良治名古屋大教授が化学賞【CS】 http://www.chem-station.com/yukitopics/noyori3.htm
・柴崎正勝教授が Arthur C. Cope Senior Scholar Award, 2002 を受賞【柴崎研News/7.6】 http://www.f.u-tokyo.ac.jp/~kanai/acs-j.html
・岡崎廉治氏紫綬褒章受賞【日大】 http://www.jwu.ac.jp/etcpub/jokun.htm
・文化功労者にエーザイの岸氏【薬事日報/10.30】 ・文化勲章 中根氏ら5氏【産経/10.30】 http://www.sankei.co.jp/databox/paper/0110/30/html/1030sidebunka.html
今年は化学関連、特に有機化学関連の方の賞受賞が多い年だったように思われる。触媒不斉合成研究の東大薬柴崎教授のアーサーコープ賞の受賞、パリトキシン全合成のハーバード大岸義人教授の文化功労者等、有機化学を研究している方にとってはとてもうれしいことである。しかし、一番のニュースはやはり野依教授のノーベル化学賞受賞ですね。昨年も騒がれていただけに今年の受賞は確実だ った様子。来年も日本人の化学者の受賞を願いたい。
▼インターネット関連
・インターネットサイト“Specialty Chemicals Online”をオープン【協和発酵PR/7.15】 http://www.sp-chem.com/spchem/news_article.asp?articleid=63
・インターネット購買システムが本格稼働−旭化成【化学工業日報/10.9】 http://www.chemicaldaily.co.jp/news/200110/09/01201_0000.html
・ナノテクノロジーの最先端技術とビジネスを結ぶ新Webサイト「日経ナノテクノロジー」をオープン【日経BPPR/9.28】 http://www.nikkeibp.co.jp/info/newsrelease/newsrelease20010928.html
・プラスチックフィルム・シートに関するソリューションサイト開設【三菱化学PR/11.26】 http://www.m-kagaku.co.jp/rel/2001/112601.htm
今年は多くの化学系サイトが生まれた。協和発酵、三菱化学と大手企業も実用的なサイトをオープンし、日本の化学系のサイトもようやく走り始めたということろか。しかし、企業がサイトを運営するということは、いろいろな難しい点があるようである。今年の3月に開設されたファインケミカルオンライン(バーティカルネット)もそういう点において難しく、残念ながら閉鎖されてしまった。化学系のインターネット関連事業はこれからだということを期待したい。
▼その他
・三菱化学、特許報奨最高2億5000万円【日経/12.18】 http://www3.nikkei.co.jp/kensaku/kekka.cfm?id=2001121801361
・化学物質、安全基準以下でも「不安」【朝日新聞/12.14】 http://mytown.asahi.com/shiga/news02.asp?kiji=1458
・青色LED販売差し止め訴訟、日亜化学が敗訴【日経/12.20】 http://www3.nikkei.co.jp/kensaku/kekka.cfm?id=2001122008716
・特許出願、バイオ分野が着実に増加【化学工業日報/1.9】 http://www.chemicaldaily.co.jp/news/200101/09/01101_0000.html
ということで、簡単に2001年のニュースをまとめてみたが、あなたの思っている今年の化学関連ニュースはどうだったであろうか。ネットで得ることができるニュースをまとめたのでもっと大きな出来事や、重要なものがあったかもしれないがご容赦ください。それではまた来年。 (ブレビコミン)
▼関連リンク
・朝日新聞 ・読売新聞 ・産經新聞 ・毎日新聞
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【用語ミニ解説】
■グラクソ・スミスクライン
本社はイギリス。2000年12月。共に100年以上の歴史を持つグラクソ・ウエルカムとスミスクライン・ビーチャムとの合併により発足。
売上高:203億5900万ポンド (2004年度)
従業員:世界117ヶ国に約10万人以上
■ゲノム創薬
ゲノム情報を活用し、医薬品を論理的・効率的に作り出すこと 。
「ゲノム創薬」の基礎となる構造ゲノム科学と機能ゲノム科学は、どのような方向に向っているのか。また、そのゲノム解析情報がどのように創薬に活用され、ゲノム医療に貢献しようとしているのかについてもまとめる。
■社内カンパニー
社内分社制の一種で、企業が各事業部門をあたかも独立した会社のように分け、事業を運営する仕組み。ヒト、モノ、カネの経営資源を各カンパニーに分配し、独立採算を徹底する。
■ケモインフォマティクス
Chemoinformatics 。化学問題への計算機利用の方法の応用を含んでいる。即ち構造検索、スペクトルの解釈、化学的特性や分子構造の予報等のこと。
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シガテラ食中毒の主要原因毒。
■FI触媒
三井化学のフェノキシイミン触媒。高活性なオレフィン重合触媒で世界最高のエチレン重合活性を示す。
(図:三井化学より)
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(写真:柴崎研究室HPより) 東京大学大学院薬学系研究科 教授 。 新規触媒的不斉合成法の開発を精力的に行う。2005年には学士院賞を受賞した。
■岸義人
(写真:ハーバード大学HPより)
合成化学者。フグ毒テトロドトキシンや分子量が非常に大きいパリトキシンの全合成を達成。同門にノーベル賞を受賞した野依教授、弟子に現東大教授のアルカロイド合成の権威福山透らがいる。
ナノテクの産業応用を支援する専門メディア
■青色LED
青色発光ダイオード。 1993年、日亜化学工業の研究者だった中村修二・米カリフォルニア大教授が初めて製品化に成功。現在は窒化ガリウムが材料として使われているが、2004年、東北大金属材料研究所の川崎雅司教授(らの研究チームが価格が安い酸化亜鉛を用いた青色発光ダイオードの開発に成功した。
酸化亜鉛を用い青色ダイオード 東北大開発 コスト減期待 (ケムステニュースより)
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