冬の大敵インフルエンザ。毎年年末に流行が始まりますが、今年は暖冬の影響なのか遅めの流行になっています。
これまでケムステではインフルエンザのお薬に関して、発売ニュースやお薬の合成法がメインですが紹介してきました。それら記事のまとめと現行のインフルエンザ治療薬の分子構造を簡単に紹介しましょう。
インフルエンザ治療薬
現在インフルエンザの治療薬はその作用機序に併せて分類されます。現在インフルエンザとして診断されたら処方されるのは「ノイラミニダーゼ阻害薬」というお薬です。現在この分類のお薬は以下の4つ。処方される「商品名」でいいますと、リレンザ、タミフル、ラピアクタ、イナビルです。
リレンザ(ザナミビル)は英国の製薬会社グラクソ・スミスクライン社が開発した世界で初めてのノイラミニダーゼ阻害薬。特徴として専用の吸入器で吸入投与する必要があります。経口投与できるのはおなじみのタミフル(オセルタミビル)。スイスの製薬会社ロシュが開発した薬(日本では中外製薬が販売)で、タミフル投与の子供の異常行動が話題になりました(現在でも10代以下には原則投与禁止)が、やっぱり良い薬です。新しい薬でよく聞くと評判のラピアクタ(ペラミビル)は、塩野義製薬がライセンスをもっている半分国産インフルエンザ薬。点滴投与で有るといった点が特徴です。最後はこれは純国産で第一三共が提供するイナピル。分子構造を見ていただければわかると思いますが、リレンザにそっくりです。リレンザ改良薬に位置するため、リレンザよりも効果が高いといわれています。
上記のノイラミニダーゼ阻害薬に当てはまらないインフルエンザ治療薬は4つ。アダマンタンにアミノ基が着いた形をもっている、フルマジン(リマンタジン)と、シンメトレル(アマンタジン)はインフルエンザウイルスのM2蛋白阻害薬。A型のインフルエンザに効くとされています。フルマジンに関しては日本では販売されていません。アビガン(ファビピラビル)は富山化学工業(現在:富士フィルム傘下)が長い年月をかけて開発したインフルエンザ治療薬(RNA依存性RNAポリメラーゼ阻害薬)。ノイラミニダーゼ阻害薬とは全く違う作用機序で話題となりましたが、いろいろあって残念ながら一般的には処方されることはありません。一方で、エボラウイルスに効果があるということで大変話題になった薬でもあります(関連記事:富士フイルムのインフルエンザ治療薬、エボラ治療に)
最後は、コペガス(リバビリン)というお薬。アビガンと同じくRNAポリメラーゼ阻害薬の一種ですが、インフルエンザ治療薬としては、やはり上記のノイラミニダーゼ阻害薬がどうしてもダメな場合に処方されるかもしれません、という程度です。
2018年に発売されるとされている、塩野義製薬のインフルエンザ新薬は1日で治るといわれています。その名も「ゾフルーザ」(バロキサビルマルボキシル)。「ノイラミニダーゼ阻害薬」と作用機序が全く異なるため画期的新薬として注目を集めています。2018年5月以降に発売される見通しです。
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