一昔前は、研究費獲得業務といえばラボスタッフ以上のお仕事でした。しかし現在は大学院生でも研究奨励費が貰える国策制度(学振特別研究員、COEプログラム、リーディング大学院など)が充実を見せつつあります。そのため学生にとっても「申請書書き」は重要な研究業務の一環となりつつあり、それに悩む学生の姿を見るのも毎年の風物詩ともなっています。
化学系プロ研究者(の卵)であるケムステスタッフが過去に執筆した、「研究費・奨学金」とその仕組み・応募方法に関する記事を、広く研究者の方々の参考資料としてまとめて見ました。
研究テーマの選び方
「科学者として取り組むべき研究テーマは、どういう指針で選ぶべきなのか?」―これは研究者なら誰しも頭を悩ませる問題でしょう。もちろん夢のあるテーマを追い求め続けたいですが、プロとして継続的な研究を続けて行くには、現実的目線も持っておく必要があります。また当然ながら魅力的なテーマが立てられないと、研究費を獲得することは出来ません。優れた「ノウハウ文」はいくつか公開されていますので、まとめてみました。
- 優れた研究テーマはどう選ぶべき?
- E.J.Coreyからの手紙
- Whitesides’ Group: Writing a paper
- Whitesides教授が語る「成果を伝えるための研究論文執筆法」
申請書書きあれこれ
研究費の応募には「申請書書き」が避けては通れません。しかしラボによっては指導体系やノウハウ蓄積が充実しておらず、運営スタッフ側ですら精緻に理解していないポイントがあるかもしれません。申請書もプレゼンテーションの一環なので、少しの訓練と書き方のコツを学ぶことで見違えるほどに良くなることがあります。
- 科研費の審査員を経験して
- 学振申請書を磨き上げる11のポイント ~前編~ ~後編~
- 学振申請書を磨き上げるポイント~自己評価欄 編~ (前編) (後編)
- 卒論・修論に向けて~わかりやすく伝わる文章を書こう!~
- アイデア創出のインセンティブ~KAKENデータベースの利用法~
予算制度について考える
大学院生向けの奨励費の充実に加えて、ACCEL・ImPACTといったかつてない巨額グラントや、医療研究開発機構AMEDが最近続々と立ち上がりました。その一方、大学運営費は歯止め無く減少を続けています。研究費によらず、運営予算は自力獲得していくものという考え方が今後の普通になるでしょう。しかし我が国にそもそもお金はありませんので、競争激化は避けられないと思われます。グラント獲得戦略も複雑多様化の傾向がいよいよ強まるのではないでしょうか。研究者側も一通りの理解をしておかねばならないと思いますが、今後は研究費獲得をサポートする業務・リサーチアドミニストレータ(URA)の重要性がいよいよ増してくると思われます。
自分に適した研究費を探す
細々したものを含めると、世の中には本当に沢山の助成元があります。有難いことなのですが、全部を調べるのは大変です。果たして周りの人たちがよく応募するような研究費、ボスから紹介して貰った財団などを継続的に応募してしまう、という人が割と多いのではないでしょうか。しかし先に述べた事情からも、研究費獲得先が幅広くあるに越したことはありません。
研究助成情報サイト:コラボリー/Grantsは研究費検索に大変便利に使えるサイトです。現在募集中の研究費と過去の取得者一覧を簡単に調べることができるので、採択率なども自分なりに見積もることができます。科研費も引っかかるので、科研費データベースを使うより効率が良く、筆者も頻繁に活用させて貰っています。
ついでに言うと本サービスが運営するコラボリー/Beats!は、研究者にとって興味深い情報満載サイトですので、フォローしておくと良いと思います。展開サービスのコラボリー/Groupもあります。今後どう発展していくサービスなのか、注目しておきたいですね。
また大学院生向けの奨学金については、以下の記事も参考になると思います。
ネット時代の自己アピール法
時はネット時代、Webを通じたアピールはいまやどの分野にもおなじみとなっています。「研究者の顔が見える」よう、必要最低限の情報はデジタルスペースに置いておく必要があります。審査員が「申請者の名前でGoogle検索する」ことも、今は普通に行われています。ウェブに情報がないということは、それだけで損している可能性大なのです。どんなツールを使って、どこに力点を置いて情報発信していけば良いのでしょうか?以下の記事は一つの参考になるかもしれません。
研究テーマ・申請書執筆を考えるための参考書籍
論文書きに関する参考書のほうが数としては多いのですが、基本的な考え方(序論・本論・結論といった科学文章特有の構成、パラグラフライティングなど)は申請書書きにもそのまま応用できます。