捏造・剽窃・不正経理などは、科学界の信頼を揺るがしかねない一大事件です。
先日もビッグラボから億単位の不正経理が発覚したばかりです。STAP事件の当事者たる理研では、数十パーセントもの予算がカットされました。この余波で卒業後に研究員として勤めるはずだったポストが、突如として消滅してしまった知人を知っています。当人には全く責任がないにも関わらず・・・です。
コトが起きるたび、科学コミュニティへの締め付けが厳しくなることは避けられません。巨額のグラントを貰っているほど(嫉妬心も手伝ってか)標的になりやすく、風当たりも厳しい傾向があります。
『俺は潔白だ!不正は一部の人間がやっているだけなのになぜだ!!』
正論なのですが、日本の国民感情はどうやら全くそこを理解してくれないようです。ほとんどの研究費は税金から賄われていますから、俺らの金を無駄遣いしやがって!今までいい目見やがっていい気味だ!1匹見つけたらゴキブリは100匹居る!連帯責任連帯責任!・・・という感情こそが先に立つようです(そりゃー言い訳のための書類も激増しますわ・・・)。
ともあれ国民のお金を預かっているという自覚の下、科学者側でも自助努力が必要なことは間違い有りません。
もちろん研究速度が低下してしまっては本末転倒です。何でもかんでも厳格化、は頭の良いやり方とは到底思えません。どんなに厳しくしても抜け道を探す人は出てくるものですし、締め付けを厳しくすればするほど、すり抜け技術は狡猾なものへと高度化していきます。「制約があるからこそイノベーションが生まれる」は、悪い方向でも真理のようです。
単に厳しくするのではなく、不正を行うインセンティブを減じる工夫こそが今求められているのではないでしょうか。
研究不正は、『社会と科学の関係』が如実に露見する例だと思います。不正発覚後は臭い物に蓋をしておしまい・・・とするのではなく、痛みに耐えて上手い仕組みに昇華させていくことが必要なのです。それを皆で考えるための参考になればと思います。
研究成果・記録・管理に関する倫理問題
STAP細胞問題は一大スキャンダルとなりました。ケムステでもいくつか記事を執筆しています。
論文・成果発表に関する倫理問題
- オープンアクセスジャーナルの光と影
- 前代未聞のねつ造論文 学会発表したデータを基に第三者が論文を発表
- そこまでやるか?ー不正論文驚愕の手口
- 【書籍】背信の科学者たち 論文捏造はなぜ繰り返されるのか?
- 疑惑の論文200本発見 米大が盗作探知プログラム開発