[スポンサーリンク]

odos 有機反応データベース

庄野酸化 Shono Oxidation

[スポンサーリンク]

概要

アルコール溶媒中にアミドまたはカルバメートを電解酸化し、N,O-アセタールを得る反応。アミンα位の官能基化反応として有用である。

基本文献

  • Shono, T.; Hamaguichi, H.; Matsumura, Y. J. Am. Chem. Soc. 1975, 97, 4264. DOI: 10.1021/ja00848a020
  • Shono, T.; Matsumura, Y.; Tsubata, K. Tetrahedron Lett. 1981, 22, 3249. doi:10.1016/S0040-4039(01)81876-1
  • Shono, T.; Matsumura, Y.; Tsubata, K. J. Am. Chem. Soc. 1981, 103, 1172. DOI: 10.1021/ja00395a029
  • Shono, T.; Matsumura, Y.; Tsubata, K. Org. Synth. 1984, 63, 206. DOI: 10.15227/orgsyn.063.0206
  • Shono, T.; Matsumura, Y.; Uchida, K.; Tsubata, K.; Makino, A. J. Org. Chem. 1984, 49, 300. DOI: 10.1021/jo00176a016
  • Shono, T.; Matsumura, Y.; Tsubata, K.; Uchida, K.; Kanazawa, T.; Tasuda, K. J. Org. Chem. 1984, 49, 3711.  DOI: 10.1021/jo00194a008
  • Alfonso-Súarez, P.; Kolliopoulos, A. V.; Smith, J. P. Banks, C. E.; Jones, A. M. Tetrahedron Lett. 2015, 56, 6863. doi:10.1016/j.tetlet.2015.10.090
Review

開発の経緯

京都大学の庄野達哉によって開発された。

反応機構

N-アシルイミニウムイオン中間体が生じ、これが溶媒のアルコールで捕捉される形で反応が進行する。低温・非アルコール性溶媒で電解を行なうと、N-アシルイミニウム中間体をプールでき、アルコール以外の求核剤と直接反応させることができる(カチオンプール法)。

反応例

有機電解反応の中では研究例が多く、また複雑化合物合成へも応用されている反応の一つである。

生成物であるN,O-アセタールは新たなC-C結合形成に活用出来る。下記はトロパン骨格合成に活用した例[1]。

非対称基質においては通常立体障害の少ない方が酸化されるが、N-シアノアミンを変換すると選択性が逆転する[2]。またビシクロカルバメート基質についても、多置換の位置が反応する[3]。

カチオンプール法による庄野酸化→求核付加[4]

電解補助基(electroauxiliary)の使用による位置選択的酸化[5]:下の例ではチオフェニル基が電解補助基として働き、酸化の位置選択性が規定される。同様の目的にトリメチルシリル(TMS)基も用いられる。

電解メディエータを用いる庄野酸化[6]:官能基受容性の高い条件に出来るのが特徴。

光学活性ジアリールピロリジンの合成[7]:不斉ヒドロシリル化触媒のビルディングブロックになる。

参考文献

  1. Shono, T.; Matsumura, Y.; Tsubata, K. J. Am. Chem. Soc. 1981, 103, 1172. doi:10.1021/ja00395a029
  2. Libendi, S. S.; Demizu, Y.; Matsumura, Y.; Onomura, O. Tetrahedron 2008, 64, 3935. doi:10.1016/j.tet.2008.02.060
  3. Onomura, O.; Ishida, Y.; Maki, T.; Minato, D.; Demizu, Y.; Matsumura, Y. Electrochemistry 2006, 74, 645.
  4. Suga, S.; Okajima, M.; Yoshida, J.-i. Tetrahedron Lett. 2001, 42, 2173. doi:10.1016/S0040-4039(01)00128-9
  5. Sugawara, M.; Mori, K.; Yoshida, J.-i. Electrochim. Acta 1997, 42, 1995. doi:10.1016/S0013-4686(97)85473-4
  6. Wang, F.; Rafiee, M.; Stahl, S. S. Angew. Chem. Int. Ed. 2018, 57, 6686. doi:10.1002/anie.201803539
  7. Onomura, O.; Kirira, P. G.; Tanaka, T.; Tsukada, S.; Matsumura, Y.; Demizu, Y. Tetrahedron 2008, 64, 7498. doi:10.1016/j.tet.2008.06.004

関連書籍

[amazonjs asin=”478130138X” locale=”JP” title=”有機電解合成の基礎と可能性 (CMCテクニカルライブラリー―ファインケミカルシリーズ)”][amazonjs asin=”4339066249″ locale=”JP” title=”有機電気化学―基礎から応用まで”]

外部リンク

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. シュタウディンガー反応 Staudinger Reaction
  2. 福山クロスカップリング Fukuyama Cross Coupl…
  3. ブレデレック イミダゾール合成 Bredereck Imidaz…
  4. ネバー転位 Neber Rearrangement
  5. 光延反応 Mitsunobu Reaction
  6. 活性二酸化マンガン Activated Manganese Di…
  7. チチバビン反応 Chichibabin Reaction
  8. バルビエ・ウィーランド分解 Barbier-Wieland De…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 大学院生のつぶやき:研究助成の採択率を考える
  2. マクファディン・スティーヴンス反応 McFadyen-Stevens Reaction
  3. 分子素子の働き せっけんで確認
  4. オートファジーの化学的誘起で有害物質除去を行う新戦略「AUTAC」
  5. 第8回XAFS討論会
  6. 渡辺芳人 Yoshihito Watanabe
  7. 石谷 治 Osamu Ishitani
  8. 計算化学:DFT計算って何?Part II
  9. 【10月開催】 【第二期 マツモトファインケミカル技術セミナー開催】 題目:有機金属化合物 オルガチックスを用いたゾルゲル法とプロセス制御ノウハウ(2)
  10. 第3回慶應有機合成化学若手シンポジウム

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2018年11月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
2627282930  

注目情報

最新記事

第57回若手ペプチド夏の勉強会

日時2025年8月3日(日)~8月5日(火) 合宿型勉強会会場三…

人工光合成の方法で有機合成反応を実現

第653回のスポットライトリサーチは、名古屋大学 学際統合物質科学研究機構 野依特別研究室 (斎藤研…

乙卯研究所 2025年度下期 研究員募集

乙卯研究所とは乙卯研究所は、1915年の設立以来、広く薬学の研究を行うことを主要事業とし、その研…

次世代の二次元物質 遷移金属ダイカルコゲナイド

ムーアの法則の限界と二次元半導体現代の半導体デバイス産業では、作製時の低コスト化や動作速度向上、…

日本化学連合シンポジウム 「海」- 化学はどこに向かうのか –

日本化学連合では、継続性のあるシリーズ型のシンポジウムの開催を企画していくことに…

【スポットライトリサーチ】汎用金属粉を使ってアンモニアが合成できたはなし

Tshozoです。 今回はおなじみ、東京大学大学院 西林研究室からの研究成果紹介(第652回スポ…

第11回 野依フォーラム若手育成塾

野依フォーラム若手育成塾について野依フォーラム若手育成塾では、国際企業に通用するリーダー…

第12回慶應有機化学若手シンポジウム

概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大学理工学部・…

新たな有用活性天然物はどのように見つけてくるのか~新規抗真菌剤mandimycinの発見~

こんにちは!熊葛です.天然物は複雑な構造と有用な活性を有することから多くの化学者を魅了し,創薬に貢献…

創薬懇話会2025 in 大津

日時2025年6月19日(木)~6月20日(金)宿泊型セミナー会場ホテル…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー