概要
ルテニウム触媒存在下、エチニルエチルエーテル試薬を脱水剤として用い、カルボン酸とアルコールからエステルを合成する手法。穏和な条件下に進行することが特徴であり、副生物も少ないため精製も容易である。
酸無水物の合成、アミド化、マクロラクトン化等にも用いることが出来る。
基本文献
- Wasserman, H. H.; Wharton, P. S. J. Am. Chem. Soc. 1960, 82, 661. DOI: 10.1021/ja01488a042
- Kita, Y.; Akai, S.; Ajimura, N.; Yoshigi, M.; Tsugoshi, T.; Yasuda, H.; Tamura, Y. J. Org. Chem. 1986, 51, 4150. doi: 10.1021/jo00372a010
- Kita, Y.; Maeda, H.; Omori, K.; Okuno, T.; Tamura, Y. Synlett 1993, 273. DOI: 10.1055/s-1993-22428
- Kita, Y.; Maeda, H.; Omori, K.; Okuno, T.; Tamura, Y. J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1 1993, 2999. doi:10.1039/P19930002999
- Trost, B. M.; Chisholm, J. D. Org. Lett. 2002, 4, 3743. doi: 10.1021/ol026726c
- Ohba, Y.; Takatsuji, M.; Nakahara, K.; Fujioka, H.; Kita, Y. Chem. Eur. J. 2009, 15, 3526. doi: 10.1002/chem.200801548
Review
- Kita, Y.; Akai, S. Chem. Rec. 2004, 4, 363. doi:10.1002/tcr.20027
- Parenty, A.; Moreau, X.; Campagne, J.-M. Chem. Rev. 2006, 106, 911. DOI: 10.1021/cr0301402
- Kita, Y.; Akai, S.; Fujioka, H.; Kamitanaka, T. J. Org. Chem. 2021, 86, 3683–3696.doi:10.1021/acs.joc.0c02677
開発の経緯
1986年、大阪大学(当時)の北泰行らによって開発された。
反応機構
まず、エチニルエチルエーテルがルテニウム触媒により活性化され、カルボン酸と反応する。形成した1-エトキシビニルエステルが、ブレンステッド酸により活性化を受け、アルコールと反応してエステルを与える。
反応例
Amphidinolide Aの合成[1]
マクロラクトン化応用の最適化条件[2]:山口法、Corey-Nicolaou法などでは生成物を与えないか、副生成物を生じてしまう。
実験手順
マクロラクトン化反応[2]
窒素雰囲気下、[RuCl2(p-cymene)]2(1.2 mg, 1.99μmol)のアセトン(0.5 mL)溶液に、エトキシアセチレン(21μL, 0.30 mmol)を0℃でゆっくり加える。5分攪拌後、13-Hexyloxacyclotridecan-2-one(30 mg, 0.098 mmol)のアセトン溶液を0℃でゆっくり加える。室温で1時間撹拌後、ルテニウムを中性シリカゲルパッドカラム(酢酸エチルで流す)でろ過し、減圧濃縮することで、エトキシビニルエステル(EVE)を定量的かつ>95%純度で得る。
粗生成物EVEを1,2-ジクロロエタン(10 mL)で希釈し、DCE(30mL)で高希釈されたp-TsOH(0.05M in DCE/MeCN (1/1), 0.2mL, 0.01mmol)へ、シリンジポンプで80℃で10時間かけて滴下する。さらに80℃で1時間攪拌後、室温まで冷却する。反応溶液にトリエチルアミン(ca. 0.012mmol)を加え、減圧濃縮する。シリカゲルクロマトグラフィー(hexane/Et2O = 20:1)で精製することにより、所望のラクトンを無色油状物質として得る(18mg, 収率64%)。
参考文献
- (a) Trost, B. M.; Chisholm, J. D.; Wrobleski, S. T.; Jung, M. J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 12420. DOI: 10.1021/ja027883+ (b) Trost, B. M.; Harrington, P. E. J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 5028.DOI: 10.1021/ja049292k
- Ohba, Y.; Takatsuji, M.; Nakahara, K.; Fujioka, H.; Kita, Y. Chem. Eur. J. 2009, 15, 3526. doi: 10.1002/chem.200801548