概要
ベンジルオキシカルボニル(benzyloxycarbonyl, CbzまたはZ)基は、カルバメート形成によってアミンの保護目的に多用される。場合によってはアルコールやフェノールの保護目的にも使われる。
強塩基によるエステル加水分解条件・強酸性条件・求核条件・弱めのヒドリド還元条件に強く、接触還元条件で除去可能。このため、Fmoc基やBoc基などと相補的に用いることが出来る。
基本文献
- Bergmann, M.; Zervas, L. Ber. 1932, 65, 1192. doi:10.1002/cber.19320650722
開発の歴史
本保護基は、1932年にMax Bergmannによってペプチド合成のために初めて使用された。
反応機構
保護
クロロギ酸ベンジル(Cbz-ClまたはZ-Cl)が最も多用される。ピリジンやトリエチルアミンを塩基として添加し、アミンと反応させる。アミノ酸などに対しては、無機塩基をもちいるショッテン・バウマン条件なども簡便である。
脱保護
Pd/C触媒を用いる接触水素還元によって脱保護するのが一般的。揮発性のトルエンとCO2だけが副生するので、後処理も簡便である。外れにくいときはパールマン触媒(Pd(OH)2)などを用いる。
反応例
Boc2O共存下でCbz脱保護を行なうと1工程でBoc基への掛け替えが行える[1]。
スクアリン酸誘導体を加えるとCbz, Fmoc, Bnを脱保護せずにオレフィンの水素添加が行える[2]。
アンモニア源の共存下にBn基の脱保護は阻害され、Cbzだけを選択的に除去可能[3]。
系中生成させたTMS-Iを用いても除去可能[4]。
Ni触媒を用いることで、複素環窒素上のCbz基だけを選択的に除去可能[5]。Alloc基はより速やかに脱保護されてしまう。
実験のテクニック・コツ
- Pd(OAc)2とcharcholから系中でPd/Cを作る手法はより安全に水素添加が行えると報告されている[6]。
参考文献
- Sakaitani, M.; Hori, K.; Ohfune, Y. Tetrahedron Lett. 1988, 29, 2983. doi:10.1016/0040-4039(88)85064-0
- Shinada, T.; Hayashi, K.-i.; Yoshida, Y.; Ohfune, Y. Synlett 2000, 1506. DOI: 10.1055/s-2000-7655
- Sajiki, H. Tetrahedron Lett. 1995, 35, 3465. doi:10.1016/0040-4039(95)00527-J
- Tanimori, S.; Fukubayashi, K.; Kirihata, M. Tetrahedron Lett. 2001, 42, 4013. doi:10.1016/S0040-4039(01)00645-1
- Lipshutz, B. H.; Pfeiffer, S. S.; Reed, A. B. Org. Lett. 2011, 3, 4145. DOI: 10.1021/ol016693l
- Felpin, F.-X.; Fouquet, E. Chem. Eur. J. 2010, 16, 12440. doi:10.1002/chem.201001377
関連反応
- カルバメート保護基
- メリフィールド ペプチド固相合成法
- アリルオキシカルボニル保護基(Alloc)
- 2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル保護基(Troc)
- 2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル保護基(Teoc)
- 9-フルオレニルメチルオキシカルボニル保護基(Fmoc)
- tert-ブトキシカルボニル保護基(Boc)
関連書籍
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- ベンジルオキシカルボニル基 – Wikipedia
- Benzyl carbamates (Organic Chemistry Portal)
- Carboxybenzyl – Wikipedia
- Protecting Group (PG) (PDF)