[スポンサーリンク]

A

ボロン酸触媒によるアミド形成 Amide Formation Catalyzed by Boronic Acids

[スポンサーリンク]

概要

カルボン酸とアミンからアミドを形成する手法は、さまざまな応用が期待できる最重要反応の一つである。特に市販医薬の25%はアミドを含み、創薬化学研究で使用される化学反応の16%はアミド形成反応とされる。

従来型の方法は強酸加熱条件の使用、酸ハライドなどへの活性化、当量以上の縮合剤の使用など、条件の穏和さやアトムエコノミーの観点で諸々問題がある。そのような観点から、アミド結合形成を促進させる触媒的手法の開発が長年にわたり検討されている。触媒量を極少化出来れば、理想的には水のみを廃棄物に出来るため、高効率的反応への展開が期待できるためである。なかでもボロン酸触媒を用いる手法は毒性の懸念もなく、最有力な方法として注目を集めている。

基本文献

<mechanistic discussions>
  • Arnold, K.; Davies, B.; Giles, R. L.; Grosjean, C.; Smith, G. E.; Whiting, A. Adv. Synth. Catal. 2006, 348, 813. doi: 10.1002/adsc.200606018
  • Marcelli, T. Angew. Chem. Int. Ed. 2010, 49, 6840. doi:10.1002/anie.201003188
  • Wang, C.; Yu, H.-Z.; Fu, Y.; Guo, Q.-X. Org. Biomol. Chem. 2013, 11, 2140. doi:10.1039/C3OB27367A
  • Arkhipenko, S.; Sabatini, M. T.; Batsanov, A. S.; Karaluka, V.; Sheppard, T. D.; Rzepa, H. S.; Whiting, A. Chem. Sci. 2018, 9, 1058. doi:10.1039/C7SC03595K
<review>
  • Zhang, H.; Hall, D. G. Aldrichimica Acta 2014, 47, 41. [website]
  • Lundberg, H.; Tinnis, F.; Selander, N.; Adolfsson, H. Chem. Soc. Rev. 2014, 43, 2714. DOI: 10.1039/c3cs60345h
  • de Figueiredo, R. M.; Suppo, J.-S.; Campagne, J.-M. Chem. Rev. 2016, 116, 12029. DOI: 10.1021/acs.chemrev.6b00237
<importance of amide bond formation in medicinal chemistry>
  • Ghose, A. K.; Viswanadhan, V. N.; Wendoloski, J. J. J. Comb. Chem. 1999, 1, 55. DOI: 10.1021/cc9800071
  • Roughley, S. D.; Jordan, A. M. J. Med. Chem. 2011, 54, 3451. DOI: 10.1021/jm200187y
  • Pattabiraman, V. R.; Bode, J. W. Nature 2011, 480, 471. doi:10.1038/nature10702

反応機構

研究初期より、カルボン酸と触媒から動的生成するアシルオキシボロン酸中間体が活性種と提唱されてきた。


しかしながら最近の機構解析研究により、下記の二核ボロン酸-カルボン酸複合体が活性種であることが提唱されている(Chem. Sci. 2018, 9, 1058.)。

反応例

Hallらは、電子的にチューニングを施したボロン酸触媒が、室温下にアミド形成反応を進行させることを報告している[1]。


柴﨑・熊谷らは、ヘテロ原子のみから成る安定な1,3-dioxa-5-aza-2,4,6-triborinane芳香環(DATB)が、アミド形成反応を強力に促進することを見いだしている[2]。epi化しやすいバリンC末端でも立体化学を損なうことなく反応が進行する。ペプチド伸長にも適用可能。NMR実験などから下記遷移状態に基づく反応機構が提唱されている。

参考文献

  1. (a) Al‐Zoubi, R. M.; Marion, O.; Hall, D. G. Angew. Chem. Int. Ed. 2008, 47, 2876. doi:10.1002/anie.200705468 (b) Gernigon, N.; Al-Zoubi, R. M.; Hall, D. G. J. Org. Chem. 2012, 77, 8386. DOI: 10.1021/jo3013258
  2. (a) Noda, H.; Furutachi, M.; Asada, Y.; Shibasaki, M.; Kumagai, N. Nat. Chem. 2017, 9, 571. doi:10.1038/nchem.2708 (b) Liu, Z.; Noda, H.; Shibasaki, M.; Kumagai, N. Org. Lett. 2018, 20, 612. DOI: 10.1021/acs.orglett.7b03735

関連反応

関連書籍

[amazonjs asin=”3527332146″ locale=”JP” title=”Boronic Acids: Preparation and Applications in Organic Synthesis, Medicine and Materials”]

ケムステ内関連記事

外部リンク

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. リーベン ハロホルム反応 Lieben Haloform Re…
  2. N-オキシドの合成 Synthesis of N-oxide
  3. マイヤース 不斉アルキル化 Myers Asymmetric A…
  4. モッシャー法 Mosher Method
  5. トリプトファン選択的タンパク質修飾反応 Trp-Selectiv…
  6. p-メトキシベンジル保護基 p-Methoxybenzyl (P…
  7. 不斉アリルホウ素化 Asymmetric Allylborati…
  8. ビンゲル反応 Bingel Reaction

注目情報

ピックアップ記事

  1. 長井長義の日記など寄贈 明治の薬学者、徳島大へ
  2. カルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)ヒドリド:Carbonyltris(triphenylphosphine)rhodium(I) Hydride
  3. DNA origami入門 ―基礎から学ぶDNAナノ構造体の設計技法―
  4. 国際化学五輪、日本代表に新高校3年生4人決定/化学グランプリ2017応募始まる
  5. ジンクピリチオン (zinc pyrithione)
  6. ⽔を嫌う CH₃-基が⽔をトラップする︖⽣体浸透圧調整物質 TMAO の機能溶液化学を、分⼦間相互作⽤の時空間精細解析で解明
  7. ヒドロホルミル化反応 Hydroformylation
  8. センター試験を解いてみた
  9. 5年で57億円かかるエルゼビアの論文閲覧システムの契約交渉で大学側が値下げを要求
  10. ハリー・グレイ Harry B. Gray

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2018年6月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  

注目情報

最新記事

有機合成化学協会誌2024年12月号:パラジウム-ヒドロキシ基含有ホスフィン触媒・元素多様化・縮環型天然物・求電子的シアノ化・オリゴペプチド合成

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年12月号がオンライン公開されています。…

「MI×データ科学」コース ~データ科学・AI・量子技術を利用した材料研究の新潮流~

 開講期間 2025年1月8日(水)、9日(木)、15日(水)、16日(木) 計4日間申込みはこ…

余裕でドラフトに収まるビュッヒ史上最小 ロータリーエバポレーターR-80シリーズ

高性能のロータリーエバポレーターで、効率良く研究を進めたい。けれど設置スペースに限りがあり購入を諦め…

有機ホウ素化合物の「安定性」と「反応性」を両立した新しい鈴木–宮浦クロスカップリング反応の開発

第 635 回のスポットライトリサーチは、広島大学大学院・先進理工系科学研究科 博士…

植物繊維を叩いてアンモニアをつくろう ~メカノケミカル窒素固定新合成法~

Tshozoです。今回また興味深い、農業や資源問題の解決の突破口になり得る窒素固定方法がNatu…

自己実現を模索した50代のキャリア選択。「やりたいこと」が年収を上回った瞬間

50歳前後は、会社員にとってキャリアの大きな節目となります。定年までの道筋を見据えて、現職に留まるべ…

イグノーベル賞2024振り返り

ノーベル賞も発表されており、イグノーベル賞の紹介は今更かもしれませんが紹介記事を作成しました。 …

亜鉛–ヒドリド種を持つ金属–有機構造体による高温での二酸化炭素回収

亜鉛–ヒドリド部位を持つ金属–有機構造体 (metal–organic frameworks; MO…

求人は増えているのになぜ?「転職先が決まらない人」に共通する行動パターンとは?

転職市場が活発に動いている中でも、なかなか転職先が決まらない人がいるのはなぜでしょう…

三脚型トリプチセン超分子足場を用いて一重項分裂を促進する配置へとペンタセンクロモフォアを集合化させることに成功

第634回のスポットライトリサーチは、 東京科学大学 物質理工学院(福島研究室)博士課程後期3年の福…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP