[スポンサーリンク]

M

メチオニン選択的タンパク質修飾反応 Met-Selective Protein Modification

[スポンサーリンク]

メチオニン(Methionine, Met)は、存在比率および表面露出数がトリプトファンに次いで低い天然アミノ酸である。その側鎖(メチルスルフィド)は他のアミノ酸側鎖が示す求核性とは相補的な反応性を示す。またMetは疎水性残基であり、荷電側鎖を持たないため、修飾によってタンパク質の物性に影響を与えづらい。このためMetは化学・位置選択的修飾反応の標的として魅力がある。
硫黄は求核性を持つ元素だが、他にも高い求核性を有するアミノ酸(Lys, Cysなど)が存在する中で、Metのみを優先的に反応させることは困難を極める。そのため、酸性条件下に進行するS-アルキル化法以外、ほとんど報告事例が存在しなかった。
しかしながら、2017年に穏和なレドックス型スルフイミン形成法が開発され、方法論としての進展を見せつつある。

基本文献

  • Gundlach, H. G.; Moore, S.; Stein, W. H. J. Biol. Chem. 1959, 234, 1761.
  • Kramer, J. R.; Deming, T. J. Chem. Commun. 2013, 49, 5144. doi:10.1039/C3CC42214C
  • Gharakhanian, E. G.; Deming, T. J.  Biomacromolecules 2015, 16, 1802. DOI: 10.1021/acs.biomac.5b00372
  • Gharakhanian, E. G.; Deming, T. J. Chem. Commun. 2016, 52, 5336. doi: 10.1039/C6CC01253A
  • Lin, S.; Yang, X.; Jia, S.; Weeks, A. M.; Hornsby, M.; Lee, P. S.; Nichiporuk, R. V.; Iavarone, A. T.; Wells, J. A.; Toste, F. D.; Chang, C. J. Science 2017, 355, 597. DOI: 10.1126/science.aal3316
  • Wang, C.; Jiang, Y.-Y.; Qi, C.-Z. J. Org. Chem. 2017, 82, 9765. DOI: 10.1021/acs.joc.7b02026

関連書籍

[amazonjs asin=”0123822394″ locale=”JP” title=”Bioconjugate Techniques, Third Edition”][amazonjs asin=”1493960962″ locale=”JP” title=”Bioconjugation Protocols: Strategies and Methods (Methods in Molecular Biology)”]

ケムステ関連記事

外部リンク

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. マイヤース 不斉アルキル化 Myers Asymmetric A…
  2. 福山クロスカップリング Fukuyama Cross Coupl…
  3. ケック ラジカルアリル化反応 Keck Radicallic A…
  4. 求電子的フッ素化剤 Electrophilic Fluorina…
  5. FAMSO
  6. ブヘラ・ベルクス反応 Bucherer-Bergs reacti…
  7. MAC試薬 MAC Reagent
  8. ポヴァロフ反応 Povarov Reaction

注目情報

ピックアップ記事

  1. Nature Chemistry:Research Highlight
  2. 可視光レドックス触媒と有機蓄光の融合 〜大気安定かつ高性能な有機蓄光の実現〜
  3. 電気化学インピーダンス法 第3版: 原理・測定・解析
  4. ジピバロイルメタン:Dipivaloylmethane
  5. ダイキン、特許を無償開放 代替フロンのエアコン冷媒
  6. 可視光レドックス触媒を用いた芳香環へのC-Hアミノ化反応
  7. トップリス ツリー Topliss Tree
  8. ビアリールのアリール交換なんてアリエルの!?
  9. 元素記号に例えるなら何タイプ? 高校生向け「起業家タイプ診断」
  10. 『夏休み子ども化学実験ショー2019』8月3日(土)~4日(日)、科学技術館にて開催

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2017年11月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930  

注目情報

最新記事

ヤーン·テラー効果 Jahn–Teller effects

縮退した電子状態にある非線形の分子は通常不安定で、分子の対称性を落とすことで縮退を解いた構造が安定で…

鉄、助けてっ(Fe)!アルデヒドのエナンチオ選択的α-アミド化

鉄とキラルなエナミンの協働触媒を用いたアルデヒドのエナンチオ選択的α-アミド化が開発された。可視光照…

4種のエステルが密集したテルペノイド:ユーフォルビアロイドAの世界初の全合成

第637回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院薬学系研究科・天然物合成化学教室(井上将行教授主…

そこのB2N3、不対電子いらない?

ヘテロ原子のみから成る環(完全ヘテロ原子環)のπ非局在型ラジカル種の合成が達成された。ジボラトリアゾ…

経済産業省ってどんなところ? ~製造産業局・素材産業課・革新素材室における研究開発専門職について~

我が国の化学産業を維持・発展させていくためには、様々なルール作りや投資配分を行政レベルから考え、実施…

第51回ケムステVシンポ「光化学最前線2025」を開催します!

こんにちは、Spectol21です! 年末ですが、来年2025年二発目のケムステVシンポ、その名…

ケムステV年末ライブ2024を開催します!

2024年も残り一週間を切りました! 年末といえば、そう、ケムステV年末ライブ2024!! …

世界初の金属反応剤の単離!高いE選択性を示すWeinrebアミド型Horner–Wadsworth–Emmons反応の開発

第636回のスポットライトリサーチは、東京理科大学 理学部第一部(椎名研究室)の村田貴嗣 助教と博士…

2024 CAS Future Leaders Program 参加者インタビュー ~世界中の同世代の化学者たちとかけがえのない繋がりを作りたいと思いませんか?~

CAS Future Leaders プログラムとは、アメリカ化学会 (the American C…

第50回Vシンポ「生物活性分子をデザインする潜在空間分子設計」を開催します!

第50回ケムステVシンポジウムの開催告知をさせて頂きます!2020年コロナウイルスパンデミッ…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP