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ジスルフィド架橋型タンパク質修飾法 Disulfide-Bridging Protein Modification

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システイン(Cysteine, Cys)を標的とするタンパク質修飾法はその信頼性から盛んに用いられているが、総じて以下に述べる問題点を有する。

  • 高反応性の裏返しとして、複数のCysを区別した位置選択的反応を進行させ、均質修飾体を製造することが困難である。
  • タンパク質中のCysはほとんどジスルフィドとして存在しており、unpairdなCysを活用するには、Cysを人為的に導入したリコンビナントタンパクの製造がしばしば必要になる。
  • 汎用されるCys-マレイミド共役法は、その付加体が細胞内還元条件に不安定であるため、応用が限られる。
  • 表面露出度の高いS-S結合は、タンパク質高次構造の安定性に関わる事が多く、還元的S-S切断→Cys修飾を行なうことで構造の不安定化が引き起こされがちである。

ジスルフィド架橋法(disulfide bridging)は、これらの問題点を解決するための方法論として考案された。もともとS-S結合だった部分を最少原子数で架橋することによって、安定かつ均質な修飾体が得られ、その高次構造もおおむね保持される。

基本文献

  • Brocchini, S.; Balan, S.; Godwin, A.; Choi, J.-W. ; Zloh, M.; Shaunak, S. Nat. Protoc. 2006, 1, 2241. doi:10.1038/nprot.2006.346
  • Zloh, M.; Shaunak, S.; Balan, S.; Brocchini, S. Nat. Protoc. 2007, 2, 1070. doi:10.1038/nprot.2007.119
<Review>
<Chemist’s Guide>

反応例

様々な試薬が開発されており、安定性、収率、毒性、preactivation手順などにそれぞれ違いがある[1-7]。

テトラジンジクロリド試薬による架橋構造はSPAAC反応の足がかりとして機能しうる[8]。

パーフルオロベンゼン[9]、ジビニルスルホンアミド[10]などもステープルペプチドの合成目的に開発されている。

実験のコツ・テクニック

S-S結合の還元的切断には、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)塩酸塩が用いられる。広範なpHで使用可能な点が特徴である(1.5 < pH < 8.5)。

ジチオスレイトール(DTT)もより強力な還元剤として頻用されるが、中性条件近傍(pH>7)でしか機能しない点、架橋試薬に対する反応性を持つ点などが欠点である。

参考文献

  1. bissulfone: Shaunak, S.; Godwin, A.; Choi, J.-W. ; Balan, S.; Pedone, E.; Vijayarangam, D.; Heidelberger, S.; Teo, I.; Zloh, M.; Brocchini, S. Nat. Chem. Biol. 2006, 2, 312. doi:10.1038/nchembio786
  2. disubstituted maleimide: (a) Smith, M. E. B.; Schumacher, F. F.; Ryan, C. P.; Tedaldi, L. M.; Papaioannou, D.; Waksman, G.; Caddick, S.; Baker, J. R. J. Am. Chem. Soc. 2010, 132, 1960. DOI: 10.1021/ja908610s (b) Schumacher, F. F.; Nobles, M.; Ryan, C. P.; Smith, M. E. B.; Tinker, A.; Caddick, S.; Baker, J. R. Bioconjugate Chem. 2011, 22, 132. DOI: 10.1021/bc1004685
  3. monosubstituted maleimide: (a) Marculescu, C.; Kossen, H.; Morgan, R. E.; Mayer, P.; Fletcher, S.; Tolner, B.; Chester, K.; Jones, L. H.; Baker, J. R. Chem. Commun. 2014, 50, 7139. doi:10.1039/C4CC02107J (b) Richards, D. A.; Fletcher, S. A.; Nobles, M.; Kossen, H.; Tedaldi, L.; Chudasama, V.; Tinker, A.; Baker, J. R. Org. Biomol. Chem. 2016, 14, 455. doi:10.1039/C5OB02120K
  4. Pfisterer, A.; Eisele, K.; Chen, X.; Wagner, M.; Müllen, K.; Weil, T. Chem. Eur. J. 2011, 17, 9697. DOI: 10.1002/chem.201100287
  5. arsenic acid: Wilson, P.; Anastasaki, A.; Owen, M. R.; Kempe, K.; Haddleton, D. M.; Mann, S. K.; Johnston, A. P. R.; Quinn, J. F.; Whittaker, M. F.; Hogg, P. J.; Davis, T. P. J. Am. Chem. Soc. 2015, 137, 4215. DOI: 10.1021/jacs.5b01140
  6. dibromopyridazinedione: (a) Chudasama, V.; Smith, M. E. B.; Schumacher, F. F.; Papaioannou, D.; Waksman, G.; Baker, J. R.; Caddick, S. Chem. Commun. 2011, 47, 8781. doi:10.1039/C1CC12807H (b) Maruani, A.; Smith, M. E. B.; Miranda, E.; Chester, K. A.; Chudasama, V.; Caddick, S. Nat. Commun. 2015, 6, 6645. doi:10.1038/ncomms7645 (c) Lee, M. T. W.; Maruani, A.; Baker, J. R.; Caddick, S.; Chudasama, V. Chem. Sci. 2016, 7, 799. doi:10.1039/C5SC02666K
  7. UV-alkyne: Griebenow, N.; Dilma, A. M.;Greven, Å. S.; Brse, S. Bioconjugate Chem. 2016, 27, 911. DOI:10.1021/acs.bioconjchem.5b00682
  8. Brown, S. P.; Smith, A. B. J. Am. Chem. Soc. 2015, 137, 4034. DOI: 10.1021/ja512880g
  9. Spokoyny, A. M.; Zou, Y.; Ling, J. J.; Yu, H.; Lin, Y.-S.; Pentelute, B. L. J. Am. Chem. Soc. 2013, 135, 5946. DOI: 10.1021/ja400119t
  10. Divinylsulfonamides: Li, Z.; Huang, R.; Xu, H.; Chen, J.; Zhan, Y.; Zhou, X.; Chen, H.; Jiang, B. Org. Lett. 2017, 19, 4972. DOI: 10.1021/acs.orglett.7b02464

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博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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