[スポンサーリンク]

odos 有機反応データベース

タングステン酸光触媒 Tungstate Photocatalyst

[スポンサーリンク]

概要

テトラキス(テトラブチルアンモニウム)デカタングステン酸(TBADT)は、UV照射によって水素移動(HAT)型C-H引抜き能を発揮する、有機溶媒に可溶なポリオキソメタレート型光触媒である。

かなり強固な不活性3級C-H結合、2級C-H結合などからも炭素ラジカルを生じさせることができる。反応系にラジカル受容体を共存させておくことで、C(sp3)-H結合の官能基化に用いることができる。

現在研究の進められている触媒的C-H官能基化反応に有効な触媒の一つとして注目を集めている。

基本文献

<Review>

反応機構

参考:J. Phys. Chem. A 2003, 107, 1102. 

TBADT_6

反応例

長時間を要するが、太陽光でも反応は実施可能である[1]。

TBADT_4

TBADT-コバルト協働触媒系によるアルカンからの水素放出反応[2]

TBADT_2

有機触媒との協働による不斉四級炭素構築[3]: TBADTはカテコールアセタールのC-H引き抜きに関与している。

TBADT_5

実験手順

TBADTの調製法[1]

TBADT_3

臭化テトラブチルアンモニウム(2.4 g)とタングステン酸ナトリウム二水和(5.0 g)を150 mLずつの脱イオン水にそれぞれ溶解し、激しく攪拌しながら90℃に保つ。両方の溶液に濃塩酸を滴下し、pHを2に調整する(タングステン酸溶液は薄緑色になる)。その後、二つの溶液を混合し、90℃で30分間攪拌する。得られた白色懸濁液(TBDAT)を室温に放冷し、ブフナー漏斗でろ過する。固体を水洗後、120℃のオーブンで3時間乾燥させる。室温まで放冷後、白色固体を塩化メチレン(固体1gあたり20mL)に懸濁させ、2時間攪拌する。ろ過して黄色上清を分離し、>90%純度を持つTBADTを収率85-95%(タングステン含有量ベース)で得る。純度はUV分析によって得る(ε323= 1.35 x 104 dm3mol-1cm-1 in CH3CN)。

参考文献

  1. Protti, S.; Ravelli, D.; Fagnoni, M.; Albini, A. Chem. Commun. 2009, 7351. DOI: 10.1039/B917732A
  2. West, J. G.; Huang, D.; Sorensen, E. J. Nat. Commun. 2015, 6, 10093. doi:10.1038/ncomms10093
  3. Murphy, J. J.; Bastida, D.; Paria, S.; Fagnoni, M.; Melchiorre, P. Nature 2016, 532, 218. doi:10.1038/nature17438

関連リンク

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. ソープ・インゴールド効果 Thorpe-Ingold Effec…
  2. フリーデル・クラフツアルキル化 Friedel-Crafts A…
  3. カガン・モランダーカップリング Kagan-Molander C…
  4. ダンハイザー環形成反応 Danheiser Annulation…
  5. クライゼン転位 Claisen Rearrangement
  6. コルベ電解反応 Kolbe Electrolysis
  7. クライゼン縮合 Claisen Condensation
  8. メーヤワイン アリール化反応 Meerwein Arylatio…

注目情報

ピックアップ記事

  1. マンチニールの不思議な話 ~ウィリアム・ダンピアの記録から~
  2. 藤原・守谷反応 Fujiwara-Moritani Reaction
  3. 水素社会~アンモニアボラン~
  4. ロジウム(II)アセタート (ダイマー):Rhodium(II) Acetate Dimer
  5. 房総半島沖350キロに希少金属 広範囲に
  6. 芳香族化合物のスルホン化 Sulfonylation of Aromatic Compound
  7. ホウ素 Boron -ホウ酸だんごから耐火ガラスまで
  8. 触媒的C-H酸化反応 Catalytic C-H Oxidation
  9. スマイルス転位 Smiles Rearrangement
  10. 武田薬品、週1回投与の骨粗鬆症治療薬「ベネット錠17.5mg」を発売

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2016年8月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  

注目情報

最新記事

理研の研究者が考える未来のバイオ技術とは?

bergです。昨今、環境問題や資源問題の関心の高まりから人工酵素や微生物を利用した化学合成やバイオテ…

水を含み湿度に応答するラメラ構造ポリマー材料の開発

第651回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院工学研究科(大内研究室)の堀池優貴 さんにお願い…

第57回有機金属若手の会 夏の学校

案内:今年度も、有機金属若手の会夏の学校を2泊3日の合宿形式で開催します。有機金…

高用量ビタミンB12がALSに治療効果を発揮する。しかし流通問題も。

2024年11月20日、エーザイ株式会社は、筋萎縮性側索硬化症用剤「ロゼバラミン…

第23回次世代を担う有機化学シンポジウム

「若手研究者が口頭発表する機会や自由闊達にディスカッションする場を増やし、若手の研究活動をエンカレッ…

ペロブスカイト太陽電池開発におけるマテリアルズ・インフォマティクスの活用

持続可能な社会の実現に向けて、太陽電池は太陽光発電における中心的な要素として注目…

有機合成化学協会誌2025年3月号:チェーンウォーキング・カルコゲン結合・有機電解反応・ロタキサン・配位重合

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年3月号がオンラインで公開されています!…

CIPイノベーション共創プログラム「未来の医療を支えるバイオベンチャーの新たな戦略」

日本化学会第105春季年会(2025)で開催されるシンポジウムの一つに、CIPセッション「未来の医療…

OIST Science Challenge 2025 に参加しました

2025年3月15日から22日にかけて沖縄科学技術大学院大学 (OIST) にて開催された Scie…

ペーパークラフトで MOFをつくる

第650回のスポットライトリサーチには、化学コミュニケーション賞2024を受賞された、岡山理科大学 …

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー