概要
O-チオカルバメートは高温加熱下において転位を起こし、S-チオカルバメートを生成する。フェノールからチオフェノールを合成するための有用な方法となる。
200~300℃程度というかなりの高温が一般に必要だが、マイクロ波の照射が効果的である。パラジウム触媒や光触媒の共存下、穏和な条件で行えることも最近実証されている。
基本文献
- Newman, M. S.; Karnes, H. A. J. Org. Chem. 1966,31, 3980. doi:10.1021/jo01350a023
- Kwart, H.; Evans, E. R. J. Org. Chem. 1966, 31, 410. doi:10.1021/jo01340a015
- Moseley, J. D.; Sankey, R. F.; Tang, O. N.; Gilday, J. P. Tetrahedron, 2006, 62, 4685. doi:10.1016/j.tet.2005.12.063
- Moseley, J. D.; Lenden, P. Tetrahedron, 2007, 63, 4120. doi:10.1016/j.tet.2005.12.063
- Lloyd-Jones, G, C,; Moseley, J. D.; Rennya, J. S. Synthesis 2008, 661. DOI: 10.1055/s-2008-1032179
- Burns, M.; Lloyd-Jones, G. C.; Moseley, J. D.; Renny, J. S. J. Org. Chem. 2010, 75, 6347. DOI: 10.1021/jo1014382
反応機構
C=S結合が熱力学的により安定なC=O結合へと変わることが反応の駆動力になっている。硫黄原子の芳香族求核反応を経由して進行する事情から、芳香環パラ位・オルト位に電子求引性置換基をもつものほど反応が加速される。
窒素置換基はジアルキル体であることが求められる。プロトン置換体を加熱すると、以下の様な分解過程によりイソチオシアナートが生成して転位体は得られない。
反応例
パラジウム触媒の共存により、低温(100℃前後)で行なうことが可能[1]。
可視光レドックス有機触媒を用いる室温下でのNewman-Kwart転位[2]:非常に官能基許容性の高い反応が実現されている。
参考文献
- Harvey, J. N.; Jover, J.; Lloyd-Jones, G. C.; Moseley, J. D.; Murray, P.; Renny, J. S. Angew. Chem. Int. Ed., 2009, 48, 7612. DOI: 10.1002/anie.200903908
- Perkowski, A. J.; Cruz, C. L.; Nicewicz, D. A. J. Am. Chem. Soc. 2015, 137, 15684. DOI: 10.1021/jacs.5b11800
関連リンク
- Newman-Kwart Rearrangement (Organic Chemistry Portal)
- Newman-Kwart Rearrangement – Wikipedia