[スポンサーリンク]

N

ニューマン・クワート転位 Newman-Kwart Rearrangement

[スポンサーリンク]

概要

O-チオカルバメートは高温加熱下において転位を起こし、S-チオカルバメートを生成する。フェノールからチオフェノールを合成するための有用な方法となる。

200~300℃程度というかなりの高温が一般に必要だが、マイクロ波の照射が効果的である。パラジウム触媒や光触媒の共存下、穏和な条件で行えることも最近実証されている。

基本文献

反応機構

C=S結合が熱力学的により安定なC=O結合へと変わることが反応の駆動力になっている。硫黄原子の芳香族求核反応を経由して進行する事情から、芳香環パラ位・オルト位に電子求引性置換基をもつものほど反応が加速される。

Newman_Kwart_3

窒素置換基はジアルキル体であることが求められる。プロトン置換体を加熱すると、以下の様な分解過程によりイソチオシアナートが生成して転位体は得られない。

Newman_Kwart_2

反応例

パラジウム触媒の共存により、低温(100℃前後)で行なうことが可能[1]。

Newman_Kwart_4

可視光レドックス有機触媒を用いる室温下でのNewman-Kwart転位[2]:非常に官能基許容性の高い反応が実現されている。

Newman_Kwart_5

参考文献

  1. Harvey, J. N.; Jover, J.; Lloyd-Jones, G. C.; Moseley, J. D.; Murray, P.; Renny, J. S. Angew. Chem. Int. Ed., 2009, 48, 7612. DOI: 10.1002/anie.200903908
  2. Perkowski, A. J.; Cruz, C. L.; Nicewicz, D. A. J. Am. Chem. Soc. 2015, 137, 15684. DOI: 10.1021/jacs.5b11800

 

関連リンク

 

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. ウルマンカップリング Ullmann Coupling
  2. 庄野酸化 Shono Oxidation
  3. メルドラム酸 Meldrum’s Acid
  4. オッペナウアー酸化 Oppenauer Oxidation
  5. トラウベ プリン合成 Traube Purin Synthesi…
  6. クリンコヴィッチ反応 Kulinkovich Reaction
  7. カルバメート系保護基 Carbamate Protection
  8. 活性二酸化マンガン Activated Manganese Di…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 硫黄配位子に安定化されたカルボンの合成
  2. カンファー(camphor)
  3. BASFとはどんな会社?-1
  4. 4つの性がある小鳥と超遺伝子
  5. 最新ペプチド合成技術とその創薬研究への応用
  6. 第161回―「C-H官能基化と脱芳香族化を鍵反応とする天然物合成」Shu-Li You教授
  7. 生物に打ち勝つ人工合成?アルカロイド骨格多様化合成法の開発
  8. Carl Boschの人生 その5
  9. 大村 智 Satoshi Omura
  10. 青色発光ダイオードの赤﨑勇氏らに京都賞

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2016年4月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  

注目情報

最新記事

「MI×データ科学」コース ~データ科学・AI・量子技術を利用した材料研究の新潮流~

 開講期間 2025年1月8日(水)、9日(木)、15日(水)、16日(木) 計4日間申込みはこ…

余裕でドラフトに収まるビュッヒ史上最小 ロータリーエバポレーターR-80シリーズ

高性能のロータリーエバポレーターで、効率良く研究を進めたい。けれど設置スペースに限りがあり購入を諦め…

有機ホウ素化合物の「安定性」と「反応性」を両立した新しい鈴木–宮浦クロスカップリング反応の開発

第 635 回のスポットライトリサーチは、広島大学大学院・先進理工系科学研究科 博士…

植物繊維を叩いてアンモニアをつくろう ~メカノケミカル窒素固定新合成法~

Tshozoです。今回また興味深い、農業や資源問題の解決の突破口になり得る窒素固定方法がNatu…

自己実現を模索した50代のキャリア選択。「やりたいこと」が年収を上回った瞬間

50歳前後は、会社員にとってキャリアの大きな節目となります。定年までの道筋を見据えて、現職に留まるべ…

イグノーベル賞2024振り返り

ノーベル賞も発表されており、イグノーベル賞の紹介は今更かもしれませんが紹介記事を作成しました。 …

亜鉛–ヒドリド種を持つ金属–有機構造体による高温での二酸化炭素回収

亜鉛–ヒドリド部位を持つ金属–有機構造体 (metal–organic frameworks; MO…

求人は増えているのになぜ?「転職先が決まらない人」に共通する行動パターンとは?

転職市場が活発に動いている中でも、なかなか転職先が決まらない人がいるのはなぜでしょう…

三脚型トリプチセン超分子足場を用いて一重項分裂を促進する配置へとペンタセンクロモフォアを集合化させることに成功

第634回のスポットライトリサーチは、 東京科学大学 物質理工学院(福島研究室)博士課程後期3年の福…

2024年の化学企業グローバル・トップ50

グローバル・トップ50をケムステニュースで取り上げるのは定番になっておりましたが、今年は忙しくて発表…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP