[スポンサーリンク]

A

O-アシルイソペプチド法 O-acylisopeptide Method

[スポンサーリンク]

概要

セリン・スレオニン残基側鎖のヒドロキシル基においてエステル結合へと異性化したペプチドをO-アシルイソペプチドと呼ぶ。

これは通常のネイティブペプチドと性質を異にし、中性水溶液中においてO-to-N転位によりネイティブ配列へと変換することが可能である。

特に水溶性に優れるために、疎水性のdifficult sequenceの効率的合成や、収束的ペプチド合成、タンパク質の生理機能発現コントロールなど各種の応用に供することが可能である。

基本文献

・Sohma, Y.; Sasaki, M.; Hayashi, Y.; Kimura, T.; Kiso, Y. Chem. Commun. 2004, 124. DOI: 10.1039/B312129A

<review>
・Sohma, Y.; Yoshiya, T.; Taniguchi, A.; Kimura, T.; Hayashi, T.; Kiso, Y. Pept. Sci. 2007, 88, 253. DOI: 10.1002/bip.20683
・Coin, I.; Beyermann, M.; Bienert, M. Nat. Protoc. 20072, 3247. doi:10.1038/nprot.2007.454
・Sohma, Y.; Kiso, Y. Chem. Rec. 2013, 13, 218. DOI: 10.1002/tcr.201200023

<General Review of Chemical Synthesis of Peptides/Proteins>
・ Humphrey, J. M.; Chamberlin, A. R. Chem. Rev. 199797, 2243. DOI: 10.1021/cr950005s
・ Bray, B. L. Nat. Rev. Drug Discov. 20032, 587. doi:10.1038/nrd1133
・ Nilsson, B. L.; Soellner, M. B.; Raines, R. T. Annu. Rev. Biophys. Biomol. Struct. 2005, 34, 91. DOI: 10.1146/annurev.biophys.34.040204.144700・ Kent, S. B. H. Chem. Soc. Rev. 2009, 38, 338. DOI: 10.1039/b700141j
・ Pattabiraman, V. R.; Bode, J. W. Nature 2011480, 471. doi:10.1038/nature10702
・ White, C. J.; Yudin, A. K. Nat. Chem. 20113, 509. doi:10.1038/nchem.1062
・ Stolzew, S. C.; Kaiser, M. Synthesis 201244, 1755. DOI: 10.1055/s-0031-1289765

反応機構

O_acylisopeptide_2

 

反応例

他の保護基に変更することで、別種の刺激でNative配列へと変換することができる。以下はアミロイドβを光刺激でnative配列へと変化させる工夫。[1]

O_acylisopeptide_3

実験のコツ

※セリンのアミノ基は通常Bocで保護したものを用い、固相からの切り出し・精製の時にTFA塩として単離してくる。

※ 縮合剤を用いるO-アシル化によって固相合成することも可能。しかしエステル化は定量的に進行しない場合が有り、またラセミ化の問題もあることから、予め調製したエステルを含むジペプチドユニット(Boc-Ser/Thr-(Fmoc-Xaa)-OH)を使用するほうが良い。

参考文献

[1] Kiso, Y. et al. J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 696. DOI: 10.1021/ja057100v

関連書籍

[amazonjs asin=”4944157517″ locale=”JP” title=”最新ペプチド合成技術とその創薬研究への応用 (遺伝子医学MOOK 21)”]

関連リンク

薬品化学教室で開発されたイソジペプチドユニットが商品化

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. ティシチェンコ反応 Tishchenko Reaction
  2. カーン グリコシド化反応 Kahne Glycosidation…
  3. フィッツナー・モファット酸化 Pfitzner-Moffatt …
  4. カルボニル-エン反応(プリンス反応) Carbonyl-Ene …
  5. ウルツ反応 Wurtz Reaction
  6. ボールマン・ラーツ ピリジン合成 Bohlmann-Rahtz …
  7. ゼムラー・ウォルフ反応 Semmeler-Wolff React…
  8. 水素化ホウ素ナトリウム Sodium Borohydride

注目情報

ピックアップ記事

  1. 山元公寿 Kimihisa Yamamoto
  2. ロバート・メリフィールド Robert B. Merrifield
  3. 文具に凝るといふことを化学者もしてみむとてするなり⑱:Apple Watchの巻
  4. 山東信介 Shinsuke Sando
  5. カチオン重合 Cationic Polymerization
  6. フリーデル・クラフツ アシル化 Friedel-Crafts Acylation
  7. 「オプジーボ」の特許とおカネ
  8. アムロジンのデータ資料返還でファイザーが住友化学に仮処分命令申立
  9. メチオニン選択的タンパク質修飾反応 Met-Selective Protein Modification
  10. ポリマーを進化させる!機能性モノマーの力

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2014年12月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  

注目情報

最新記事

植物由来アルカロイドライブラリーから新たな不斉有機触媒の発見

第632回のスポットライトリサーチは、千葉大学大学院医学薬学府(中分子化学研究室)博士課程後期3年の…

MEDCHEM NEWS 33-4 号「創薬人育成事業の活動報告」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

第49回ケムステVシンポ「触媒との掛け算で拡張・多様化する化学」を開催します!

第49回ケムステVシンポの会告を致します。2年前(32回)・昨年(41回)に引き続き、今年も…

【日産化学】新卒採用情報(2026卒)

―研究で未来を創る。こんな世界にしたいと理想の姿を描き、実現のために必要なものをうみだす。…

硫黄と別れてもリンカーが束縛する!曲がったπ共役分子の構築

紫外光による脱硫反応を利用することで、本来は平面であるはずのペリレンビスイミド骨格を歪ませることに成…

有機合成化学協会誌2024年11月号:英文特集号

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年11月号がオンライン公開されています。…

小型でも妥協なし!幅広い化合物をサチレーションフリーのELSDで検出

UV吸収のない化合物を精製する際、一定量でフラクションをすべて収集し、TLCで呈色試…

第48回ケムステVシンポ「ペプチド創薬のフロントランナーズ」を開催します!

いよいよ本年もあと僅かとなって参りましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。冬…

3つのラジカルを自由自在!アルケンのアリール–アルキル化反応

アルケンの位置選択的なアリール–アルキル化反応が報告された。ラジカルソーティングを用いた三種類のラジ…

【日産化学 26卒/Zoomウェビナー配信!】START your ChemiSTORY あなたの化学をさがす 研究職限定 キャリアマッチングLIVE

3日間で10領域の研究職社員がプレゼンテーション!日産化学の全研究領域を公開する、研…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP