概要
生体共役反応(Bioconjugation)とは、2つの生体関連分子を共有結合で連結させる手法である。ほとんどの場合にはタンパク質を標的としている。化学反応開発における最先端研究課題でもある。
とりわけ人工分子と共役させることで、生命機能を操作・制御・追跡するための手がかりを得ることができるため、ケミカルバイオロジーにおける重要方法論として認知されている。
非天然型官能基を標的とするか、生体内在(native)官能基を標的とするかで大別される。後者のほうが応用範囲は圧倒的に広いが、官能基選択性・反応制御という観点で開発難度はかなり高いものとなる。他にも生体条件適合性(中性pH、室温程度、水系反応etc)や、試薬と廃棄物が無害であることなども要請されるため、使用できる反応形式は現在のところきわめて限定されている。
応用面からは抗体-医薬複合体(Antibody-drug conjugate)と呼ばれる次世代医薬を製造するために不可欠な技術でもある。
基本文献
<Review>
・Prescher, J. A.; Bertozzi, C. R. Nat. Chem. Biol. 2005, 1, 13. doi:10.1038/nchembio0605-13
・Antos, J. M.; Francis, M. B. Curr. Opin. Chem. Biol. 2006, 10, 253. doi:10.1016/j.cbpa.2006.04.009
・ Hackenberger, C. P. R.; Schwarzer, D. Angew. Chem. Int. Ed. 2008, 47, 10030. DOI: 10.1002/anie.200801313
・ Chalker, J. M.; Bernardes, G. J. L.; Lin, Y. A.; Davis, B. G. Chem. Asian J. 2009, 4, 630. DOI: 10.1002/asia.200800427
・Heal, W. P.; Tate, E. W. Org. Biomol. Chem. 2010, 8, 731. DOI: 10.1039/B917894E
・Boyce, M.; Bertozzi, C. R. Nat. Methods 2011, 8, 638. doi:10.1038/nmeth.1657
・Stephanopouuls, N.; Francis, M. B. Nat. Chem. Biol. 2011, 7, 876. doi:10.1038/nchembio.720
・ Hao, Z.; Hong, S.; Chen, S.; Chen, P. R. Acc. Chem. Res. 2011, 44, 742. DOI: 10.1021/ar200067r
・ Witus, L. S.; Francis, M. B. Acc. Chem. Res. 2011, 44, 774. DOI: 10.1021/ar2001292
・ Takaoka, Y.; Ojida, A.; Hamachi, I. Angew. Chem. Int. Ed. 2013, 52, 4088. DOI:
10.1002/anie.201207089
・ Ramil, C. p.; Lin, Q. Chem. Commun. 2013, 49, 11007. DOI:
10.1039/C3CC44272A
・ King, M.; Wagner, A. Bioconjugate Chem. 2014, 25, 825. doi:10.1021/bc500028d
・ Spicer, C. D.; Davies, B. G. Nat. Commun. 2014, 5, 4740. DOI: 10.1038/ncomms5740
・Patterson, D. M.; Nazarova, L. A.; Prescher, J. A. ACS Chem. Biol. 2014, 9, 592. doi:10.1021/cb400828a
・ Shih, H.-W.; Kamber, D. N.; Prescher, J. A. Curr. Opin. Chem. Biol. 2014, 21, 103. DOI:
10.1016/j.cbpa.2014.07.002
反応例
①非天然型官能基を標的とする反応
多重C-C結合が生体内には多く存在しないことと極性官能基受容性に着目して、Click反応(Huisgen環化)、Staudinger-Bertozzi Ligation、鈴木クロスカップリング・薗頭カップリングなどをはじめとするPdクロスカップリング、逆電子要請型Diels-Alder反応、オレフィンメタセシスなどが研究されている。ケト酸やアシルトリフルオロボレートを用いる反応なども最近開発されている。反応の足がかりとなる官能基を予め組み込んでおく必要があるため、あるがままの生細胞・動物などに直接用いることは難しいとされる。
②Native官能基を標的とする反応
ペプチドにおけるリジンへのアシル化、システイン側鎖へのMicheal付加・アルキル化、チロシン側鎖への芳香族求電子置換反応などは典型的な例となる。N末端がシステインである場合にはNative Chemical Ligationも選択肢となる。ケトンやアルデヒドを側鎖酸化などによって露出させることができれば、オキシム化・ヒドラゾン化でも行える。応用範囲は①より広いが、高度な化学選択性を実現させることが困難とされる。
関連反応
関連書籍
[amazonjs asin=”1617791504″ locale=”JP” title=”Bioconjugation Protocols: Strategies and Methods (Methods in Molecular Biology)”][amazonjs asin=”1588290980″ locale=”JP” title=”Bioconjugation Protocols: Strategies and Methods (Methods in Molecular Biology)”][amazonjs asin=”0123822394″ locale=”JP” title=”Bioconjugate Techniques, Third Edition”]外部リンク
- Bioconjugation – Wikipedia
- バイオコンジュゲーション (Sigma-Aldrich)
- Bioconjugation by Native Chemical Tagging of C -H Bonds (ChemASAP)
- クリックケミストリー ≠ Huisgen 反応、2つの意味で。(気ままに有機化学)
- ACS Bioconjugate Chemistry Journal