概要
環化反応の速度を変化させる置換基効果の一種。反応点を結ぶ分子鎖に嵩高いgem-置換基を付け加えることで環化反応速度を大きく出来る。gem-ジアルキル効果とも呼ばれる。
基本文献
- Beesley, R. M.; Ingold, C. K.; Thorpe, J. F. J. Chem. Soc. Trans. 1915, 107, 1080. DOI:10.1039/CT9150701080
- Jung, M. E.; Piizzi, G. Chem. Rev. 2005, 105, 1735. DOI:10.1021/cr940337h
- Bachrach, S. M. J. Org. Chem. 2008, 73, 2466. DOI: 10.1021/jo702665r
反応機構
Thorpe-Ingold効果を引き起こす要素としては以下の2つが考えられている。
① 角圧縮効果:gem-置換基があると結合角度がtetrahedral(109.5o)よりも小さくなる。これにより、特に小員環形成過程の速度が向上する。
② 配座自由度の減少: gem-置換基との立体反発により環化に有利な配座に誘導される確率が高まり、環化が速くなる.。
反応例
環形成反応であれば平衡定数(熱力学支配の現象)にも解釈として用いることができる。
チオアセタールは分子内環化をThorpe-Ingold効果で加速させるため、無保護ケトンをそのまま用いるより有益な場合がある。
プロドラッグ化や新たな保護基としての応用を指向し、さらに効果を高める分子設計として、「トリメチルロック」が提案されている。[1]
参考文献
- Levine, M. N.; Raines, R. T. Chem. Sci. 2012, 3, 2412. DOI: 10.1039/C2SC20536J