[スポンサーリンク]

E

エドマン分解 Edman Degradation

[スポンサーリンク]

概要

ペプチド一次配列決定法の一種。フェニルイソチオシアナートとの反応でN末端1残基だけをフェニルチオヒダントインの形で切り出し、一つずつアミノ酸配列を決定する。

サンプルは極微量で良いが、多くの場合、適用限界は30-50残基程度である。またN末端が化学修飾されたものや、反応点が分子内部に埋もれたペプチドには適用できない。予め2次・3次構造を破壊しておく必要があるのでジスルフィド結合の位置などは決定できない。

基本文献

・Edman, P.; Hogfeldt, E.; Sillen, L. G.; Kinell, P.-O. Acta Chem. Scand. 1950, 4, 283. doi:10.3891/acta.chem.scand.04-0283
・Edman P.; Begg G. Eur. J. Biochem. 1967, 1, 80.
・Niall, H. D. Meth. Enzymol.1973, 27, 942. doi:10.1016/S0076-6879(73)27039-8

 

反応機構

Edman_degra_2.gif

反応例

実験手順

以下の手順で行われる。

  1. ポリペプチド鎖に対してフェニルイソチオシアナート(PITC)を反応させる
  2. 無水トリフルオロ酢酸を加えて環化をおこす
  3. 酸処理を行いアミノ酸を切り取る
  4. 切りとったフェニルチオヒダントインアミノ酸の紫外吸収をHPLCで追跡しアミノ酸種を同定する。

現在では全てが自動化されており、ガラスフィルターやポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に保持させ、10 pmol程度の高純度試料があれば配列が分かる。繰り返し行っていくと反応の不完全性や副反応などによる反応の収率低下が蓄積するため、後になるほど精度が落ちていく。このため試料は予め酵素的・化学的手法で20残基程度の短鎖ペプチドにまで切断しておく。

実験のコツ・テクニック

 

関連動画

参考文献

 

関連書籍

[amazonjs asin=”1617372846″ locale=”JP” title=”Protein Sequencing Protocols (Methods in Molecular Biology)”][amazonjs asin=”4944157517″ locale=”JP” title=”最新ペプチド合成技術とその創薬研究への応用 (遺伝子医学MOOK 21)”]

 

外部リンク

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. ブレデレック オキサゾール合成 Bredereck Oxazol…
  2. ニトロンの1,3-双極子付加環化 1,3-Dipolar Cyc…
  3. 触媒的C-H活性化反応 Catalytic C-H activa…
  4. パーキン反応 Perkin Reaction
  5. フィッシャー オキサゾール合成 Fischer Oxazole …
  6. コーリー・チャイコフスキー反応 Corey-Chaykovsky…
  7. アルダー エン反応 Alder Ene Reaction
  8. 求電子的フッ素化剤 Electrophilic Fluorina…

注目情報

ピックアップ記事

  1. アンモニアがふたたび世界を変える ~第2次世界大戦中のとある出来事~
  2. 中村 修二 Shuji Nakamura
  3. SDFって何?~化合物の表記法~
  4. アラインをパズルのピースのように繋げる!
  5. トロスト不斉アリル位アルキル化反応 Trost Asymmetric Allylic Alkylation
  6. 合同資源上瀑工場
  7. 分子光化学の原理
  8. 分子集合体がつくるポリ[n]カテナン
  9. マテリアルズ・インフォマティクスにおける分子生成の基礎
  10. L-RAD:未活用の研究アイデアの有効利用に

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2014年3月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

有機合成化学協会誌2025年4月号:リングサイズ発散・プベルル酸・イナミド・第5族遷移金属アルキリデン錯体・強発光性白金錯体

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年4月号がオンラインで公開されています!…

第57回若手ペプチド夏の勉強会

日時2025年8月3日(日)~8月5日(火) 合宿型勉強会会場三…

人工光合成の方法で有機合成反応を実現

第653回のスポットライトリサーチは、名古屋大学 学際統合物質科学研究機構 野依特別研究室 (斎藤研…

乙卯研究所 2025年度下期 研究員募集

乙卯研究所とは乙卯研究所は、1915年の設立以来、広く薬学の研究を行うことを主要事業とし、その研…

次世代の二次元物質 遷移金属ダイカルコゲナイド

ムーアの法則の限界と二次元半導体現代の半導体デバイス産業では、作製時の低コスト化や動作速度向上、…

日本化学連合シンポジウム 「海」- 化学はどこに向かうのか –

日本化学連合では、継続性のあるシリーズ型のシンポジウムの開催を企画していくことに…

【スポットライトリサーチ】汎用金属粉を使ってアンモニアが合成できたはなし

Tshozoです。 今回はおなじみ、東京大学大学院 西林研究室からの研究成果紹介(第652回スポ…

第11回 野依フォーラム若手育成塾

野依フォーラム若手育成塾について野依フォーラム若手育成塾では、国際企業に通用するリーダー…

第12回慶應有機化学若手シンポジウム

概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大学理工学部・…

新たな有用活性天然物はどのように見つけてくるのか~新規抗真菌剤mandimycinの発見~

こんにちは!熊葛です.天然物は複雑な構造と有用な活性を有することから多くの化学者を魅了し,創薬に貢献…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー