[スポンサーリンク]

H

アルキンの水和反応 Hydration of Alkyne

[スポンサーリンク]

 

概要

アルキンは適当なルイス酸触媒存在下に、水和反応を起こす。触媒金属としては特に多重結合と親和性の高い、水銀や貴金属が多用される傾向にある。ほとんどの場合、マルコフニコフ則に従う化学選択性にて化合物が得られる。

 

基本文献

  • Kutscheroff, M. Chem. Ber. 1881, 14, 1540.
  • Kutscheroff, M. Chem. Ber. 1884, 17, 13.
  • Thomas, R. J.; Campbell, K. N.; Hennion, G. F. J. Am. Chem. Soc. 1938, 60, 718. DOI: 10.1021/ja01270a061

<Review>

 

反応機構

hydration_alkyne_2.gif

反応例

カチオン性の金(I)-NHC触媒を用いる反応[1]。極めて活性が高く、ppmオーダーの触媒量でも反応は円滑に進行する。内部アルキンにも適用可能である。

hydration_alkyne_4.gif

重金属の使用を回避した水溶性コバルト触媒によるアルキン水和反応[2]。アセタール、シリルエーテル、トリチルエーテルの切断や、エステルの加水分解は進行せず、官能基受容性の高い条件である。

hydration_alkyne_3.gif

ある種のルテニウム(II)触媒を用いると、ルテニウム(IV)ビニリデン中間体を経由して、末端アルキンのanti-Markovnikov型水和反応が行える。以下は徳永・若槻らによる世界初の成功例[3]。

hydration_alkyne_5.gif

隣接基関与のある基質では、一般により穏和な条件下で水和が行える。以下は一例[4]。

hydration_alkyne_6.gif

実験手順

 

実験のコツ・テクニック

 

参考文献

[1] Marion, N.; Ramon, R. S.; Nolan, S. P. J. Am. Chem. Soc. 2009, 131, 448. DOI: 10.1021/ja809403e
[2] Tachinami, T.; Nishimura, T.; Ushimaru, R.; Noyori, R.; Naka, H. J. Am. Chem. Soc. 2012, ASAP. DOI: 10.1021/ja310282t
[3] (a) Tokunaga, M.; Wakatsuki, Y. Angew. Chem. Int. Ed. 1998, 37, 2867.[abstract]
[4] Easton, N. R.; Cassady, D. R.; Dillard, R. D. J. Org. Chem. 1965, 30, 3084. DOI: 10.1021/jo01020a048

 

関連反応

 

関連書籍

 

外部リンク

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. ボイヤー・シュミット・オーブ転位 Boyer-Schmidt-A…
  2. 不斉アリルホウ素化 Asymmetric Allylborati…
  3. 歪み促進型アジド-アルキン付加環化 SPAAC Reaction…
  4. オキシ水銀化・脱水銀化 Oxymercuration-Demer…
  5. エッシェンモーザー・クライゼン転位 Eschenmoser-Cl…
  6. ビナミジニウム塩 Vinamidinium Salt
  7. スワーン酸化 Swern Oxidation
  8. メーヤワイン試薬 Meerwein Reagent

注目情報

ピックアップ記事

  1. アシロイン縮合 Acyloin Condensation
  2. インタラクティブ物質科学・カデットプログラム第一回国際シンポジウム
  3. 1,2-還元と1,4-還元
  4. 有機合成化学特別賞―受賞者一覧
  5. 夢・化学-21 化学への招待
  6. マイヤース 不斉アルキル化 Myers Asymmetric Alkylation
  7. 有機合成化学協会誌2018年2月号:全アリール置換芳香族化合物・ペルフルオロアルキル化・ビアリール型人工アミノ酸・キラルグアニジン触媒・[1,2]-ホスファ-ブルック転位
  8. 硫黄 Sulfurーニンニク、タマネギから加硫剤まで
  9. 第6回慶應有機化学若手シンポジウム
  10. 海水から微量リチウムを抽出、濃縮できる電気化学セルを開発

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2012年12月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

【産総研・触媒化学研究部門】新卒・既卒採用情報

触媒部門では、「個の力」でもある触媒化学を基盤としつつも、異分野に積極的に関わる…

触媒化学を基盤に展開される広範な研究

前回の記事でご紹介したとおり、触媒化学研究部門(触媒部門)では、触媒化学を基盤に…

「産総研・触媒化学研究部門」ってどんな研究所?

触媒化学融合研究センターの後継として、2025年に産総研内に設立された触媒化学研究部門は、「触媒化学…

Cell Press “Chem” 編集者 × 研究者トークセッション ~日本発のハイクオリティな化学研究を世界に~

ケムステでも以前取り上げた、Cell PressのChem。今回はChemの編集…

光励起で芳香族性を獲得する分子の構造ダイナミクスを解明!

第 654 回のスポットライトリサーチは、分子科学研究所 協奏分子システム研究セ…

藤多哲朗 Tetsuro Fujita

藤多 哲朗(ふじた てつろう、1931年1月4日 - 2017年1月1日)は日本の薬学者・天然物化学…

MI conference 2025開催のお知らせ

開催概要昨年エントリー1,400名超!MIに特化したカンファレンスを今年も開催近年、研究開発…

【ユシロ】新卒採用情報(2026卒)

ユシロは、創業以来80年間、“油”で「ものづくり」と「人々の暮らし」を支え続けている化学メーカーです…

Host-Guest相互作用を利用した世界初の自己修復材料”WIZARDシリーズ”

昨今、脱炭素社会への実現に向け、石油原料を主に使用している樹脂に対し、メンテナンス性の軽減や材料の長…

有機合成化学協会誌2025年4月号:リングサイズ発散・プベルル酸・イナミド・第5族遷移金属アルキリデン錯体・強発光性白金錯体

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年4月号がオンラインで公開されています!…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー