概要
トリクロロアセトイミデートをBF3OEt2やTBSOTf等のルイス酸で活性化し、オキソニウムカチオンを発生させてグリコシル化を行う方法。複製するトリクロロアセトアミドが中性であるため、反応液の酸性度が大きく変化しないという特長がある。類似する方法に、より安定なトリフルオロフェニルアセトイミデートを用いる方法もある。
基本文献
- Schmidt, R. R., Michel, J. Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 1980, 19, 731. DOI: 10.1002/anie.198007311
- Grundler, G.; Schmidt, R. R. Carbohyd. Res. 1985, 135, 203. DOI:10.1016/S0008-6215(00)90772-9
Review: Schmidt, R. R. Angew. Chem., Int. Ed. Engl. 1986, 25, 212. DOI: 10.1002/anie.198602121
<review>
- Zhu, X.; Schmidt, R. R. Angew. Chem. Int. Ed. 2009, 48, 1900. DOI: 10.1002/anie.200802036
反応機構
アセトイミデートの窒素原子がルイス酸の配位により活性化されオキソカルベニウムイオンが生成する。カウンターアニオンは活性化様式や溶媒などに依存し、反応の収率や選択性に影響を及ぼす。アルコールの攻撃によりグリコシル結合が形成される(下図の場合はα体)。
反応例
Woodrosin Iの全合成[1]
実験手順
実験のコツ・テクニック
トリクロロアセトイミデート (LG =OC(=NH)CCl3)は基本的に不安定なので、ラクトールから典型的な条件、例えばDBU, CCl3CN, DCMで合成したものをaqueous workup後そのまま用いることが多い。シリカゲルカラムで精製するにしても、NEt3を添加するなど、微量の酸によりイミデートが活性化されないように工夫が必要な場合もある。もし、より安定かつ類似のドナーが必要な場合、トリフルオロフェニルアセトイミデート(LG = OC(=NPh)CF3) の方がより安定で扱いやすい。
グリコシル化は禁水反応である。そのため、条件によってはアルコールに比べて、水の方が圧倒的に反応性が高いので加水分解が併発する場合がある。予めトルエン共沸などで残存水分を取り除いたり、粉末モレキュラーシーブスなどを共存させておくと収率が向上する場合がある。
イミデートの活性化は適当なルイス酸、触媒量のBF3OEt2やTBSOTfで達成される。TMSOTfを用い、微量の塩基が反応系中に存在する場合、アルコールがTMS化される場合もある。
微量の酸および、ルイス酸が問題になる場合は2,6-di-tert-butyl pyridineなど嵩高い塩基を添加すると良好な結果が得られる場合がある。
参考文献
[1] Furstner, A.; Jeanjean, F.; Razon, P. Angew. Chem. Int. Ed. 2002, 41, 2097. DOI: 10.1002/1521-3773(20020617)41:12<2097::AID-ANIE2097>3.0.CO;2-T.関連反応
- カーン グリコシド化反応 Kahne Glycosidation
- ケーニッヒ・クノール グリコシド化反応 Koenigs-Knorr Glycosidation
- アセタール還元によるエーテル合成 Ether Synthesis by Reduction of Acetal