概要
・キラルジオール・キラル一級アミン・2-ホルミルフェニルボロン酸が縮合した化合物のジアステレオマー比から、キラルジオールもしくはキラル一級アミンのエナンチオ過剰率(ee)を決定する方法。特に一級アミンにおいては、不斉中心が官能基から離れているものでも適用可能。
・縮合反応自体は試薬を混ぜるだけで良く、きわめて短時間(約10分)で終了する。分離条件探索に時間を要するHPLC・GC解析を必要とせず、安価な市販試薬とNMR解析だけで簡便に執り行えるというメリットは大きい。
基本文献
- Perez-Fuertes, Y.; Kelly, A. M.; Johnson, A. L.; Arimori, S.; Bull,S. D.; James, T. D. Org. Lett. 2006, 8, 609. doi:10.1021/ol052776g
- Kelly, A. M.; Perez-Fuertes, Y.; Arimori, S.; Bull, S. D.; James, T. D. Org. Lett. 2006, 8, 1971. DOI: 10.1021/ol0602351
- Perez-Fuertes, Y.; Kelly, A. M.; Fossey, J. S.; Powell, M. E.; Bull, S. D.; James, T. D. Nature Protocols 2008, 3, 210. doi:10.1038/nprot.2007.524
- Kelly, A. M.; Perez-Fuertes, Y.; Fossey, J. S.; Yeste, S. L.; Bull, S. D.; James, T. D. Nature Protocols 2008, 3, 215. doi:10.1038/nprot.2007.523
- 参考:Parker, D. Chem. Rev. 1991, 91, 1441. doi:10.1021/cr00007a009
- 参考:Seco, J. M.: Quinoa, E.; Riguera, R. Chem. Rev. 2004, 104, 17. DOI: 10.1021/cr000665j
反応機構
反応例
実験手順
syn-Methyl-2,3-dihydroxy-3-phenylpropionateのエナンチオ過剰率決定[1]
フェネチルアミンのエナンチオ過剰率決定[2]
① 上記スキームに指示された量比で、試薬を重クロロホルム中で10分間混合する。
② プロトンNMRを測定し、積分比からエナンチオ過剰率を決定する。
実験のコツ・テクニック
※ee決定においては、化学シフトが大きく変動し、原料とかぶらないプロトンに着目すればよい。すなわち、赤字で示した8.0-8.5
ppm付近にシングレットで観測されるイミンのプロトンで判断するのが現実的と思われる。
※ フェネチルアミンは粘性が高く、しばしばシリンジでの正確な秤量を困難とする。本法を多用する場合には、重クロロホルムのStock
Solutionを作って行うと良い。
※ 水が含まれると効率的に縮合されないことがある。その場合にはMS4Aを共存させて反応させると良い。
※ ジアステレオマーピークの分離が良くない場合は、別種の溶媒(ベンゼン-d6、アセトン-d6など)で測定してみると良い。低温測定が好ましい場合もある。
※ NMR測定の積分比誤差はプラスマイナス5%程度と見積もるべき。
参考文献
[1] Kelly, A. M.; Perez-Fuertes, Y.; Fossey, J. S.; Yeste, S. L.; Bull, S. D.; James, T. D. Nature Protocols 2008, 3, 215. doi:10.1038/nprot.2007.523[2] Perez-Fuertes, Y.; Kelly, A. M.; Fossey, J. S.; Powell, M. E.; Bull, S. D.; James, T. D. Nature Protocols 2008, 3, 210. doi:10.1038/nprot.2007.524
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