概要
クロムカルボニル上のカルボニル配位子と有機リチウム剤が反応して生じたリチウムアルコキシドを、ジアゾメタンやMeerwein試薬などのハードメチル(エチル)化剤で捕捉してやることで、Fischerカルベン錯体が調製できる。
カルベン炭素はカルボニル配位子の電子求引性のため、求核攻撃を受けやすい。 同様の理由から、カルベン炭素α位プロトンの酸性度が増大(pKa~12)するため、塩基によって容易に脱プロトン化される。生じたカルボアニオンは種々の求電子剤と反応する。このためFischerカルベン錯体は、有機合成化学的にはエステル等価体と見なされる。
基本文献
- Fischer, E. O; Maasbol, A. Angew. Chem. Int. Ed. 1964, 3, 580. DOI: 10.1002/anie.196405801
- de Meijere, A.; Schirmer, H.; Duetsch, M. Angew. Chem. Int. Ed. 2000, 39, 3964. [abstract]
- Barluenga, J.; Fernandez-Rodrguez, M. A.; Aguilar,E. J. Organomet. Chem. 2005, 690, 539. doi:10.1016/j.jorganchem.2004.10.032
反応機構
反応例
アリールFischerカルベン錯体とアルキンを混合し加熱すると、環化反応が進行し、引き続く酸化的処理によって4-アルコキシフェノールが得られる。(Dötz反応)[1]
光照射によりケテンを発生させることができる。以下はStaudinger[2+2]環化を経て、βラクタム合成へと応用した例である。
実験手順
実験のコツ・テクニック
参考文献
[1] Dotz, K. H. Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 1975, 14, 644. doi:10.1002/anie.197506442.
関連反応
関連書籍
外部リンク
- Fischer carbene complexes in organic synthesis (PDF;Baran’s group seminar)
- Fischer Carbene Complexes (organometallic hypertextbook)
- Transition Metal Carbene Complexes (Wikipedia)
- Fisher Carbene Complexes in Organic Synthesis
- エルンスト・フィッシャー (Wikipedia)
- カルベン錯体 (Wikipedia)
- Wulff-Dotz Reaction – Wikipedia