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ヒドロシリル化反応 Hydrosilylation

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概要

ヒドロシランは比較的不活性な化合物であるが、金属触媒の存在下に不飽和結合に対し付加反応を起こすことができる。有機ケイ素化合物の合成目的で、もっとも広く用いられている反応。近年では半導体などの表面修飾法として、機能性材料創製目的に用いられることも増えている。

対応するヘテロ原子置換型アルケニルシランは玉尾酸化檜山カップリング、プロトン化、ハロゲン化など様々な変換に付すことができる。

以下のものが高性能な触媒として知られている。Wilkinson触媒を非極性溶媒で用いるとcis型のアルケニルシランが得られる。Trost触媒は通常とは異なる選択性を示し、末端アルキンからはα-ビニルシランを与える。

hydrosilylation_4.gif

基本文献

<Pt catalysis>

  • Speier, J. L.; Webster, J. A.; Bernes, G. H. J. Am. Chem. Soc. 1957, 79, 974. DOI: 10.1021/ja01561a054
  • Lewis, L. N.; Sy, K. G. ; Bryant, G. L.; Donahue, P. E. Organometallics 1991, 10, 3750. doi:10.1021/om00056a055
  • Denmark, S. E; Wang, Z. Org. Lett. 2001, 3, 1073. DOI: 10.1021/ol0156751
  • Itami, K.; Mitsudo, K.; Nishino, A.; Yoshida, J. J. Org. Chem. 2002, 67, 2645. DOI: 10.1021/jo0163389
  • Kettler, P. B. Org. Proc. Res. Dev. 2003, 7, 342. doi:10.1021/op034017o

<Pd catalysis>

<Rh catalysis>

<Y catalysis>

<Ru catalysis>

 

反応機構

反応機構は大別して2種類考えられる。

Chalk-Harrod機構: ヒドロシランの金属触媒への酸化的付加で開始し、金属-ヒドリド結合への挿入を経て進行する機構。特にPt触媒の結果をよく説明する。 (参考:J. Am. Chem. Soc. 1965, 87, 16)

hydrosilylation_6.gif

異性化機構: 開始は①と共通だが、金属-シリル結合への挿入を経て進行する点が異なる。立体反発を避けるように異性化が起こり、Z-アルケニルシランを与えるRu, Rh, Ir触媒系の結果をよく説明する。(参考:J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 11578)

hydrosilylation_7.gif

反応例

MOP配位子を用いる不斉ヒドロシリル化[1]


hydrosilylation_2.gif

Norzoanthamineの合成[2]:電子不足アルケンの場合には、Wilkinson触媒-トリエチルシラン系によって共役還元が行える。Stryker試薬も同様の目的に用いることができる。


hydrosilylation_3.gif

通常位置選択性の制御が困難であるが、分子内反応とすることでこの問題は解決できることが多い。以下はその活用例[3]。

hydrosilylation_8.gif

trans-ヒドロシリル化(6-endo環化)→玉尾酸化を活用した(+)-spectalineの全合成[4]。

hydrosilylation_5.gif

Cp*Ru触媒が生み出すtrans-ヒドロシリル化体をプロト脱シリル化することで、アルキンからE-アルケンを得ることができる[4]。すなわちLindlar還元ジイミド還元によりZ-アルケンを得る手法と相補的に用いることができる。

hydrosilylation_9.gif

実験手順

 

実験のコツ・テクニック

 

参考文献

[1] (a) Uozumi, T.; Hayashi, T. J. Am. Chem. Soc. 1991, 113, 9887. DOI: 10.1021/ja00026a044 (b) Hayashi, T. Acc. Chem. Res. 2000, 33, 354. DOI: 10.1021/ar990080f
[2] Miyashita, M.; Tanino, K. et al. Science 2004, 305, 495. DOI: 10.1126/science.1098851
[3] Onyango, E. O.; Tsurumoto, J.; Imai, N.; Takahashi, K.; Ishihara, J.; Hatakeyama, S. Angew. Chem. Int. Ed. 2007, 46, 6703. DOI: 10.1002/anie.200702229
[4] Trost, B. M.; Ball, Z. T.; Laemmerhold, K. M. J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 10028. DOI: 10.1021/ja051578h
[5] Trost, B. M.; Ball, Z. T.; Joge, T. J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 7922. DOI: 10.1021/ja026457l (b) Furstner, A.; Radkowski, K. Chem. Comm. 2002, 2182. DOI: 10.1039/B207169J

 

関連反応

 

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外部リンク

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