[スポンサーリンク]

K

高知・フュルスナー クロスカップリング Kochi-Furstner Cross Coupling

[スポンサーリンク]

 

概要

塩化アリール・アリールトリフラート・アリールトシラートとGrignard試薬を用いる、鉄触媒によるクロスカップリング反応。アリールクロライドが最もよい基質となる。臭化アリールおよびヨウ化アリールでは脱ハロゲン化が優先する。

J.
K. Kochi
らによりアルケニルハライドとを基質とした例のみが報告されていたが、近年A.FurstnerのグループによってNMP(N-methylpyrrolidone)の添加が基質一般性拡張に重要であることが見出され、より実用性の高い条件へと改善された。

安価なアリールクロライドの適用、安価・低毒性で取り扱い容易な鉄(III)を使用可能、0度~室温というPracticalな反応条件、短い反応時間(通常5~10分で完結)、高い官能基選択性など、きわめて高い潜在性を持つ。今後の発展に期待したい。

 

基本文献

  •  Tamura, M.; Kochi, J. K. J. Am. Chem. Soc. 197193, 1487. DOI: 10.1021/ja00735a030
  •  Fürstner, A.; Leitner, A. Angew. Chem. Int. Ed. 200241, 609. [abstract]
  •  Fürstner, A.; Leitner, A.; Mendez, M.; Krause, H. J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 13856. DOI: 10.1021/ja027190t
  • Review: Fürstner, A.; Martin, R. Chem. Lett. 200534, 624. doi:10.1246/cl.2005.624

 

反応機構

Grignard試薬との反応により、系中で低原子価鉄アート錯体種Fe(-II)が発生する(参考:Angew. Chem. Int. Ed. 200039, 4610.)ことが高反応性の由来とされる。ハロゲンα位炭素上の立体化学は消失するため、酸化的付加はラジカル機構的に起こると考えられている。
kochi_furstner_2.gif

反応例

近年では鉄触媒の研究が進み、通常クロスカップリングに用いることが難しい2級sp3-アルキルハライドでもクロスカップリング反応を起こすことが可能になった。特にFürstnerらによって開発された[Li2(tmeda)][Fe(ethylene)4]錯体を触媒とする条件[1] では、Grignard試薬と迅速に反応するイソシアナートなどの高反応性官能基をも損なうことなくクロスカップリング成績体を与える。

 

近年、中村らは鈴木クロスカップリング条件へと拡張することに成功している[2]。
kochi_furstner_3.gif

実験手順

実施例[3] kochi_furstner_4.gif

撹拌子を備えた2Lニ径丸底フラスコに、アルゴン雰囲気下、4-chlorobenzoic acid methyl ester (13.0
g, 76.2 mmol)、 Fe(acac)3 (1.35 g, 3.82 mmol, 0.05 eq)、THF(450mL)、N-methylpyrrolidinone
(25mL)を加える。溶液を氷冷し、別途調製したnonylmagnesium bromide (97.0 mmol in THF,
1.25eq)をポリエチレンカニューラを使って1分間で加える。溶液の色は即座に赤色から濃暗紫色へと変化する。氷浴を取り除き、溶液を室温にて7~10分間撹拌する。ジエチルエーテル(200mL)で希釈し、1M塩酸(300mL)を注意しながら加えクエンチする。有機層を分取し、水層からジエチルエーテル(200mL)で抽出する。有機層を合わせ、飽和重曹水(300mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥する。ろ過後、エバポレータで濃縮する。得られた橙赤色の粗生成物を高度真空蒸留(1×10-4
torr, bp 103-105℃)にて精製し、目的物を無色油状物として得る (15.81-16.85 g, 収率79-84%)。

 

実験のコツ・テクニック

 

参考文献

[1] [2] Hatakeyama,T.; Hashimoto, T.; Kondo, Y.; Fujiwara, Y.; Seike,H.; Takaya, H.; Tamada, Y.; Ono, T.; Nakamura, M. J. Am. Chem. Soc. 2010, ASAP. doi:10.1021/ja103973a
[3] Furstner, A.; Leitner, A.; Seidel, G. Org. Synth. 200581, 33. [PDF]

 

関連反応

 

関連書籍

[amazonjs asin=”3527331549″ locale=”JP” title=”Metal Catalyzed Cross-Coupling Reactions and More, 3 Volume Set”][amazonjs asin=”3642075762″ locale=”JP” title=”Cross-Coupling Reactions: A Practical Guide (Topics in Current Chemistry)”]

 

外部リンク

関連記事

  1. マンダー試薬 Mander’s Reagent
  2. ガッターマン アルデヒド合成 Gattermann Aldehy…
  3. 野依不斉水素移動反応 Noyori Asymmetric Tra…
  4. ウギ反応 Ugi Reaction
  5. シャープレス・香月不斉エポキシ化反応 Sharpless-Kat…
  6. 二酸化セレン Selenium Dioxide
  7. 隣接基関与 Neighboring Group Particip…
  8. クレメンゼン還元 Clemmensen Reduction

注目情報

ピックアップ記事

  1. 徹底比較 特許と論文の違い ~明細書、審査編~
  2. ダイセル化学、有機合成全製品を値上げ
  3. 過ぎ去りし器具への鎮魂歌
  4. 人が集まるポスター発表を考える
  5. ニホニウム: 超重元素・超重核の物理 (基本法則から読み解く物理学最前線 24)
  6. 【書籍】『これから論文を書く若者のために』
  7. エキモフ, アレクセイ イワノビッチ Екимов, Алексей Иванович
  8. アスタキサンチン (astaxanthin)
  9. O-アシルイソペプチド法 O-acylisopeptide Method
  10. 有機合成化学協会誌2024年5月号:「分子設計・編集・合成科学のイノベーション」特集号

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年8月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

草津温泉の強酸性硫黄泉で痺れてきました【化学者が行く温泉巡りの旅】

臭い温泉に入りたい!  というわけで、硫黄系の温泉であり、日本でも最大の自然温泉湧出量を誇る草津温泉…

ディストニックラジカルによる多様なアンモニウム塩の合成法

第643回のスポットライトリサーチは、関西学院大学理工学研究科 村上研究室の木之下 拓海(きのした …

MEDCHEM NEWS 34-1 号「創薬を支える計測・検出技術の最前線」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

医薬品設計における三次元性指標(Fsp³)の再評価

近年、医薬品開発において候補分子の三次元構造が注目されてきました。特に、2009年に発表された論文「…

AI分子生成の導入と基本手法の紹介

本記事では、AIや情報技術を用いた分子生成技術の有機分子設計における有用性や代表的手法について解説し…

第53回ケムステVシンポ「化学×イノベーション -女性研究者が拓く未来-」を開催します!

第53回ケムステVシンポの会告です!今回のVシンポは、若手女性研究者のコミュニティと起業支援…

Nature誌が発表!!2025年注目の7つの技術!!

こんにちは,熊葛です.毎年この時期にはNature誌で,その年注目の7つの技術について取り上げられま…

塩野義製薬:COVID-19治療薬”Ensitrelvir”の超特急製造開発秘話

新型コロナウイルス感染症は2023年5月に5類移行となり、昨年はこれまでの生活が…

コバルト触媒による多様な低分子骨格の構築を実現 –医薬品合成などへの応用に期待–

第 642回のスポットライトリサーチは、武蔵野大学薬学部薬化学研究室・講師の 重…

ヘム鉄を配位するシステイン残基を持たないシトクロムP450!?中には21番目のアミノ酸として知られるセレノシステインへと変異されているP450も発見!

こんにちは,熊葛です.今回は,一般的なP450で保存されているヘム鉄を配位するシステイン残基に,異な…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー