[スポンサーリンク]

D

ジオキシラン酸化 Oxidation with Dioxirane

[スポンサーリンク]

概要

アセトンおよびOxoneから調製されるジメチルジオキシラン(DMDO)は、アルケンをエポキシドへと酸化する目的でしばしば用いられる。メチルトリフルオロメチルジオキシラン(TFDO)は、DMDOの約600倍の反応性を誇る。

dioxirane_6.gif

mCBPAと比較して、中性条件下反応を行える点、副生物がアセトンのみなので後処理が容易な点、安価に行える点がメリットとして挙げられる。ただし試薬は不安定であり、用時調製が必須。また減圧蒸留で試薬をつくる必要もあり、操作がやや面倒なのも欠点。

特定の基質において、アルカンのC-Hを直接アルコールにまで酸化することが可能である。

 

基本文献

  • Murray, R. W.; Jayaraman, R. J. Org. Chem. 1985, 50, 2847. DOI: 10.1021/jo00216a007
  • Adam, W.; Chan, Y.-Y.; Cremer, D.; Gauss, J.; Scheutzow, D.; Schindler, M. J. Org. Chem. 1987, 52, 2800. DOI: 10.1021/jo00389a029
  • Mello, R.; Fiorentino, M.; Sciacovelli, O.; Curci, R. J. Org. Chem. 1988, 53, 3890. DOI: 10.1021/jo00251a053
  • Mello, R.; Fiorentino, M.; Fusco, C.; Curci, R. J. Am. Chem. Soc. 1989, 111, 6749. DOI: 10.1021/ja00199a039
  • Adam, W.; Hadjiarapoglou, L.; Nestler, B. Tetrahedron Lett. 1990, 31, 331. doi:10.1016/S0040-4039(00)94547-7
  • Yang, D.; Wong, M.-K.; Yip. Y.-C. J. Org. Chem. 1995, 60, 3887. DOI: 10.1021/jo00117a046
  • Frohn, M.; Wang, Z.-X.; Shi, Y. J. Org. Chem. 1998, 63, 6425. DOI: 10.1021/jo980604+
  • Yang, D.; Wong, M.-K.; Wang, X. -C.; Tang, Y.-C. J. Am. Chem. Soc. 1998, 120, 6611. DOI: 10.1021/ja980916u
  • Ferraz, H. M. C.; Muzzi, R. M.; Vieira, T. O.; Viertler, H. Tetrahedron Lett. 2000, 41, 5021. doi:10.1016/S0040-4039(00)00769-3

<review>

  • Murray, R. W. Chem Rev. 1989, 89, 1187. DOI: 10.1021/cr00095a013
  • Curci, R.; Dinoi, A.; Rubino, M. F. Pure Appl. Chem. 1995, 67, 811. doi: 10.1351/pac199567050811
  • Curci, R.; D’Accolti, L.; Fusco, C. Acc. Chem. Res. 2006, 39, 1. DOI: 10.1021/ar050163y
  • Adam, W.; Saha-Moller, C. R.; Zhao, C.-G. Org. React. 2002, 61, 219.

 

反応機構


dioxirane_4.gif

反応例

Morphineの合成[1]


dioxirane_3.gif

Merrilactone Aの合成[2]


dioxirane_5.gif

選択的C-H酸化の例[3]: 反応性はメチン炭素のほうがメチレン炭素よりも高い。

dioxirane_7.gifBryostatin Analogueへの適用[4]

dioxirane_8.gif

実験手順

ジメチルジオキシランの調製[5a]

dioxirane_10.gif

撹拌子を備えた1L三径フラスコに蒸留水(120mL)、アセトン(100mL)、炭酸水素ナトリウム(45g)を入れて、氷冷下に5分激しく撹拌する。この溶液にOxone (90g)を3回に分けて10分以内に加え、氷冷を保ったまま15~20分撹拌する。生成したDMDOをアセトン溶液として減圧蒸留する(50-120 mmHgの簡易ポンプを使用、1-2hを要する)。受け側のフラスコは-78℃に保ち、乾燥目的でモレキュラーシーブス4Aを入れておく。DMDO濃度はチオアニソールを用いるNMR滴定法にて決定する。


実験のコツ・テクニック

※過酸化物を生成させる反応の常として爆発の危険性が伴う。防爆版をたてて行うこと。
※DMDOは揮発性の過酸化物なので特に留意する。ドラフト内で行うこと。
※実験器具のセットアップの仕方は、上図[5b]もしくはこちらのPDFを参考のこと。
※酸化力が強いので、皮膚に接触させる、吸入することは絶対に避ける。 保護手袋を必ずすること。ただしゴム製は避ける。

 

参考文献

[1] Trost, B. M.; Tang, W.; Toste, F. D. J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 14785. DOI: 10.1021/ja054449+
[2] (a) Inoue, M.; Sato, T.; Hirama, M. J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 10772. DOI: 10.1021/ja036587+ (b) Inoue, M.; Sato, T.; Hirama, M. Angew. Chem. Int. Ed. 2006, 45, 4843. doi:10.1002/anie.200601358 (c) Inoue, M.; Lee, N.; Kasuya, S.; Sato, T.; Hirama, M.; Moriyama, M.; Fukuyama, Y. J. Org. Chem. 2007, 72, 3065. DOI: 10.1021/jo0700474
[3] (a) Bovicelli, P.; Lupattelli, P.; Mincione, E.; Prencipe, T.; Curci, R. J. Org. Chem. 1991, 57, 2182. DOI: 10.1021/jo00033a053 (b) Iida, T.; Yamaguchi, T.; Nakamori, R.; Hikosaka, M.; Mano, N.; Goto, J.; Nambara, T. J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1 2001, 2229. DOI: 10.1039/B104938K
[4] Wender, P. A.; Hilinski, M. K.; Mayweb, A, V, W, Org. Lett. 2005, 7, 79. DOI: 10.1021/ol047859w
[5] (a) Li, Y.; Tang, P.; Chen, Y.; Yu, B. J. Org. Chem. 2008, 73, 4323. DOI: 10.1021/jo8003875 (b) Murray, R. W.; Singh, M. Org. Synth. Coll. Vol. 9, 288 (1988). [website]

 

関連反応

 

関連書籍

[amazonjs asin=”3527323201″ locale=”JP” title=”Modern Oxidation Methods”]

 

外部リンク

関連記事

  1. 歪み促進逆電子要請型Diels-Alder反応 SPIEDAC …
  2. デヒドロアラニン選択的タンパク質修飾反応 Dha-Selecti…
  3. サレット・コリンズ酸化 Sarett-Collins Oxida…
  4. MAC試薬 MAC Reagent
  5. レフォルマトスキー反応 Reformatsky Reaction…
  6. 根岸クロスカップリング Negishi Cross Coupli…
  7. ペイン転位 Payne Rearrangement
  8. ジュリア・コシエンスキー オレフィン合成 Julia-Kocie…

注目情報

ピックアップ記事

  1. カール・ダイセロス Karl Deisseroth
  2. エナゴ「学術英語アカデミー」と記事の利用許諾契約を結びました
  3. ジャン=マリー・レーン Jean-Marie Lehn
  4. 重医薬品(重水素化医薬品、heavy drug)
  5. フィッツナー・モファット酸化 Pfitzner-Moffatt Oxidation
  6. バトフェナントロリン : Bathophenanthroline
  7. 感染制御ー薬剤耐性(AMR)ーChemical Times特集より
  8. 第22回「ベンゼン環の表と裏を利用した有機合成」植村元一教授
  9. 2014年ノーベル賞受賞者は誰に?ートムソン・ロイター引用栄誉賞2014発表ー
  10. 人名反応から学ぶ有機合成戦略

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年8月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

植物繊維を叩いてアンモニアをつくろう ~メカノケミカル窒素固定新合成法~

Tshozoです。今回また興味深い、農業や資源問題の解決の突破口になり得る窒素固定方法がNatu…

自己実現を模索した50代のキャリア選択。「やりたいこと」が年収を上回った瞬間

50歳前後は、会社員にとってキャリアの大きな節目となります。定年までの道筋を見据えて、現職に留まるべ…

イグノーベル賞2024振り返り

ノーベル賞も発表されており、イグノーベル賞の紹介は今更かもしれませんが紹介記事を作成しました。 …

亜鉛–ヒドリド種を持つ金属–有機構造体による高温での二酸化炭素回収

亜鉛–ヒドリド部位を持つ金属–有機構造体 (metal–organic frameworks; MO…

求人は増えているのになぜ?「転職先が決まらない人」に共通する行動パターンとは?

転職市場が活発に動いている中でも、なかなか転職先が決まらない人がいるのはなぜでしょう…

三脚型トリプチセン超分子足場を用いて一重項分裂を促進する配置へとペンタセンクロモフォアを集合化させることに成功

第634回のスポットライトリサーチは、 東京科学大学 物質理工学院(福島研究室)博士課程後期3年の福…

2024年の化学企業グローバル・トップ50

グローバル・トップ50をケムステニュースで取り上げるのは定番になっておりましたが、今年は忙しくて発表…

早稲田大学各務記念材料技術研究所「材研オープンセミナー」

早稲田大学各務記念材料技術研究所(以下材研)では、12月13日(金)に材研オープンセミナーを実施しま…

カーボンナノベルトを結晶溶媒で一直線に整列! – 超分子2層カーボンナノチューブの新しいボトムアップ合成へ –

第633回のスポットライトリサーチは、名古屋大学理学研究科有機化学グループで行われた成果で、井本 大…

第67回「1分子レベルの酵素活性を網羅的に解析し,疾患と関わる異常を見つける」小松徹 准教授

第67回目の研究者インタビューです! 今回は第49回ケムステVシンポ「触媒との掛け算で拡張・多様化す…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP