[スポンサーリンク]

N

野依不斉水素移動反応 Noyori Asymmetric Transfer Hydrogenation

[スポンサーリンク]

 

概要

上記のRu-キラルアミン触媒をIPA溶媒中用いることで、穏和な条件下にケトンがアルコールへと不斉還元される。触媒は市販されており、空気中で安定に取り扱える。

イソプロパノール(IPA)が還元剤として働くので簡便であり、室温で反応させることが出来る。還元剤としてはIPA-KOHの代わりにHCO2H-Et3Nの組み合わせも用いられる。

 

基本文献

  • Hashiguchi, S.; Fujii, A.; Takehara, J.; Ikariya, T.; Noyori, R. J. Am. Chem. Soc. 1995, 117, 7562. DOI: 10.1021/ja00133a037
  • Fujii, A.; Hashiguchi, S.; Uematsu, N.; Ikariya, T.; Noyori, R. J. Am. Chem. Soc. 1996, 118, 2521. DOI: 10.1021/ja954126l
  • Haack, K.-J.; Hashiguchi, S.; Fujii, A.; Ikariya, T.; Noyori, R. Angew. Chem. Int. Ed. 1997, 36, 285. doi:10.1002/anie.199702851

<Mechanism>

  •  Yamakawa, M.; Ito,H.; Noyori, R. J. Am. Chem. Soc. 2000122, 1466. DOI: 10.1021/ja991638h
  •  Yamakawa, M.; Yamada, I.; Noyori, R. Angew. Chem. Int. Ed. 2001, 40, 2818. [abstract]
  •  Noyori, R.; Yamakawa, M.; Hashiguchi, S. J. Org. Chem. 2001, 66, 7931. DOI: 10.1021/jo010721w

 

反応機構

Ru-BINAP系によるケトンの不斉水素化(野依不斉水素化を参照)と同様、アミン上のプロトンが基質固定に有効に機能しているというモデル(野依-碇屋モデル)が提唱されている。
noyori_hyd_trans_2.gif

反応例

Morphineの合成[1] noyori_hyd_trans_3.gif

実験手順

動的速度論的光学分割によるキラルジオールの合成[2] noyori_hyd_trans_4.gif

メカニカルスターラー、ジムロート、滴下漏斗、温度計を備えた1L四径丸底フラスコに、トリエチルアミン(290mL,
2.08mol)を加える。容器を氷浴によって4℃に冷却し、ギ酸(97.0 mL, 2.57mol)をゆっくりと加えていく。混合物を室温で撹拌し、ラセミ体のベンゾイン(170
g, 0.801 mol)とRuCl[(1S,2S)-Np-toluenesulfonyl-1,2-diphenylethanediamine](η6-p-cymene)
(0.204 g, 0.321 mmol)、無水DMF(80mL)を加える。反応液を40℃にて48時間撹拌子、0℃に冷却後、水(300mL)で希釈し撹拌する。薄桃色の沈殿をブフナー漏斗でろ過して除去、残渣を水(2×500mL)で洗浄したのち減圧乾燥すると粗生成物がを白色固体として得られる。これをメタノール(700mL)に60℃で溶解させ、少量の不溶濾過して除去すろ液を0~5℃へと冷却することで得られた白色結晶を、0℃に冷却した2-プロパノール(400mL)で洗浄して光学活性な(R,R)-ヒドロベンゾインを得る。母液を濃縮し、再びメタノール(100mL)から再結晶を行うことで二番晶を得ることができる(148.8g、総収率87%、dl
> 99%, 99.9% ee)。

 

実験のコツ・テクニック

 

参考文献

[1] Meuzelarr, G. J.; Van Vliet, M. C. A.; Maat, L.; Sheldon, R. A. Eur. J. Org. Chem. 1999, 2315. [abstract] [2] Ikariya, T.; Hashiguchi, S.; Murata, K.; Noyori, R. Org. Synth. 2005, 82, 10. [PDF]

 

関連反応

 

関連書籍

 

外部リンク

関連記事

  1. オキシム/ヒドラゾンライゲーション Oxime/Hydrazon…
  2. フィッシャー・スペイア エステル合成 Fischer-Speie…
  3. ニーメントウスキー キノリン/キナゾリン合成 Niementow…
  4. エッシェンモーザー・タナベ開裂反応 Eschenmoser-Ta…
  5. 福山アミン合成 Fukuyama Amine Synthesis…
  6. バルツ・シーマン反応 Balz-Schiemann Reacti…
  7. バートン反応 Barton Reaction
  8. チャン転位(Chan Rearrangement)

注目情報

ピックアップ記事

  1. 位相情報を含んだ波動関数の可視化に成功
  2. 第167回―「バイオ原料の活用を目指した重合法の開発」John Spevacek博士
  3. 菌・カビを知る・防ぐ60の知恵―プロ直伝 防菌・防カビの新常識
  4. 2次元分子の芳香族性を壊して、ホウ素やケイ素を含む3次元分子を作る
  5. ヘリウムガスのリサイクルに向けた検討がスタート
  6. 東芝:新型リチウムイオン電池を開発 60倍の速さで充電
  7. 化学パズル・不斉窒素化合物
  8. 山東信介 Shinsuke Sando
  9. 環境対策と経済性を両立する電解酸化反応、創造化学が実用化実験
  10. ジェームス・ツアー James M. Tour

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年8月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

有機合成化学協会誌2024年12月号:パラジウム-ヒドロキシ基含有ホスフィン触媒・元素多様化・縮環型天然物・求電子的シアノ化・オリゴペプチド合成

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年12月号がオンライン公開されています。…

「MI×データ科学」コース ~データ科学・AI・量子技術を利用した材料研究の新潮流~

 開講期間 2025年1月8日(水)、9日(木)、15日(水)、16日(木) 計4日間申込みはこ…

余裕でドラフトに収まるビュッヒ史上最小 ロータリーエバポレーターR-80シリーズ

高性能のロータリーエバポレーターで、効率良く研究を進めたい。けれど設置スペースに限りがあり購入を諦め…

有機ホウ素化合物の「安定性」と「反応性」を両立した新しい鈴木–宮浦クロスカップリング反応の開発

第 635 回のスポットライトリサーチは、広島大学大学院・先進理工系科学研究科 博士…

植物繊維を叩いてアンモニアをつくろう ~メカノケミカル窒素固定新合成法~

Tshozoです。今回また興味深い、農業や資源問題の解決の突破口になり得る窒素固定方法がNatu…

自己実現を模索した50代のキャリア選択。「やりたいこと」が年収を上回った瞬間

50歳前後は、会社員にとってキャリアの大きな節目となります。定年までの道筋を見据えて、現職に留まるべ…

イグノーベル賞2024振り返り

ノーベル賞も発表されており、イグノーベル賞の紹介は今更かもしれませんが紹介記事を作成しました。 …

亜鉛–ヒドリド種を持つ金属–有機構造体による高温での二酸化炭素回収

亜鉛–ヒドリド部位を持つ金属–有機構造体 (metal–organic frameworks; MO…

求人は増えているのになぜ?「転職先が決まらない人」に共通する行動パターンとは?

転職市場が活発に動いている中でも、なかなか転職先が決まらない人がいるのはなぜでしょう…

三脚型トリプチセン超分子足場を用いて一重項分裂を促進する配置へとペンタセンクロモフォアを集合化させることに成功

第634回のスポットライトリサーチは、 東京科学大学 物質理工学院(福島研究室)博士課程後期3年の福…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP