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ワインレブケトン合成 Weinreb ketone synthesis

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概要

N-メトキシ-N-メチルアミドは俗にWeinrebアミドと呼ばれ、Grignard試薬有機リチウム剤と反応してケトンを与える。酸ハライド・エステルにはこれらの試薬は2当量付加し、アルコールを与えてしまうが、Weinrebアミドを経由すれば過剰付加が抑えられる。

水素化リチウムアルミニウムRed-AlDIBALなどを用いてWeinrebアミドを還元すると、アルデヒドが得られる

モルホリンアミドN-アシルピロールN-アシルベンゾトリアゾールなども、同様の目的に用いることができる。

weinreb_4.gif

基本文献

・ Basha, A.; Lipton, J. L.; Weinreb, S. M. Tetrahedron Lett. 1977, 18, 4171. DOI: 10.1016/S0040-4039(01)83457-2
・ Nahm, S.; Weinreb, S. M. Tetrahedron Lett. 1981, 22, 3815. doi:10.1016/S0040-4039(01)91316-4
・ Williams, J. M.; Jobson, R. B.; Yasda, N.; Marchesini, G.; Dolling, U.-H.; Grabowski, E. J. J. Tetrahedron Lett. 1995, 36, 5461. doi:10.1016/0040-4039(95)01089-Z
・ Shimizu, T.; Osako, K.; Nakata, T. Tetrahedron Lett. 1998, 38, 2685. doi:10.1016/S0040-4039(97)00429-2
・ Huang, P.-Q.; Zheng, X.; Deng, X.-M. Tetrahedron Lett. 2001, 42, 9039. doi:10.1016/S0040-4039(01)01933-5
・ Woo, J. C. S.; Fenster, E.; Dake, G. R. J. Org. Chem. 2004, 69, 8984. DOI: 10.1021/jo048385h

<review>
・ Balasubramaniam, S.; Aidhen, I. S. Synthesis 2008, 3707. DOI: 10.1055/s-0028-1083226

 

反応機構

有機金属剤付加後のtetrahedral中間体が、メトキシ基を介する5員環キレートによって安定化される。このためアミンの脱離が妨げられ、これ以上反応剤は付加しない。引き続き酸加水分解によりケトンを与える。

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反応例

Scabronine Gの合成[1]

weinreb_3.gif

Batrachotoxininの合成[3]:モルホリンアミドを同様の目的に用いている。

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実験手順

Weinrebアミドの還元によるアルデヒド合成[2]

weinreb_6.gif

温度計、スターラーバー、滴下漏斗、空冷管を備えた5L四方丸底フラスコに、アルゴン雰囲気下LiAlH4(0.44 mol)および無水ジエチルエーテル(1.5L)を加える。室温で1時間攪拌後、-45℃に冷却する。Boc-ロイシンWeinrebアミド(~100g, 約0.4mol)の無水ジエチルエーテル溶液(300mL)を、反応温度を-35℃付近に保ちつつ滴下する。その後冷却槽を除去し、攪拌しつつ温度を5℃まで上昇させる。再び-35℃まで冷却し、KHSO4(96.4g, 0.71mol)水溶液(265mL)を温度が0℃以上にならないよう、注意しつつ滴下する。冷却槽を除去し、1時間攪拌する。溶液をセライト濾過し、残渣をエーテル(500mL)で洗浄する。合わせて得られた有機層を、1N塩酸(5℃に冷却、350mLx3)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(350mLx2)、飽和食塩水(350mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥する。溶媒除去後、Boc-L-Leucinalを油状物質として得る(69-70g, 収率87-88%)。生成物はフリーザー(-17℃)にて保存する。

 

実験のコツ・テクニック

 

参考文献

[1] Waters, S. P.; Tian, Y.; Li, Y.-M.; Danishefsky, S. J. J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 13514. DOI: 10.1021/ja055220x
[2] Goel, O. P.; Krolls, U.; Stier, M.; Kesten, S. Org. Synth. 1989, 67, 69. [website] [3] Kurosu, M.; Marcin, L. R.; Grinsteiner, T. J.; Kishi, Y. J. Am. Chem. Soc. 1998, 120, 6627. doi: 10.1021/ja981258g

 

関連反応

 

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外部リンク

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