概要
β水素を有するスルホキシドまたはセレノキシドを加熱することで、syn-β脱離が起こり、オレフィンが生成する。
スルホキシドは入手が容易な反面、反応が比較的高温(>80℃)が必要である。これに対して、セレノキシド脱離は0~25℃で容易に進行する。
アミンオキシドを用いる同種の反応はCope脱離と呼ばれる。
アルコールをセレノキシド経由でオレフィンへと変換する西沢・Grieco法(下スキーム)は、きわめて穏和な条件下進行するため、複雑化合物の合成目的で用いられる。有毒なセレンを当量以上用いる必要があるので注意を要する。
基本文献
- Clive, D. L. Tetrahedron 1978, 34, 1049. doi:10.1016/0040-4020(78)80135-5
- Nishizawa-Grieco Method: Grieco, P. A.; Gilman, S.; Nishizawa, M. J. Org. Chem. 1976, 41, 1485. DOI: 10.1021/jo00870a052
反応機構
Grieco法の機構:
反応例
α-セレノカルボニル化合物は、エノラートをPhSeBrなどと反応させることで得られる。これはα,β-不飽和カルボニル化合物の一般的合成法として有用である。[1]
セレノキシドがアリル位に結合している場合は、脱離反応よりもMislow-Evans転位様の[2,3]シグマトロピー転位反応が優先する。転位後のO-Se結合は容易に開裂するため、アリルアルコール合成に用いることも出来る。[2]
Gelsemineの合成 [3]
Merrilactone Aの合成 [4]
実験手順
実験のコツ・テクニック
参考文献
[1] Renga, J. M. Org. Synth. 1988, 6, 23. [2] Vedejs, E.: Duncan, S. M. J. Org. Chem. 2000, 65, 6073. DOI: 10.1021/jo000533q [3] Yokoshima, S.; Tokuyama, H.; Fukuyama, T. Angew. Chem. Int. Ed. 2000, 39, 4073. [abstract] [4] (a) Birman, V. B.; Danishefsky, S. J. J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 2080.DOI: 10.1021/ja012495d (b) Meng, Z.; Danishefsky, S. J. Angew. Chem. Int. Ed. 2005, 44, 1511. DOI: 10.1002/anie.200462509
関連反応
- 脱離反応 Elimination Reaction
- シュガフ脱離 Chugaev Elimination
- コープ脱離 Cope Elimination
- バージェス試薬 Burgess Reagent
- ミズロウ・エヴァンス転位 Mislow-Evans Rearrangement
- 三枝・伊藤酸化 Saegusa-Ito Oxidation
関連書籍