[スポンサーリンク]

O

オキシ-コープ転位 Oxy-Cope Rearrangement

[スポンサーリンク]

概要

1,5-dien-3-ol型化合物は、Cope転位と同様に[3,3]シグマトロピー転位を起こし、δ,ε-不飽和カルボニル化合物を与える。Cope転位は可逆平衡反応であり、生成物比はその熱力学的安定性によって決まる。Oxy-Cope転位の場合は、中間体のエノールが安定なケト型へと異性化する。このため、ほぼ不可逆的に生成物を与える。

塩基を用いて基質をアルコキシドとすることで、転位反応が劇的に(およそ1010-1017倍に)加速されることがEvansらによって見出された。これはアニオニックOxy-Cope転位と呼ばれる。分極度の高いアルコキシドのほうが反応加速効果は大きく、塩基にはKHおよび18-Crown-6の組み合わせが用いられる。高温を必要としないため、熱的に不安定な化合物の合成に用いることも出来る。

基本文献

  • Berson, J. A.; Jones, M., Jr. J. Am. Chem. Soc. 196486, 5017. DOI: 10.1021/ja01076a066
  • Berson, J. A.; Jones, M., Jr. J. Am. Chem. Soc. 196486, 5019. DOI: 10.1021/ja01076a067
  • Anionic oxy-Cope: Evans, D. A.; Golob, A. M. J. Am. Chem. Soc. 1975, 97, 4765. DOI: 10.1021/ja00849a054
  • Rhoads, S.J.; Raulins, N. R. Org. React. 197522, 1.

 

反応機構

他の[3,3]-sigmatropic転位と同様に、6員環遷移状態(特に理由がない場合にはいす型)を経由して進行する。不斉点をもつ化合物の場合には不斉転写が観測される。
oxy_cope_3.gif

反応例

Periplanone B の合成[1]:不斉転写を利用した10員環合成。
oxy_cope_4.gif
(+)-CP-263,114の合成[2] :Oxy-Cope転位を組み込んだカスケード反応を用いて、anti-Bredt型ビシクロ化合物を高効率的に合成している。
oxy_cope_5.gif

実験手順

 

実験のコツ・テクニック

 

参考文献

[1] (a) Still, W. C. J. Am. Chem. Soc. 1979101, 2493. DOI: 10.1021/ja00503a048 (b) Adams, M. A.; Nakanishi, K.; Still, W. C.; Arnold, E. V.; Clardy, J.; Persoons, C. J. J. Am. Chem. Soc. 1979, 101, 2495. DOI: 10.1021/ja00503a049
[2] Chen, C.; Layton, M. E.; Sheehan, S. M.; Shair, M. D. J. Am. Chem. Soc. 2000, 122, 7424. DOI: 10.1021/ja001958x

 

関連反応

 

関連書籍

[amazonjs asin=”4759808752″ locale=”JP” title=”ペリ環状反応―第三の有機反応機構”]

 

外部リンク

関連記事

  1. キレトロピー反応 Cheletropic Reaction
  2. セイファース・ギルバート アルキン合成 Seyferth-Gil…
  3. ワイス反応 Weiss Reaction
  4. ジアゾカップリング diazocoupling
  5. 三枝・伊藤酸化 Saegusa-Ito Oxidation
  6. コーンブルム酸化 Kornblum Oxidation
  7. スマイルス転位 Smiles Rearrangement
  8. コープ転位 Cope Rearrangement

注目情報

ピックアップ記事

  1. ノーベル賞の合理的予測はなぜ難しくなったのか?
  2. 分子研 大学院説明会・体験入学説明会 参加登録受付中!
  3. 改正 研究開発力強化法
  4. バルビエ・ウィーランド分解 Barbier-Wieland Degradation
  5. メーヤワイン試薬 Meerwein Reagent
  6. 9‐Dechlorochrysophaentin Aの合成と細胞壁合成阻害活性の評価
  7. エステル、アミド、ニトリルの金属水素化物による部分還元 Partial Reduction of Esters, Amides nad Nitriles with Metal Hydride
  8. 二次元物質の科学 :グラフェンなどの分子シートが生み出す新世界
  9. ダイセルが開発した新しいカラム: DCpak PTZ
  10. バニリン /Vanillin

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年7月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

注目情報

最新記事

「MI×データ科学」コース ~データ科学・AI・量子技術を利用した材料研究の新潮流~

 開講期間 2025年1月8日(水)、9日(木)、15日(水)、16日(木) 計4日間申込みはこ…

余裕でドラフトに収まるビュッヒ史上最小 ロータリーエバポレーターR-80シリーズ

高性能のロータリーエバポレーターで、効率良く研究を進めたい。けれど設置スペースに限りがあり購入を諦め…

有機ホウ素化合物の「安定性」と「反応性」を両立した新しい鈴木–宮浦クロスカップリング反応の開発

第 635 回のスポットライトリサーチは、広島大学大学院・先進理工系科学研究科 博士…

植物繊維を叩いてアンモニアをつくろう ~メカノケミカル窒素固定新合成法~

Tshozoです。今回また興味深い、農業や資源問題の解決の突破口になり得る窒素固定方法がNatu…

自己実現を模索した50代のキャリア選択。「やりたいこと」が年収を上回った瞬間

50歳前後は、会社員にとってキャリアの大きな節目となります。定年までの道筋を見据えて、現職に留まるべ…

イグノーベル賞2024振り返り

ノーベル賞も発表されており、イグノーベル賞の紹介は今更かもしれませんが紹介記事を作成しました。 …

亜鉛–ヒドリド種を持つ金属–有機構造体による高温での二酸化炭素回収

亜鉛–ヒドリド部位を持つ金属–有機構造体 (metal–organic frameworks; MO…

求人は増えているのになぜ?「転職先が決まらない人」に共通する行動パターンとは?

転職市場が活発に動いている中でも、なかなか転職先が決まらない人がいるのはなぜでしょう…

三脚型トリプチセン超分子足場を用いて一重項分裂を促進する配置へとペンタセンクロモフォアを集合化させることに成功

第634回のスポットライトリサーチは、 東京科学大学 物質理工学院(福島研究室)博士課程後期3年の福…

2024年の化学企業グローバル・トップ50

グローバル・トップ50をケムステニュースで取り上げるのは定番になっておりましたが、今年は忙しくて発表…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP