概要
芳香族ジアゾ化合物の変換反応。ジアゾ化合物はニトロ化合物やアニリン誘導体を出発原料として容易に調製可能である。
基本文献
- Sandmeyer, T. Ber. 1884, 17, 1633.
- Sandmeyer, T. Ber. 1884, 17, 2650.
- Hodgson, H. H. Chem. Rev. 1947, 40, 251. DOI: 10.1021/cr60126a003
- Galli, C. Chem. Rev. 1988, 88, 765. DOI: 10.1021/cr00087a004
反応機構
形式上は芳香族求核置換に相当する。一電子移動(SET)機構により進行すると考えられているが、いまだ明確ではない。
ジアゾニウムイオンの調製
原料であるジアゾニウム塩はアニリン類に亜硝酸ナトリウム NaNO2 を酸性下で反応させることで調製できる。具体的には (1) 亜硝酸イオンの脱水に伴うニトロソニウムイオンの生成, (2) アミノ基とニトロソニウムイオンによる脱水縮合である。
亜硝酸ナトリウムに酸を作用させることで, 亜硝酸 HNO2 が生成する. その亜硝酸がさらに強酸の作用をうけると, ヒドロキシ基が良好な脱離基である水となって脱離する (脱水する). なお, ニトロソニウムイオンを発生させるのに亜硝酸を直接使用しない理由は, 亜硝酸 HNO2 自身はそれほど安定でなく, 亜硝酸ナトリウムの方が扱いやすいからである.
第一ステップで生成したニトロソニウムイオンは強力な求電子剤である. アニリンの窒素のローンペアはニトロソニウムイオンの N 原子に攻撃することで, π 電子を酸素側に叩く. (形式電荷は酸素の上に置かれているが, ローンペアは酸素に攻撃するわけではないことに注意. 電気陰性度は N< O なので π 電子が O 側に移動するように, 窒素を叩く. ) その後, アニリン由来の窒素上の水素が酸素上へ酸塩基平衡のもとで移動する (むしろ酸塩基平衡なので, 単にプロトンが酸素上に移動したものが, 次の反応に進むと考えておく). 最後に, 窒素原子のローンペアの押し出しによって水が脱離し, アリールジアゾニウムイオンが生成する.
反応例
CuCNを作用させると、対応するシアノ誘導体が得られる。 CuClやCuBrを用いると、対応するハロゲン誘導体が得られる。ヨウ化ナトリウムと加熱するとヨウ素誘導体が、四フッ化ホウ素酸銀でフルオロボラート塩に変えて加熱すると、フッ素誘導体が生成する(Balz-Schiemann反応を参照)。また、水やアルコールと加熱すると、対応するフェノール・アリールエーテル類が得られる。次亜リン酸と処理すると、ジアゾニウム塩を水素に変換できる。
実験手順
実験のコツ・テクニック
参考文献
関連反応
- クロム(η6-アレーン)カルボニル錯体 Cr(η6-arene)(CO)3 Complex
- メーヤワイン アリール化反応 Meerwein Arylation
- 芳香環のハロゲン化 Halogenation of Aromatic Ring
- バルツ・シーマン反応 Balz-Schiemann Reaction
- オルトメタル化 Directed Ortho Metalation
関連書籍
関連リンク
- Sandmeyer Reaction (Wikipedia)
- Sandmeyer Reaction (organic-chemistry.org)
- ザンドマイヤー反応 (Wikipedia日本)