概要
vic-ジオール化合物(ピナコール)は強酸性条件に伏すと、脱水を伴った転位を起こし、カルボニル化合物を与える。
アルキル基、アリール基、ヒドリドのいずれも転位する可能性がある。このため、置換基R1~R4が異なる化合物の場合には、転位生成物はさまざまな混合物となる。
一般に電子豊富な置換基ほど転位しやすく、大まかな転位しやすさの傾向は aryl
> H > alkenyl > tert-alkyl
>> cyclopropyl > sec-alkyl > prim-alkyl とされる。
vic-ジオールの一方のヒドロキシル基が脱離基となった化合物も同様の転位反応を起こす。この場合を特にセミピナコール転位と呼ぶこともある。こちらのほうがより穏和な条件下進行するため、基質を上手くデザインできれば合成的価値が高い。
基本文献
- Fittig, R. Liebigs Ann. Chem. 1860, 114, 54.
- Rickborn, B. Comp. Org. Syn. 1991, 3, 721.
反応機構
Wagner-Meerwein転位と類似のカチオン性[1,2]転位機構で進行する。隣接ヒドロキシル基のlone
pairの関与により転位は促進される。カチオン安定化能の高い基質の場合には、結合回転が優先する結果、転位先の立体化学が失われることも多い。
反応例
環状置換基を有するピナコールは、スピロ型化合物の前駆体としてとらえることが出来る。環拡大反応の典型である。
実験手順
実験のコツ・テクニック
参考文献
関連反応
- ドウド・ベックウィズ環拡大反応 Dowd-Beckwith Ring Expansion
- ティフェノー・デミヤノフ転位 Tiffeneau-Demjanov Rearrangement
- デミヤノフ転位 Demjanov Rearrangement
- ワーグナー・メーヤワイン転位 Wagner-Meerwein Rearrangement
- ピナコールカップリング Pinacol Coupling
- バイヤー・ビリガー酸化 Baeyer-Villiger Oxidation
- ベックマン転位 Beckmann Rearrangement
関連書籍
関連リンク
- Pinacol Rearrangement (organic-chemistry.org)
- ピナコール転位(Wikipedia)
- Pinacol Rearrangement (Wikipedia)
- Semipinacol Rearrangement (Wikipedia)