概要
リチオスルホンの求核付加、引き続くアシル保護により生成するβ-アシルオキシスルホンを還元処理し、カルボニル化合物をアルケンへと変換する反応。生成するβ-アシルオキシスルホンの立体化学に依らず、E-アルケンが選択的に得られる。還元時にはNaアマルガムもしくはヨウ化サマリウム(II)を用いることが一般的。
リチオスルホンは比較的反応性が高いことで知られる。他のオレフィン合成法(Wittig反応、Horner-Wadsworth-Emmons反応など)では求核付加を受けにくい低反応性基質であっても、良好な収率で付加体を与えることがある。四置換オレフィン合成にも適用可能であるが、幾何異性を制御した合成は現在の技術でも難しい。
スルホン部芳香環をチューニングすることによって、Naアマルガムを使わず、脱離反応までを一段階で行える改良One-Pot Julia反応が開発された。 しかしながら、この条件はE/Z選択性に難があることが多い。
近年ではさらなる改良がなされ、PT(phenyltetrazole)-スルホンを用いる条件が1998年にKocienskiらによって開発された(Julia-Kocienski変法)。本法では高いE選択性にてオレフィンが得られる。詳細は別項を参照。
基本文献
- Julia, M.; Paris, J. M. Tetrahedron Lett. 1973, 4833. doi:10.1016/S0040-4039(01)87348-2
- Kocienski, P. J.; Lythgoe, B. J. Chem. Soc. Perkin Trans, 1 1980, 1045. DOI: 10.1039/P19800001045
- Keck, G. E.; Savin, K. A.; Weglarz, M. A. J. Org. Chem. 1995, 60, 3194. doi:10.1021/jo00115a041
- Modified Julia: Baudin, J. B.; Hareau, G.; Julia, S. A.; Ruel, O. Tetrahedron Lett. 1991, 32, 1175. doi:10.1016/S0040-4039(00)92037-9
- Review: Kocienski, P. J. Phosphorus and Sulfur 1985, 24, 97.
- Review: Kelly, S. E. Compreheisive Organic Synthesis 1991, 1, 792.
反応機構
詳細な反応機構は明らかではないが、高いE-選択性は一電子還元時に生成するラジカルorアニオン中間体がもっとも熱力学的に安定な化学種へと異性化しやすいことに起因するとされている。ヨウ化サマリウムを用いると異なる反応機構で進行する( 参考: J. Org. Chem.1995,60, 3194.) 。
反応例
Bryostatin 2の合成[1]:鎖状化合物・マクロライド系化合物の合成に多用される。
実験手順
実験のコツ・テクニック
参考文献
[1] Evans, D. A. et al. J. Am. Chem. Soc. 1999, 121, 7540. DOI: 10.1021/ja990860j
関連反応
- スマイルス転位 Smiles Rearrangement
- ランバーグ・バックランド転位 Ramberg-Bäcklund Rearrangement
- 有機リチウム試薬 Organolithium Reagents
- ジョンソン オレフィン合成 Johnson Olefination
- コーリー・チャイコフスキー反応 Corey-Chaykovsky Reaction
- ペタシス試薬 Petasis Reagent
- ピーターソンオレフィン化 Peterson Olefination
- テッベ試薬 Tebbe Reagent
- マクマリーカップリング McMurry Coupling
- 高井・内本オレフィン合成 Takai-Uchimoto Olefination
- ホーナー・ワズワース・エモンス反応 Horner-Wadsworth-Emmons (HWE) Reaction
- ウィッティヒ反応 Wittig Reaction
- ジュリア・コシエンスキーオレフィン合成 Julia-Kocienski Olefiniation
関連書籍
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外部リンク
- Julia Olefination(Wikipedia)
- Julia-Lythgoe Olefination (organic-chemistry.org)
- スルホン (Wikipedia日本)