[スポンサーリンク]

H

溝呂木・ヘック反応 Mizoroki-Heck Reaction

[スポンサーリンク]

 

概要

Pd(0)触媒存在下に、ハロゲン化アリール/アルケニルを末端オレフィンとクロスカップリングさせ、置換オレフィンを合成する反応。官能基選択性が優れており、収率も高い。

生成するオレフィンの位置異性化が起こらない系に対して特に有効である。基質にアリルアルコール類を用いると、オレフィンの位置異性化が起こりカルボニルが得られる。

アリール・アルコキシカルボニルなどの電子求引基をもつアルケンの場合、置換基の無い炭素で結合形成が起こる。他方、アルコキシエーテルなどの電子供与性置換を持つアルケンにおいては、位置選択制制御は難しい。

分子内Heck反応はDiels-Alder反応と並び、四級不斉炭素を有する縮環化合物を合成可能な数少ない方法論である(反応例参照)。

基本文献

  • Mizoroki, T.; Mori, K.; Ozaki, A. Bull. Chem. Soc. Jpn. 1971, 44, 581.
  • Heck, R. F.; Nolley, Jr., J. P. J. Org. Chem. 197237, 2320. DOI:10.1021/jo00979a024
  • Heck, R. F. Org. React. 1982, 27, 345.
  • de Meijere, A.; Meyer, F. E. Jr.; Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 1994, 33, 2379.[Abstract]
  • 足森厚之, Overman, L. E. 有機合成化学協会誌 200058, 718.
  • Beletskaya, I. P.; Cheprakov, A. B. Chem. Rev. 2000100, 3009. DOI: 10.1021/cr9903048
  • Dounay, A. B.; Overman, L. E. Chem. Rev. 2003103, 2945. DOI: 10.1021/cr020039h
  • Link, J. T. Org. React. 2003, 103, 2945.

 

反応機構

migratory insertionおよびβ-hydride eliminationは、ともにパラジウムに対してsynの位置で起こる。この知見はHeck反応の立体化学(特に縮環化合物を合成するケース)を理解するのに重要である。
heck_2.gif

反応例

Arenastatin Aの合成[1] x-ene-7.gif
アリールアミン類とのHeck反応。
x-ene-5.gif
π-アリルパラジウム中間体の補足[2]:アミドのN原子がパラジウムに対して逆面から求核攻撃する。
x-ene-4.gif
Scopadulcic Acid A合成におけるドミノHeck反応[3]: パラジウムに対してsynの位置に脱離すべきβ-ヒドリドがない場合、2つめのオレフィンが挿入して多環性化合物を与える。
heck_3.gif
不斉Heck反応を用いるEpitazocine合成[4]:二座キラルホスフィン配位子を用いることで不斉化が可能である。カチオン性パラジウムが高選択的反応には重要である。基質としてトリフラートを用いるか、もしくはハライド+銀塩添加が必要である。
heck_7.gif
酢酸パラジウムとP(o-Tol)3から調製される安定なパラダサイクル触媒を用いると触媒回転数(TON)を100万程度にまで向上させることができる。
heck_8.gif

実験手順

アルケニルブロミドおよびアクリル酸メチル間の溝呂木-Heck反応[5] heck_9.gif

実験のコツ・テクニック

 

参考文献

[1] Georg, G. I.. et al. J. Org. Chem, 200065, 7792. DOI: 10.1021/jo000767+

[2] Waterlot, C; Couturier, D. et.al. Tetrahedron Lett. 200041, 317. doi:10.1016/S0040-4039(99)02082-1

[3] Fox, M. E.; Li, C; Marino, J. P.; Overman, L. E. J. Am. Chem. Soc. 1999, 121, 5467. DOI: 10.1021/ja990404v

[4] Takemoto, T.; Sodeoka, M.; Sasai, H.; Shibasaki, M. J. Am. Chem. Soc. 1993, 115, 8477. DOI: 10.1021/ja00071a079

[5] Dieck, H. A.; Heck, R. F. J. Org. Chem. 197540, 1083. DOI: 10.1021/jo00896a020

 

関連反応

 

関連書籍

[amazonjs asin=”0470033940″ locale=”JP” title=”The Mizoroki-Heck Reaction”][amazonjs asin=”0470850337″ locale=”JP” title=”Palladium Reagents and Catalysts: New Perspectives for the 21st Century”][amazonjs asin=”3642271243″ locale=”JP” title=”Transition Metal Catalyzed Enantioselective Allylic Substitution in Organic Synthesis (Topics in Organometallic Chemistry)”][amazonjs asin=”3642075762″ locale=”JP” title=”Cross-Coupling Reactions: A Practical Guide (Topics in Current Chemistry)”][amazonjs asin=”3527331549″ locale=”JP” title=”Metal Catalyzed Cross-Coupling Reactions and More, 3 Volume Set”]

 

関連リンク

関連記事

  1. フィッシャーカルベン錯体 Fischer Carbene Com…
  2. マイヤース・斉藤環化 Myers-Saito Cyclizati…
  3. 四酸化オスミウム Osmium Tetroxide (OsO4)…
  4. ストライカー試薬 Stryker’s Reagent…
  5. ジアゾカップリング diazocoupling
  6. 三枝・伊藤酸化 Saegusa-Ito Oxidation
  7. トリメチレンメタン付加環化 Trimethylenemethan…
  8. 脱離反応 Elimination Reaction

注目情報

ピックアップ記事

  1. あなたの体の中の”毒ガス”
  2. マクミラン触媒 MacMillan’s Catalyst
  3. 二酸化炭素をほとんど排出せず、天然ガスから有用化学品を直接合成
  4. 独メルク、米シグマアルドリッチを買収
  5. ペンタシクロアナモキシ酸 pentacycloanamoxic acid
  6. 工程フローからみた「どんな会社が?」~タイヤ編 その2
  7. 2019年ノーベル化学賞は「リチウムイオン電池」に!
  8. 谷口 透 Tohru Taniguchi
  9. ビス[α,α-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンメタノラト]ジフェニルサルファー : Bis[alpha,alpha-bis(trifluoromethyl)benzenemethanolato]diphenylsulfur
  10. 凸版印刷、有機ELパネル開発

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年6月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

注目情報

最新記事

植物由来アルカロイドライブラリーから新たな不斉有機触媒の発見

第632回のスポットライトリサーチは、千葉大学大学院医学薬学府(中分子化学研究室)博士課程後期3年の…

MEDCHEM NEWS 33-4 号「創薬人育成事業の活動報告」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

第49回ケムステVシンポ「触媒との掛け算で拡張・多様化する化学」を開催します!

第49回ケムステVシンポの会告を致します。2年前(32回)・昨年(41回)に引き続き、今年も…

【日産化学】新卒採用情報(2026卒)

―研究で未来を創る。こんな世界にしたいと理想の姿を描き、実現のために必要なものをうみだす。…

硫黄と別れてもリンカーが束縛する!曲がったπ共役分子の構築

紫外光による脱硫反応を利用することで、本来は平面であるはずのペリレンビスイミド骨格を歪ませることに成…

有機合成化学協会誌2024年11月号:英文特集号

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年11月号がオンライン公開されています。…

小型でも妥協なし!幅広い化合物をサチレーションフリーのELSDで検出

UV吸収のない化合物を精製する際、一定量でフラクションをすべて収集し、TLCで呈色試…

第48回ケムステVシンポ「ペプチド創薬のフロントランナーズ」を開催します!

いよいよ本年もあと僅かとなって参りましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。冬…

3つのラジカルを自由自在!アルケンのアリール–アルキル化反応

アルケンの位置選択的なアリール–アルキル化反応が報告された。ラジカルソーティングを用いた三種類のラジ…

【日産化学 26卒/Zoomウェビナー配信!】START your ChemiSTORY あなたの化学をさがす 研究職限定 キャリアマッチングLIVE

3日間で10領域の研究職社員がプレゼンテーション!日産化学の全研究領域を公開する、研…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP