アルコール、ハロゲン化合物→窒素化合物
概要
穏和な条件で二級アミンが合成できるきわめて強力な手法。
ニトロベンゼンスルホンアミド(ノシル(Ns)アミド)のプロトンは酸性度が高く、光延反応条件によりアルキル化することが可能である。
弱塩基・アルキルハライドを用いるアルキル化条件に伏すこともできる。
トルエンスルホニル(Ts)アミドなどでも同様の変換に伏すことは可能だが、Ns基の場合はチオールの求核攻撃によって容易に脱保護が行える。この点で脱保護の難しいTs基よりも優れる。
Ns基はアミンの保護と活性化の二役をこなす、次世代型保護基と言える。
基本文献
- Fukuyama, T.; Jow, C. K.; Cheung, M. Tetrahedron Lett. 1995. DOI: 10.1016/0040-4039(95)01316-A
- Review: Kan, T.; Fukuyama, T. Chem. Commun. 2004, 353. DOI: 10.1039/b311203a
開発の歴史
福山透らによって1995年に開発された。ちなみに福山は1995年にライス大教授から東京大学へと移り、現在名古屋大学特任教授である。
反応機構
脱保護:Ns基はチオールの求核付加によりMeisenheimerコンプレックスを経由し、引き続き二酸化硫黄の脱離を伴って脱保護される。他のスルホン系保護基に比べ、脱保護が容易な点が特長である。
反応例
ニトロ2置換のDNs保護基も同様の手法に用いられる。Nsと区別して脱保護することも可能。
大環状アミンの合成にも用いることが出来る[1]。
実験手順
ノシル基の脱保護[2]
攪拌子を備えた100mL二径フラスコに、窒素雰囲気下、チオフェノール(7.82mL, 76.5mmol)のアセトニトリル(20mL)溶液を調製する。溶液を氷冷し、10.9M水酸化カリウム水溶液(7.02mL,
76.5mmol)を10分かけて加える。5分攪拌後、氷浴を取り除き、N-(4-Methoxybenzyl)-N-(3-phenylpropyl)-2-nitrobenzenesulfonamide
(13.5g, 30.6mmol)のアセトニトリル(20mL)溶液を20分かけて加える。溶液を50℃にて40分過熱攪拌し、室温まで放冷する。水(80mL)で希釈し、ジクロロメタン(3×80mL)で抽出する。有機層を合わせ、飽和食塩水(80mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させる。ろ過して減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィで精製する。濃縮後得られた油状物質をジクロロメタン(120mL)に溶解させ、1M水酸化ナトリウム水溶液(80mL)、飽和食塩水(40mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥する。ろ過して濃縮、減圧蒸留にて精製(150℃,0.25mmHg)することで目的のアミンを無色油状物質として得る(6.98-7.08 g, 収率89-91%)。
実験のコツ・テクニック
参考文献
- Fujiwara, A.; Kan, T.; Fukuyama, T. Synlett 2000, 1667. DOI: 10.1055/s-2000-7950
- Kurosawa, W.; Kan, T.; Fukuyama, T. Org. Synth. 2002, 79, 186. [PDF]
関連反応
- 求核置換反応 Nucleophilic Substitution
- モヴァッサージ脱酸素化 Movassaghi Deoxigenation
- ハートウィグ ヒドロアミノ化反応 Hartwig Hydroamination
- デレピン アミン合成 Delepine Amine Synthesis
- フォルスター・デッカー アミン合成 Forster-Decker Amine Synthesis
- スルホン系保護基 Sulfonyl Protective Group
- カルバメート系保護基 Carbamate Protection
- ガブリエルアミン合成 Gabriel Amine Synthesis
- ボーチ還元的アミノ化反応 Borch Reductive Amination
- バックワルド・ハートウィグ クロスカップリング Buchwald-Hartwig Cross Coupling
- 光延反応 Mitsunobu Reaction
関連書籍
外部リンク
- 保護基(Wikipedia)
- 天然物合成化学教室(福山研)