[スポンサーリンク]

A

(古典的)アルドール反応 (Classical) Aldol Reaction

[スポンサーリンク]

 

概要

カルボニル化合物から生じるエノラートもしくはエノール種がアルデヒド/ケトンへと求核攻撃し、炭素-炭素結合を形成しつつβ-ヒドロキシケトン(アルドール)を与える反応。Brönsted酸/塩基触媒存在下の加熱条件が古典的条件として用いられる。

得られたアルドール体を脱水させると、α,β-不飽和ケトンが生成する(アルドール縮合)。

 

開発の歴史

ロシアの作曲家兼化学者であるアレクサンドル・ボロディンによって開発されたとされる。

アレクサンドル・ボロディン

アレクサンドル・ボロディン

基本文献

・Kane, R. J. Prakt. Chem. 183815, 129.
・Kane, R. Ann. Phys. Chem. Ser. 2 183844, 475.

<review>

・Mukaiyama, T. Org. React. 1982, 28, 203. DOI: 10.1002/0471264180.or028.03
・Heathcock, C. H. Comprehensive Organic Synthesis 1991, 133.
・Machajewski, T. D.; Wong, C.-H. Angew. Chem. Int. Ed. 2000, 39, 1352.
[abstract]
・Palomo, C.; Oiarbide, M.; Garcia, J. M. Chem. Eur. J. 20028, 36. [abstract]
・Mahrwald, R. ed. Modern Aldol Reactions Wiley-VCH, 2004.
・Palomo, C.; Oiarbide, M.; Garcia, J. M. Chem. Soc. Rev. 2004, 33, 65. DOI: 10.1039/b202901d
・Schetter, B.; Mahrwald, R. Angew. Chem. Int. Ed. 200645, 7506. doi:10.1002/anie.200602780

反応機構

すべての過程は平衡・可逆である。逆反応を特にレトロアルドール反応と呼ぶ。主生成物は化合物の熱力学的安定性によって決まり、収率は用いる基質に大きく依存する。厳密な立体制御は通常難しい。さらに、さまざまな副生成物(脱水体、自己縮合体など)が副生するため、望みの化合物だけを狙って得るには工夫が必要になる。

aldol_2

反応例

シリルエノラートを経由せずに交差アルドール反応を行う条件(直接的アルドール反応)にて立体制御が可能になれば、アトムエコノミー的観点からも意義が大きく、有用な反応となる。柴崎らは、ランタノイド-アルカリ金属複合型触媒を用いる世界初の直接的触媒的不斉アルドール反応を開発している。[1]
aldol_3.gif
触媒量のプロリンによる直接的触媒的不斉アルドール反応がList,Barbasらによって達成[2]され、現在の有機分子触媒研究の火付けとなった(List-Barbasアルドール反応)。
aldol_4.gif

エナミンを経由する分子内アルドール反応は全合成にも良く用いられる。以下は(-)-Calyciphylline Nの合成における適用例。[3]

aldol_3

実験手順

実験のコツ・テクニック

関連動画

参考文献

[1] (a) Yamada,Y. M. A.; Yoshikawa, N.; Sasai, H.; Shibasaki, M. Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 1997, 36, 1871. doi:10.1002/anie.199718711 (b) Yoshikawa, N.; Yamada, Y. M. A.; Das, J.; Sasai, H.; Shibasaki, M. J. Am. Chem. Soc. 1999, 121, 4168. DOI: 10.1021/ja990031y
[2] (a) List, B.; Lerner, R. A.; Barbas, C. F., III J. Am. Chem. Soc. 2000, 122, 2395. DOI: 10.1021/ja994280y (b) Notz, W.; List, B. J. Am. Chem. Soc. 2000122, 7386. DOI: 10.1021/ja001460v (c) List, B.; Pojarliev, P.; Castello, C. Org. Lett. 20013, 573. DOI: 10.1021/ol006976y (d) Sakthivel, K.; Notz, W.; Bui, T.; Barbas, C. F., III J. Am. Chem. Soc. 2001, 123, 5260. DOI: 10.1021/ja010037z
[3] Shvartsbart, A.; Smith, A. B., III  J. Am. Chem. Soc. 2014, 136, 870. DOI: 10.1021/ja411539w

 

関連反応

 

関連書籍

有機合成化学入門 基礎知識をまとめて実践に備える

有機合成化学入門 基礎知識をまとめて実践に備える

西村 淳, 樋口 弘行, 大和 武彦
¥3,080(as of 12/22 11:50)
Amazon product information
知っておきたい有機反応100 第2版

知っておきたい有機反応100 第2版

¥2,970(as of 12/21 21:19)
Amazon product information
Modern Methods in Stereoselective Aldol Reactions (English Edition)

Modern Methods in Stereoselective Aldol Reactions (English Edition)

¥26,311(as of 12/22 13:16)
Release date: 2013/02/22
Amazon product information

 

外部リンク

関連記事

  1. ボールドウィン則 Baldwin’s Rule
  2. ボロン酸触媒によるアミド形成 Amide Formation C…
  3. ピニック(クラウス)酸化 Pinnick(Kraus) Oxid…
  4. 有機銅アート試薬 Organocuprate
  5. フロインターベルク・シェーンベルク チオフェノール合成 Freu…
  6. カルバメート系保護基 Carbamate Protection
  7. ケネディ酸化的環化反応 Kennedy Oxydative Cy…
  8. 芳香族求核置換反応 Nucleophilic Aromatic …

注目情報

ピックアップ記事

  1. 化学系人材の、より良い将来選択のために
  2. 放線菌が生産するアベナルミ酸生合成において、ジアゾ化とヒドリド転移による芳香族アミノ基除去システムを発見
  3. パラジウム触媒の力で二酸化炭素を固定する
  4. ブロモジメチルスルホニウムブロミド:Bromodimethylsulfonium Bromide
  5. 歪んだアルキンへ付加反応の位置選択性を予測する
  6. 「オプジーボ」の特許とおカネ
  7. 書物から学ぶ有機化学4
  8. 水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム Red-Al
  9. 逆生合成理論解析という手法を開発し、テルペン系類縁天然物 peniroquesine の難解な生合成機構の解明に成功
  10. 論文・学会発表に役立つ! 研究者のためのIllustrator素材集: 素材アレンジで描画とデザインをマスターしよう!

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年6月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

注目情報

最新記事

有機合成化学協会誌2024年12月号:パラジウム-ヒドロキシ基含有ホスフィン触媒・元素多様化・縮環型天然物・求電子的シアノ化・オリゴペプチド合成

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年12月号がオンライン公開されています。…

「MI×データ科学」コース ~データ科学・AI・量子技術を利用した材料研究の新潮流~

 開講期間 2025年1月8日(水)、9日(木)、15日(水)、16日(木) 計4日間申込みはこ…

余裕でドラフトに収まるビュッヒ史上最小 ロータリーエバポレーターR-80シリーズ

高性能のロータリーエバポレーターで、効率良く研究を進めたい。けれど設置スペースに限りがあり購入を諦め…

有機ホウ素化合物の「安定性」と「反応性」を両立した新しい鈴木–宮浦クロスカップリング反応の開発

第 635 回のスポットライトリサーチは、広島大学大学院・先進理工系科学研究科 博士…

植物繊維を叩いてアンモニアをつくろう ~メカノケミカル窒素固定新合成法~

Tshozoです。今回また興味深い、農業や資源問題の解決の突破口になり得る窒素固定方法がNatu…

自己実現を模索した50代のキャリア選択。「やりたいこと」が年収を上回った瞬間

50歳前後は、会社員にとってキャリアの大きな節目となります。定年までの道筋を見据えて、現職に留まるべ…

イグノーベル賞2024振り返り

ノーベル賞も発表されており、イグノーベル賞の紹介は今更かもしれませんが紹介記事を作成しました。 …

亜鉛–ヒドリド種を持つ金属–有機構造体による高温での二酸化炭素回収

亜鉛–ヒドリド部位を持つ金属–有機構造体 (metal–organic frameworks; MO…

求人は増えているのになぜ?「転職先が決まらない人」に共通する行動パターンとは?

転職市場が活発に動いている中でも、なかなか転職先が決まらない人がいるのはなぜでしょう…

三脚型トリプチセン超分子足場を用いて一重項分裂を促進する配置へとペンタセンクロモフォアを集合化させることに成功

第634回のスポットライトリサーチは、 東京科学大学 物質理工学院(福島研究室)博士課程後期3年の福…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP