ビリジカタムトキシン(Viridicatumtoxin)は、Penicillium aethiopicum.が生産するテトラサイクリン構造を持つカビ由来のメロテルペノイドである。(テルペノイドの部分構造を持つハイブリッド型化合物)
スピロ環を有していることが構造的な特徴として挙げられる。また、抗MRSA活性を有している。
ビリジカタムトキシンの生合成
ビリジカタムトキシンの遺伝子クラスター内にはterpene cyclaseがなく、その特徴的なスピロ環がどのように形成されているかは謎であった。Yi Tanらは、遺伝子破壊実験などにより、Cytochrome P450であるVrtKという酵素が、ビリジカタムトキシンのスピロ環形成に関わることを明らかにした。Cytochrome P450がテルペンの環化を触媒するという例はこれまで知られておらず、VrtKはその最初の例である。
Dean Tantilloらは、ビリジカタムトキシンのスピロ環形成の反応機構についてDFT計算を行なった。
Vrt Kは、C17位の水素を奪い、アリルカチオンを生成する。その後のスピロ環形成には2つの経路が考えられる。
青で示した経路は、以前K. N. Houkによって示されものである。赤で示した経路は、その後Tantilloにより示されたものである。赤の経路の方が、安定な3級カチオンを経由しているため、有利であることがDFT計算により示された。
ビリジカタムトキシンの生合成研究により、Cytochrome P450の新たな側面が明らかとなった。今後のCytochrome P450研究で、Cytochrome P450の酸化反応以外の新たな機能が更に明らかとなっていくかもしれない。
参考文献
- “A Cytochrome P450 Serves as an Unexpected Terpene Cyclase during Fungal Meroterpenoid Biosynthesis” Yit-Heng Chooi, Young J. Hong, Ralph A. Cacho, Dean J. Tantillo, and Yi Tan, J. Am. Chem. Soc. 2013, 135, 16805−16808. DOI: 10.1021/ja408966t