ノッド因子は、窒素固定をする根粒菌から分泌されて、マメ科植物に認識される「共生しようよ」のメッセージになる分子。根粒菌でノッド因子が作られなかったり、マメ科植物の遺伝子に変異がありメッセージを受けとることができなくなっていたりすると、根粒(nodule)ができなくなります。
詳説
ノッド因子(Nod factor)は、根粒菌と呼ばれる土壌中の微生物から分泌され、ダイズ・アズキ・エンドウ・ミヤコグサ・タルウマゴヤシ・ネムノキ・オジギソウといったマメ科植物によって認識されます。根粒菌の種類によって、ノッド因子はアセチル基やスルホン酸基などわずかに構造が異なることがあり、宿主となるマメ科植物との特異的な認識に役割を持っていると考えられています。ノッド因子の受容体は、植物細胞の細胞膜に存在するキナーゼタンパク質の1種です[1]。このキナーゼタンパク質は、細菌の細胞壁多糖や、真菌の細胞壁多糖を認識し、植物免疫を仲介する受容体と、配列が類似しているものの、マメ科植物ではノッド因子の認識に機能が特化しています。ノッド因子の受容体は、タンパク質のアスパラギン残基の場所で、高度に糖鎖修飾されています[5]。
類縁体合成による構造活性相関によると、ノッド因子は脂質修飾部位の不飽和結合が活性に重要であり、飽和炭化水素で置き換えることができないと判明しています[3]。このことは、菌根菌共生を仲介するミック因子(Myc factor)と相違する、ノッド因子の構造上の特徴の1つです。
活性を保ったまま、この不飽和部分をベンゼン環で置き換えること[2],[4]はできて、またアジド誘導体を使った光親和標識によっても受容体との相互作用が確認[6]されています。
分子モデル
参考論文
[1] “A receptor kinase gene of the LysM type is involved in legumeperception of rhizobial signals.” Madsen EB et al. Nature 2003 DOI: 10.1038/nature02045 など
[2] “Simple synthesis of nodulation-factor analogues exhibiting high affinity towards a specific binding protein.” Grenouillat N et al. Angew. Chem. Int. Ed. 2004 DOI: 10.1002/anie.200460275
[3] “The relative orientation of the lipid and carbohydrate moieties of lipochitooligosaccharides related to nodulation factors depends on lipid chain saturation.” Groves P et al. Org. Biomol. Chem. 2005 DOI: 10.1039/b500104h
[4] “NMR and molecular modeling reveal key structural features of synthetic nodulation factors.” Morando MA et al. Glycol. Biol. 2011 DOI: 10.1093/glycob/cwr014
[5] “Legume receptors perceive the rhizobial lipochitin oligosaccharide signal molecules by direct binding.” Broghammer A et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2012 DOI: 10.1073/pnas.1205171109
[6] “Lipo-chitooligosaccharidic Symbiotic Signals Are Recognized by LysM Receptor-Like Kinase LYR3 in the Legume Medicago truncatula.” Fliegmann J et al. ACS Chem. Biol. 2013 DOI: 10.1021/cb400369u