ヒノキチオールは、ヒノキ科樹木に含まれる抗菌物質。香料としても使われる他、近年になってメラニンの産生を抑える肌の美白作用を持つ可能性も指摘されています[5]。
・詳細
ヒノキチオール(hinokitiol)は、戦前の九帝大のひとつ台湾帝国大学の野副鉄男氏によって、1936年にタイワンヒノキ(Chamaecyparis obtusa )から発見[1]され、構造が推定されました。野副鉄男氏は宮城県の仙台出身です。戦後1948年から東北大学に移り、野副鉄男氏はヒノキチオール推定構造の確定や、ヒノキチオール類縁体の合成研究の中から、非ベンゼン系芳香族化合物の化学を花開かせ、高く評価されました。
8つの共鳴構造のように電子が非局在化し芳香族性を示す(クリックで拡大)
タイワンヒノキから単離されたヒノキチオールとは独立に、ベイスギ(Thuja plicate )から同様の構造をしたツヤプリシン(thujaplicin)が発見され、抗菌活性を持つ天然有機化合物として、1948年のネイチャーに報告[2]されています。現在もヒノキチオールとツヤブリシンの両方の表記が見られます。
ヒノキチオールは総じてヒノキ科に分類される針葉樹に含まれます。ただし、種によって含有量に差があり、ヒノキ(Chamaecyparis obtuse )自体では、ヒノキチオールは少ないとされます[3]。
ヒノキチオールは金属原子と結びつきやすい性質があります。金属原子を補因子として必要とするいくつかの酵素で、阻害活性が確認されています。例えば、アラギドン酸-12-リポキシゲナーゼ[4]やチロシナーゼ[5]などです。
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分子モデル
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参考文献
[1] Tetsuo Nozoe Bulletin of the Chemical Society of Japan 1936
[2] “Antibiotic substances from the heart wood of Thuja plicata” Erdtman H et al. Nature 1948 DOI: 10.1038/161719a0 [3] “Hinokitiol (beta-Thujaplicin) from the Essential Oil of Hinoki Chamaecyparis obtusa.” Kunihide Fujimori et al. J. Essent. Oil Res. 1998 DOI: 10.1080/10412905.1998.9701018 [4] “Hinokitiol, a Selective Inhibitor of the Platelet-Type Isozyme of Arachidonate 12-Lipoxygenase.” Hiroshi Suzuki et al. Biochem. Biophys. Res. Commun. 2000 DOI: 10.1006/bbrc.2000.3390 [5] “Structural insights into the hot spot amino acid residues of mushroom tyrosinase for the bindings of thujaplicins.” Satoshi Takahashi et al. Biomol. Med. Chem. 2010 DOI: 10.1016/j.bmc.2010.08.056