[スポンサーリンク]

天然物

ファイトスルフォカイン (phytosulfokine)

[スポンサーリンク]

ファイトスルフォカイン(phytosulfokine; PSK)とは、アスパラガス(Asparagus oficinalis )培養細胞から細胞増殖を促進する生理活性により見出された植物ホルモン[1]。フィトスルホカインとも呼ばれます。

詳細

ファイトスルフォカインは、硫酸エステル化されたチロシンを持つペプチドホルモンです[1]。ファイトスルフォカイン受容体は、細胞膜画分からの親和クロマトグラフィーおよび光親和標識によって単離されており、細胞膜上にあって、細胞外にロイシンリッチリピート構造を、細胞内にキナーゼ領域を持ちます[2]。ファイトスルフォカインは種子植物で普遍的に見られ、モデル植物のシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana )はもちろんのこと、被子植物だけではなく例えば裸子植物スギ(Cryptomeria japonica )でも確認されています[3]。また、ファイトスルフォカインに構造と機能が類似したペプチドホルモンも他にいくつか単離されています[4],[6]。これらのペプチドホルモンに見られるチロシンのヒドロキシ基における硫酸エステル化は、リボソームで伝令RNAから翻訳されて前駆体ペプチドができた後、ゴルジ体に分布する酵素によって修飾されてなされます[5]。

 

分子モデル

GREEN2013phytosulfokinemov.gif

参考文献

  1. “Phytosulfokine, sulfated peptides that induce the proliferation of single mesophyll cells of Asparagus oficinalis L.” Yoshikatsu Matsubayashi et al. Proc. Natl. Acad. Sci. 1996 DOI: 10.1073/pnas.231490798
  2. “An LRR Receptor Kinase Involved in Perception of a Peptide Plant Hormone, Phytosulfokine.” Yoshikatsu Matsubayashi et al. Science 2002 DOI: 10.1126/science.1069607
  3. “Phytosulfokine Stimulates Somatic Embryogenesis in Cryptomeria japonica.” Tomohiro Igasaki et al. Plant Cell Physiol. 2003 DOI: 10.1093/pcp/pcg161
  4. “Tyrosine-sulfated glycopeptide involved in cellular proliferation and expansion in Arabidopsis.” Yukari Amano et al. Proc. Natl. Acad. Sci. 2007 DOI: 10.1073/pnas.0706403104
  5. “Identification of tyrosylprotein sulfotransferase in Arabidopsis.” Ryota Komori et al. Proc. Natl. Acad. Sci. 2009 DOI: 10.1073/pnas.0902801106
  6. “Secreted Peptide Signals Required for Maintenance of Root Stem Cell Niche in Arabidopsis.” Yo Matsuzaki et al. Science 2010 DOI: 10.1126/science.1191132
Avatar photo

Green

投稿者の記事一覧

静岡で化学を教えています。よろしくお願いします。

関連記事

  1. 重医薬品(重水素化医薬品、heavy drug)
  2. ヘキサン (hexane)
  3. タミフル(オセルタミビル) tamiflu (oseltamiv…
  4. アントシアニン / anthocyanin
  5. グルタミン酸 / Glutamic Acid
  6. 亜酸化窒素 Nitrous oxide
  7. 化学者のためのエレクトロニクス講座~無電解めっきの原理編~
  8. 水 (water, dihydrogen monoxide)

注目情報

ピックアップ記事

  1. 「anti-マルコフニコフ型水和反応を室温で進行させる触媒」エール大学・Herzon研より
  2. 映画007シリーズで登場する毒たち
  3. 核酸医薬の物語3「核酸アプタマーとデコイ核酸」
  4. 日本の海底鉱物資源の開発状況と課題、事業展望【終了】
  5. ダイセルが開発した新しいカラム: DCpak PTZ
  6. 第32回生体分子科学討論会 
  7. 赤絵磁器を彩る絵具:その特性解明と改良
  8. メソリティック開裂 mesolytic cleavage
  9. Zoomオンライン革命!
  10. ヘキサメチレンテトラミン

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2013年8月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  

注目情報

最新記事

有機合成化学協会誌2024年12月号:パラジウム-ヒドロキシ基含有ホスフィン触媒・元素多様化・縮環型天然物・求電子的シアノ化・オリゴペプチド合成

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年12月号がオンライン公開されています。…

「MI×データ科学」コース ~データ科学・AI・量子技術を利用した材料研究の新潮流~

 開講期間 2025年1月8日(水)、9日(木)、15日(水)、16日(木) 計4日間申込みはこ…

余裕でドラフトに収まるビュッヒ史上最小 ロータリーエバポレーターR-80シリーズ

高性能のロータリーエバポレーターで、効率良く研究を進めたい。けれど設置スペースに限りがあり購入を諦め…

有機ホウ素化合物の「安定性」と「反応性」を両立した新しい鈴木–宮浦クロスカップリング反応の開発

第 635 回のスポットライトリサーチは、広島大学大学院・先進理工系科学研究科 博士…

植物繊維を叩いてアンモニアをつくろう ~メカノケミカル窒素固定新合成法~

Tshozoです。今回また興味深い、農業や資源問題の解決の突破口になり得る窒素固定方法がNatu…

自己実現を模索した50代のキャリア選択。「やりたいこと」が年収を上回った瞬間

50歳前後は、会社員にとってキャリアの大きな節目となります。定年までの道筋を見据えて、現職に留まるべ…

イグノーベル賞2024振り返り

ノーベル賞も発表されており、イグノーベル賞の紹介は今更かもしれませんが紹介記事を作成しました。 …

亜鉛–ヒドリド種を持つ金属–有機構造体による高温での二酸化炭素回収

亜鉛–ヒドリド部位を持つ金属–有機構造体 (metal–organic frameworks; MO…

求人は増えているのになぜ?「転職先が決まらない人」に共通する行動パターンとは?

転職市場が活発に動いている中でも、なかなか転職先が決まらない人がいるのはなぜでしょう…

三脚型トリプチセン超分子足場を用いて一重項分裂を促進する配置へとペンタセンクロモフォアを集合化させることに成功

第634回のスポットライトリサーチは、 東京科学大学 物質理工学院(福島研究室)博士課程後期3年の福…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP