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天然物

ミヤコシンA (miyakosyne A)

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ミヤコシンAは、海綿Petrosia sp.から発見された、細胞毒性を持つ海産天然化合物HeLa細胞に対する半数効果濃度IC50は、0.10マイクログラム毎ミリリットル[1]。?

  • 詳細 ?

ミヤコシンAは、宮古海丘の水深415メートルで採取された海綿Petrosia sp.の冷凍サンプル730グラムから、わずかに21.6mgが得られました[1]。平面構造ははっきりと決定されたものの、化学式中央の不斉点だけは、核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance; NMR)はじめ各スペクトル情報からは決まりませんでした。

このような経緯から、新たに開発された結晶スポンジ法(ケムステ記事「ナノグラムの油状試料もなんのその!結晶に封じて分子構造を一発解析!」参照)の威力を試すサンプルに選ばれ、おぼろげな分子の姿を写した電子密度図を得るに至っています[2]。

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得られた電子密度図[2]

最終的には、大類酸(Ohrui’s acid)を使った誘導体化で、不斉点の正しい立体化学が判明しました[3]。この大類法を用いて決めた不斉点の立体化学は、全合成によって得られたミヤコシンAを分析することで確かめられました[4]。

?

  • 参考文献?
[1] “Miyakosynes A-F, cytotoxic methyl branched acetylenes from a marine sponge Petrosia sp.” Yuki Hitora et al. Tetrahedron 2011 DOI: 10.1016/j.tet.2011.04.085

[2] “X-ray analysis on the nanogram to microgram scale using porous complexes.” Yasuhide Inokuma et al. Nature 2013 DOI: 10.1038/nature11990

[3] “On the assignment of the absolute configuration at the isolated methyl branch in miyakosyne A, cytotoxic linear acetylene, from the deep-sea marine sponge Petrosia sp.”? Yuki Hitora et al. Tetrahedron 2013 DOI: 10.1016/j.tet.2013.11.013

[4] “Chemoenzymatic synthesis and HPLC analysis of the stereoisomers of miyakosyne A [(4E,24E)-14-methyloctacosa-4,24-diene-1,27-diyne-3,26-diol], a cytotoxic metabolite of a marine sponge Petrosia sp., to determine the absolute configuration of its major component as 3R,14R,26R .”? Kenji Mori et al. Tetrahedron 2014 DOI: 10.1016/j.tet.2013.11.045

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静岡で化学を教えています。よろしくお願いします。

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