[スポンサーリンク]

天然物

緑色蛍光タンパク Green Fluorescent Protein (GFP)

[スポンサーリンク]

緑色蛍光タンパク(Green Fluorescent Protein, GFP)は、 オワンクラゲ(Aequorea victoria)から単離される蛍光タンパク質の一種。

用途・歴史

ノーベル賞学者・下村脩らによってオワンクラゲから1962年に単離・精製された。[1]

jerryfish.jpg

(写真:Wikipediaより引用)

分子量は約27 kDaであり、238のアミノ酸から構成されている。 三次元構造は、1996年にX線結晶構造解析法によって解析されている[2]。 冒頭図のように11のβシート単位が螺旋状に組織化し、発色団(白色部分)を包む形で円筒構造が組まれている。この筒状構造は、外部要因から発色団を守って発光効率と寿命を向上させる、バリアー的な役割も果たしているとされる。

オワンクラゲの体内では、カルシウム応答型タンパクイクオリン(aequorin)とセットで発光する。すなわち、イクオリンがまずエネルギーを吸収し、放出された青色蛍光をGFPが受け取って緑色に光る。

GFPの発光団は近紫外光(397nm)を吸収し、緑色可視光(509nm)を放出する。発色団はSer65-Tyr66-Gly67の3アミノ酸残基が環化・酸化を起こし、自発的に形成される。この環化反応は、通常は起こりにくいが、コンフォメーションが適切な配置をとっているため、GFPにおいては特別に進行しやすくなっている。

GFP_3.gif同じくノーベル賞学者のChalfieTsienらによって生命現象追跡ツールとしての可能性が示され、爆発的に普及した。具体的な応用などについては、「2008年ノーベル化学賞」を参照。

分子モデル

関連文献

  1.  Shimomura, O. et al. J. Cell. Comp. Physiol. 1962, 59, 223. doi:10.1002/jcp.1030590302
  2.  (a) Tsien, R. Y.; Prasher, D. et al. Science 1996, 273, 1392. DOI: 10.1126/science.273.5280.1392 (b) Phillips, G. N. Jr. Nat. Biotechnol. 1996, 14, 1246. doi:10.1038/nbt1096-1246
  3.  Nienhaus, G. U. Angew. Chem. Int. Ed. 2008, 47, 8992.  doi:10.1002/anie.200804998

関連動画

 

関連書籍&商品

[amazonjs asin=”4621080946″ locale=”JP” title=”光る遺伝子 オワンクラゲと緑色蛍光タンパク質GFP”][amazonjs asin=”4897069300″ locale=”JP” title=”顕微鏡の使い方ノート―はじめての観察からイメージングの応用まで (無敵のバイオテクニカルシリーズ)”][amazonjs asin=”B00AZ2PMQ0″ locale=”JP” title=”GFP Whole Cell Microbial Biosensors: Scale-up and scale-down effects on biopharmaceutical processes”][amazonjs asin=”B006YSXE0A” locale=”JP” title=”ミズクラゲ 単品 ネイチャーテクニカラーMONO クラゲソフトストラップ  より”][amazonjs asin=”4797346744″ locale=”JP” title=”発光生物のふしぎ 光るしくみの解明から生命科学最前線まで (サイエンス・アイ新書)”]

外部リンク

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. メントール /menthol
  2. ボンビコール /bombykol
  3. サラシノール/Salacinol
  4. チアミン (thiamin)
  5. ビタミンB12 /vitamin B12
  6. ジブロモインジゴ dibromoindigo
  7. ギ酸 (formic acid)
  8. テトラメチルアンモニウム (tetramethylammoniu…

注目情報

ピックアップ記事

  1. フラスコ内でタンパクが連続的に進化する
  2. 第99回日本化学会年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part II
  3. 光学活性なα-アミノホスホン酸類の環境に優しい新規合成法を開発
  4. 人物でよみとく化学
  5. 化学者の単語登録テクニック
  6. 特許の基礎知識(3) 方法特許に注意! カリクレイン事件の紹介
  7. 光で形を変える結晶
  8. 硫黄 Sulfurーニンニク、タマネギから加硫剤まで
  9. シンクロトロン放射光を用いたカップリング反応機構の解明
  10. 多核テルビウムクラスターにおけるエネルギー移動機構の解明

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年1月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  

注目情報

最新記事

有機合成化学協会誌2024年12月号:パラジウム-ヒドロキシ基含有ホスフィン触媒・元素多様化・縮環型天然物・求電子的シアノ化・オリゴペプチド合成

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年12月号がオンライン公開されています。…

「MI×データ科学」コース ~データ科学・AI・量子技術を利用した材料研究の新潮流~

 開講期間 2025年1月8日(水)、9日(木)、15日(水)、16日(木) 計4日間申込みはこ…

余裕でドラフトに収まるビュッヒ史上最小 ロータリーエバポレーターR-80シリーズ

高性能のロータリーエバポレーターで、効率良く研究を進めたい。けれど設置スペースに限りがあり購入を諦め…

有機ホウ素化合物の「安定性」と「反応性」を両立した新しい鈴木–宮浦クロスカップリング反応の開発

第 635 回のスポットライトリサーチは、広島大学大学院・先進理工系科学研究科 博士…

植物繊維を叩いてアンモニアをつくろう ~メカノケミカル窒素固定新合成法~

Tshozoです。今回また興味深い、農業や資源問題の解決の突破口になり得る窒素固定方法がNatu…

自己実現を模索した50代のキャリア選択。「やりたいこと」が年収を上回った瞬間

50歳前後は、会社員にとってキャリアの大きな節目となります。定年までの道筋を見据えて、現職に留まるべ…

イグノーベル賞2024振り返り

ノーベル賞も発表されており、イグノーベル賞の紹介は今更かもしれませんが紹介記事を作成しました。 …

亜鉛–ヒドリド種を持つ金属–有機構造体による高温での二酸化炭素回収

亜鉛–ヒドリド部位を持つ金属–有機構造体 (metal–organic frameworks; MO…

求人は増えているのになぜ?「転職先が決まらない人」に共通する行動パターンとは?

転職市場が活発に動いている中でも、なかなか転職先が決まらない人がいるのはなぜでしょう…

三脚型トリプチセン超分子足場を用いて一重項分裂を促進する配置へとペンタセンクロモフォアを集合化させることに成功

第634回のスポットライトリサーチは、 東京科学大学 物質理工学院(福島研究室)博士課程後期3年の福…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP