亜酸化窒素はN2Oの構造を持つガスで、窒素酸化物の一種である。麻酔効果があるため、笑気ガス(Laughing gas)とも呼ばれている。
基本物性と製造法
沸点は-90.86℃で無色の気体である。類似のガスに猛毒のNO2やN2O4などがあるが、亜酸化窒素は毒性はなく麻酔性がある。工業的な製法は、硝酸カリウムと硝酸ソーダの共融混合物を約247℃に保持し、撹拌しながら80%硝酸アンモニウム水溶液を滴下させながら分解させることで亜酸化窒素が得られる。また、アンモニアを触媒下で酸化させたり、スルファミン酸と硝酸の反応でも工業的に得られる。
麻酔剤としての利用
上記の通り、亜酸化窒素は麻酔作用があるため、病院で麻酔として利用されている。そもそ亜酸化窒素を吸入した患者の顔が筋肉の弛緩により笑っているように見えたからということからも笑気ガスという名前がついたと言われている。
最近では、亜酸化窒素が脱法ドラックとして使われていることが明らかになっていて、インターネットでは、シバガス(SIVAGUS)という名で自転車タイヤの空気補充用として販売されている。しかしながら、タイヤに入れても効果はなく吸引を目的としているようである。このような状況に対して和歌山県・鳥取県では県条例により販売の規制をはじめた。そもそもガスを他の容器に移すことは、高圧ガス保安法の製造に該当する作業であり、都道府県知事の許可が必要である。そのため亜酸化窒素を小分けにしているのならば、その行為自体が違法である。そして、2015年の9月にこの事態を重く見た厚生労働省は、亜酸化窒素を指定薬物に指定することを決定した。
エスプーマのガス
エスプーマ(ESPUMA)とはスペイン語で泡を意味し、ムースのような泡を使う調理器具、調理法のことである。
亜酸化窒素はこの泡を作る際に使われるが、日本では2006年になってから食品添加物として認定されたことと、欧米で使われている亜酸化窒素の小型カートリッジが日本では認められていないため、一式を揃えるのに多くの投資が必要なことから業務用向けとして使われている。二酸化炭素でも泡を作ることはできるが、食品が酸っぱくなってしまうという欠点がある。
車の出力アップ
映画「ワイルド・スピード」シリーズでハンドル近くのボタンを押すと、急に車が加速する。これも亜酸化窒素の実際の応用例である。亜酸化窒素は高温下で窒素と酸素に分解する。すると、窒素二分子と酸素一分子が生成する。これは、空気中の酸素の存在比率よりも大きいため、エンジン内の燃焼効率が上がり高出力が得られる。
この応用は、ナイトラス・オキサイド・システム(NOS)としばし呼ばれるが、それはホーリー・パフォーマンス・プロダクツ社の米国における登録商標である。日本では、「ニトロ」と呼ばれるが、それ故にニトログリセリンやニトロメタンと勘違いされ、亜酸化窒素は爆発すると誤認されている。しかしながら、亜酸化窒素は酸素と同じ助燃性のガスであり、爆発限界値を持たないので、それ単体では爆発しない。「ワイルド・スピードMAX」では、主人公が亜酸化窒素のボンベのバルブを開放し、シガーライターをオンにして逃げると、すぐに車が爆発する場面があるが、実際には起こらないと考えられる。
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