[スポンサーリンク]

身のまわりの分子

カルタミン

[スポンサーリンク]

カルタミン(カルサミン, カーサミン, carthamin)は、紅花(Carthamus tinctorius L.)の紅色のもととなる色素。着色料や染料として古くから使用されてきた。

カルタミンの由来

紅花の花には黄色色素サフロールイエロー(safflor yellow)と紅色色素カルサミン(carthamin)の2種類の色素が含まれている。
サフロールイエローは水溶性で比較的簡単に色素をとることができるが、カルタミンは水に溶けないため、紅餅を作って色素を取り出すなどの手法がとられてきた。カルタミンは発色がよく、高級な衣料品や芸者や歌舞伎役者の化粧の紅などに利用されてきた。

カルタミンの化学

1929年に黒田チカがカルタミンの構造について報告した[1,2]。

carthamin_3黒田チカによって提出された構造(ただし立体化学に関する記述は無い)

しかし、この提出構造には誤りがあることが後年明らかにされており、カルタミンは同一の部分構造が一炭素を介して二量化したような構造である。

carthamin_1

紅花ははじめ黄色く、徐々に紅色に変化する。

cathamin_4

この色調の変化はサフロールイエローからカルタミンが徐々に生成していくことに由来する。カルタミンの生合成はカルコン誘導体からはじまり、サフロールイエローB(黄色)を経由してプレカルタミン(黄色)が生成し、酸化的な脱炭酸反応により紅色のカルタミンが生じる[3,4]。

carthamin_2

 

参考文献

[1] Kuroda, C. Proc. Imp. Acad. 1929, 5, 32. DOI:10.2183/pjab1912.5.32

[2] Kuroda, C. Proc. Imp. Acad. 1929, 5, 82. DOI:10.2183/pjab1912.5.82

[3] Onodera, J.; Kawamoto, K.; Matsuba, S.; Sato, S.; Kojima, H.; Kaneya, Y.; Obara, H. Chem. Lett. 2006, 24, 901. DOI:10.1246/cl.1995.901

[4] Cho, M.; Paik, Y.; Hahn, T. J. Agric. Food Chem. 2000, 48, 3917. DOI:10.1021/jf9911038

 

関連書籍

[amazonjs asin=”4759814159″ locale=”JP” title=”機能性色素の科学: 色素の基本から合成・反応,実際の応用まで (DOJIN ACADEMIC SERIES)”] [amazonjs asin=”4781307086″ locale=”JP” title=”色素増感太陽電池の最新技術〈2〉 (エレクトロニクスシリーズ)”] [amazonjs asin=”4787709062″ locale=”JP” title=”理系の扉を開いた日本の女性たち―ゆかりの地を訪ねて”]

 

関連リンク

 

 

 

Avatar photo

ペリプラノン

投稿者の記事一覧

有機合成化学が専門。主に天然物化学、ケミカルバイオロジーについて書いていきたいと思います。

関連記事

  1. ペンタレネン Pentalenene
  2. ジブロモインジゴ dibromoindigo
  3. カフェイン caffeine
  4. グリチルリチン酸 (glycyrrhizic acid)
  5. ヘキサン (hexane)
  6. イベルメクチン /Ivermectin
  7. バイアグラ /viagra
  8. ノビリシチンA Nobilisitine A

注目情報

ピックアップ記事

  1. 有機レドックスフロー電池 (ORFB)の新展開:高分子を活物質に使う
  2. アルキン来ぬと目にはさやかに見えねども
  3. メントール /menthol
  4. 第145回―「ランタニド・アクチニド化合物の合成と分光学研究」Christopher Cahill教授
  5. ヘテロ ディールス・アルダー反応 Hetero Diels-Alder Reaction
  6. 糸状菌から新たなフラボノイド生合成システムを発見
  7. 米国、カナダにおけるシェール・ガスによるLNGプロジェクトの事業機会【終了】
  8. ケムステ版・ノーベル化学賞候補者リスト【2020年版】
  9. 二酸化炭素をはきだして♪
  10. 「anti-マルコフニコフ型水和反応を室温で進行させる触媒」エール大学・Herzon研より

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2014年11月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930

注目情報

最新記事

新たな有用活性天然物はどのように見つけてくるのか~新規抗真菌剤mandimycinの発見~

こんにちは!熊葛です.天然物は複雑な構造と有用な活性を有することから多くの化学者を魅了し,創薬に貢献…

創薬懇話会2025 in 大津

日時2025年6月19日(木)~6月20日(金)宿泊型セミナー会場ホテル…

理研の研究者が考える未来のバイオ技術とは?

bergです。昨今、環境問題や資源問題の関心の高まりから人工酵素や微生物を利用した化学合成やバイオテ…

水を含み湿度に応答するラメラ構造ポリマー材料の開発

第651回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院工学研究科(大内研究室)の堀池優貴 さんにお願い…

第57回有機金属若手の会 夏の学校

案内:今年度も、有機金属若手の会夏の学校を2泊3日の合宿形式で開催します。有機金…

高用量ビタミンB12がALSに治療効果を発揮する。しかし流通問題も。

2024年11月20日、エーザイ株式会社は、筋萎縮性側索硬化症用剤「ロゼバラミン…

第23回次世代を担う有機化学シンポジウム

「若手研究者が口頭発表する機会や自由闊達にディスカッションする場を増やし、若手の研究活動をエンカレッ…

ペロブスカイト太陽電池開発におけるマテリアルズ・インフォマティクスの活用

持続可能な社会の実現に向けて、太陽電池は太陽光発電における中心的な要素として注目…

有機合成化学協会誌2025年3月号:チェーンウォーキング・カルコゲン結合・有機電解反応・ロタキサン・配位重合

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年3月号がオンラインで公開されています!…

CIPイノベーション共創プログラム「未来の医療を支えるバイオベンチャーの新たな戦略」

日本化学会第105春季年会(2025)で開催されるシンポジウムの一つに、CIPセッション「未来の医療…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー