[スポンサーリンク]

その他

サブフタロシアニン SubPhthalocyanine

[スポンサーリンク]

自然界に存在するポルフィリンporphyrins(Ps)とその類縁体であるフタロシアニンphthalocyanines(Pcs)は、最も良く研究されている大環状化合物である。その歴史を遡るとWoodwardらによるsapphyrinの合成にたどり着く。

 

しかしながら、PsやPcsを少し縮環した化合物、すなわちサブポルフィリンSubPorphyrins(SubPs)、サブフタロシアニンSubPhthalocyanines(SubPcs)などの研究はあまりなされてこなかった。これら縮環したSubPsやSubPcsは、中心がホウ素の化合物しか知られていない。この中でとりわけ有名なのがサブフタロシアニン(SubPc)である。14π芳香族性を有する。

 

subphthalocyanine1

 

合成法

サブフタロシアニンが発見されたのは、1972年のことである。MellerとOsskoらは、中心にホウ素を有するフタロシアニンの合成を目指し、フタロニトリルと三塩化ホウ素を200ºCで加熱した。予想に反し、フタロシアニンは得られず、代わりに紫色の化合物が得られた。後に解析によりそれはchloro-SubPcである事が判明した。現在では、サブフタロシアニンは約90%の収率で合成されている。

 

subphthalocyanine2

 

応用研究

3:1フタロシアニンの合成原料

フタロシアニンは、4つのイソインドリン環が窒素原子を介して架橋したものであり、高い対称性を有している。この4つのイソインドリン環のうち1つまたは2つのイソインドリン環が違う構造を有する、対称性の低いフタロシアニンの選択的合成は困難とされてきた。

小林らは、サブフタロシアニンにジイミノイソインドリンを作用させる事により選択的に3:1フタロシアニンを合成する方法を報告した[2]

 

subphthalocyanine3

 

 参考文献

[1] Claessens, C. G.; González-Rodríguez, D.; Rodríguez-Morgade, M. S.; Medina, A.; Torres, T. Chem. Rev. 2014, 114, 2192. DOI: 10.1021/cr400088w

[2] Kobayashi, N.; Kondo, R.; Nakajima, S.; Osa, T. J Am Chem Soc 1990, 112, 9640. DOI: 10.1021/ja00182a034

 

 

 

 

Avatar photo

ゼロ

投稿者の記事一覧

女の子。研究所勤務。趣味は読書とハイキング ♪
ハンドルネームは村上龍の「愛と幻想のファシズム」の登場人物にちなんでま〜す。5 分後の世界、ヒュウガ・ウイルスも好き!

関連記事

  1. オーラノフィン (auranofin)
  2. ヘリウム (helium; He)
  3. ボンビコール /bombykol
  4. アブシジン酸(abscisic acid; ABA)
  5. ペラミビル / Peramivir
  6. メラトニン melatonin
  7. フッ素ドープ酸化スズ (FTO)
  8. ペルフルオロデカリン (perfluorodecalin)

注目情報

ピックアップ記事

  1. 有機EL、寿命3万時間 京セラ開発、18年春に量産開始
  2. 18万匹のトコジラミ大行進 ~誘因フェロモンを求めて①~
  3. 印民間で初の17億ドル突破、リライアンスの前3月期純益
  4. 分子素子の働き せっけんで確認
  5. 教養としての化学入門: 未来の課題を解決するために
  6. Arborisidineの初の全合成
  7. 細胞が分子の3Dプリンターに?! -空気に触れるとファイバーとなるタンパク質を細胞内で合成-
  8. 米国へ講演旅行へ行ってきました:Part III
  9. 「同時多発研究」再び!ラジカル反応を用いたタンパク質の翻訳後修飾
  10. 日本で始まる最先端半導体の開発 ~多くの素材メーカーが参画~

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2014年11月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930

注目情報

最新記事

人工光合成の方法で有機合成反応を実現

第653回のスポットライトリサーチは、名古屋大学 学際統合物質科学研究機構 野依特別研究室 (斎藤研…

乙卯研究所 2025年度下期 研究員募集

乙卯研究所とは乙卯研究所は、1915年の設立以来、広く薬学の研究を行うことを主要事業とし、その研…

次世代の二次元物質 遷移金属ダイカルコゲナイド

ムーアの法則の限界と二次元半導体現代の半導体デバイス産業では、作製時の低コスト化や動作速度向上、…

日本化学連合シンポジウム 「海」- 化学はどこに向かうのか –

日本化学連合では、継続性のあるシリーズ型のシンポジウムの開催を企画していくことに…

【スポットライトリサーチ】汎用金属粉を使ってアンモニアが合成できたはなし

Tshozoです。 今回はおなじみ、東京大学大学院 西林研究室からの研究成果紹介(第652回スポ…

第11回 野依フォーラム若手育成塾

野依フォーラム若手育成塾について野依フォーラム若手育成塾では、国際企業に通用するリーダー…

第12回慶應有機化学若手シンポジウム

概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大学理工学部・…

新たな有用活性天然物はどのように見つけてくるのか~新規抗真菌剤mandimycinの発見~

こんにちは!熊葛です.天然物は複雑な構造と有用な活性を有することから多くの化学者を魅了し,創薬に貢献…

創薬懇話会2025 in 大津

日時2025年6月19日(木)~6月20日(金)宿泊型セミナー会場ホテル…

理研の研究者が考える未来のバイオ技術とは?

bergです。昨今、環境問題や資源問題の関心の高まりから人工酵素や微生物を利用した化学合成やバイオテ…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー