チアミンは水溶性ビタミンのひとつ。ビタミンB1とも呼ばれます。脚気を予防する因子として、1910年に鈴木梅太郎氏が、米ぬかから発見して、オリザニンと命名した物質です[1]。欧米で再発見され、硫黄原子を持つビタミン分子ということで、チアミンと命名され、今に至ります。
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土壌微生物や植物と異なり、わたしたちヒトはチアミンを生合成できません。したがって、食事からの摂取に頼っています。チアミンが欠乏すると、まず脚気の症状が出ます。チアミンは体内でチアミン二リン酸のかたちに変換され、いく種類かの酵素の機能を補助します。
チアミンの生合成は原核生物と真核生物で異なります。真核生物での作り方は変わっていて、チアゾール環はシステイン[2]、ピリミジン環はヒスチジン[3]を、生合成を仲介するタンパク質からちぎり取ってできます。1回きりで使い捨て、タンパク質を酵素代わりに使用しているのです(ケムステ記事「触媒なの??自殺する酵素?」参考)。細菌などの原核生物では、この限りではありません。
参考論文
[1] “糠中の一有効成分に就て” 鈴木 梅太郎, 島村 虎猪 東京化学会誌 1911 DOI: 10.1246/nikkashi1880.32.4
[2] “Saccharomyces cerevisiae THI4p is a suicide thiamine thiazole synthase.” Chatterjee A et al. Nature 2011 DOI: 10.1038/nature10503
[3] “Thiamin Pyrimidine Biosynthesis in Candida albicans: A Remarkable Reaction between Histidine and Pyridoxal Phosphate.” Lai RY et al. J. Am. Chem. Soc. 2012 DOI: 10.1021/ja302474a