シラフルオフェンは、ケイ素原子を含んだ構造が特有な、農業害虫の駆除などの用途で使われる殺虫剤。除虫菊の殺虫成分であるピレスリンの構造を真似た上で、魚への毒性などのぞまない作用を避けるように改良されて誕生しました。
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詳細
シラフルオフェン(silafluofen)は、1984年に大日本除虫菊株式会社、1985年にバイエルクロップサイエンス社が、それぞれ独立に開発した殺虫剤。1分子のシラフルオフェンは、1原子のケイ素原子を持ちます。
14属元素の特徴比較
シラフルオフェンは、除虫菊として知られるシロバナムシヨケギク(Tanacetum cinerariifolium )の有効成分として発見されたピレスリン(pyrethrin)の構造を参考にして合成された化合物(ピレスロイド)のひとつです。ピレスリンおよびシラフルオフェンは、昆虫の神経細胞にあるナトリウムイオンチャネルを開きっぱなし状態にさせます。これにより、昆虫は運動失調、痙攣に引き続き麻痺し、最終的には死に至ります。
ケイ素置換で魚毒性を回避
昆虫への作用経路は、シラフルオフェンの蒸気圧が低く、植物体への浸透能力も弱いことから、食害による取り込みや、植物体表面での接触による取り込みによるものと考えられています。そのため、農業害虫の中でも、ウンカ・カメムシ・イナゴなどに対して抜群の効き目を示します。シラフルオフェンは、従来の合成プレスロイドと異なり、哺乳類・鳥類に加えて魚類への毒性が低く改善され、河川や湖沼に流れ込んでも環境に思わぬ影響を与えにくく、安全性の高さが特徴です。ケイ素原子に置換したことで結合長が変化し、それが昆虫のナトリウムチャネルと、魚類のナトリウムチャネルを上手く認識し分けているのだと考えられています。
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分子モデル
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参考文献
Sieburth S et al. Pestic Sci. 1990 DOI: 10.1002/ps.2780290210
[4] シラフルオフェン農薬妙録http://www.acis.famic.go.jp/syouroku/silafluofen/index.htm
[5] 化学ミュージアム「先生は除虫菊、理想的な殺虫成分ピレスロイド」http://www.chemuseum.com/professional/report/11/
[6] 除虫菊に含まれる生理活性成分の生合成酵素を単離