[スポンサーリンク]

その他

オリンピセン (olympicene)

[スポンサーリンク]

オリンピセンは炭素と水素からなる物質で、まるでオリンピックのシンボルマークかのようなかたちをした分子です。

 

  • 詳細

オリンピセン(olympicene)とは、炭素数19・水素数12であり分子式C19H12で表される炭化水素のひとつ。分子のふちにある炭素原子11個のうち、炭素原子10個には水素原子1個ずつが結合しており、残り炭素原子1個には水素原子2個が結合しています。水素原子2個が結合している位置によっていくつかの異性体が存在します。2個ついている炭素原子から、水素原子1個が取れた分子のうち、分子全体の電荷がプラスでもマイナスでもないものは、オリンピセンラジカルと呼ばれます。オリンピセンがラジカルになった場合、電子の非局在化が起こるため、先に述べた異性体の区別はなくなります。

オリンピセンのラジカルC19H11は、2012年ロンドンオリンピックに際し、イギリスのWarwick大学ら[2]により、原子間力顕微鏡で観察され、オリンピックシンボルと同じ分子のかたちが画像になったことで話題になりました。撮影の原理は2009年にサイエンスに報告されたものによります[1]。原子間力顕微鏡での撮影に利用された、金属へのオリンピセンラジカルの相互作用は、オリンピセンの分子間力によります[3]。

化学ファン・ライターの間では、日本も負けられないと、2020年東京オリンピックに向けて奇抜なオリンピック分子が作られないかと、期待の声もちらほら[4]。

6840960272_cd3381305a_n.jpg

原子間力顕微鏡で観察[2]

 

  • 分子モデル (GIFアニメーションの動作確認:Internet Explorer, Google Chrome)

GREEN2013olympicene.gif

 

  • 参考文献・ウェブサイト

[1] “The Chemical Structure of a Molecule Resolved by Atomic Force Microscopy.” Gross L et al. Science 2009 DOI: 10.1126/science.1176210

[2] Olympicene: Doodle to Stunning image of smallest possible 5 rings (http://ibmresearchnews.blogspot.co.uk/2012/05/olympicene-doodle-to-stunning-image-of.html)

[3] “Effect of van der Waals Interactions on the Adsorption of Olympicene Radical on Cu(111): Characteristics of Weak Physisorption versus Strong Chemisorption.” Yildrim H et al. J. Phys. Chem. C 2013 DOI: 10.1021/jp311361e

[4] 有機化学美術館・オリンピック分子登場(http://blog.livedoor.jp/route408/archives/52024856.html)

Avatar photo

Green

投稿者の記事一覧

静岡で化学を教えています。よろしくお願いします。

関連記事

  1. 2,5-ジ-(N-(­­­­–)-プロイル)-パラ-ベンゾキノン…
  2. トロンボキサンA2 /Thromboxane A2
  3. 尿酸 Uric Acid 〜痛風リスクと抗酸化作用のジレンマ〜
  4. ヘロナミドA Heronamide A
  5. ロピニロールのメディシナルケミストリー -iPS創薬でALS治療…
  6. 塩化ラジウム223
  7. フッ素ドープ酸化スズ (FTO)
  8. 嗚呼、美しい高分子の世界

注目情報

ピックアップ記事

  1. ランタノイド Lanthanoid
  2. 「新反応開発:結合活性化から原子挿入まで」を聴講してみた
  3. イオン液体ーChemical Times特集より
  4. 【速報】Mac OS X Lionにアップグレードしてみた
  5. 書物から学ぶ有機化学 1
  6. 除虫菊に含まれる生理活性成分の生合成酵素を単離
  7. 【書籍】電気化学インピーダンス 数式と計算で理解する基礎理論
  8. F. S. Kipping賞―受賞者一覧
  9. 有機反応を俯瞰する ー付加脱離
  10. 産業紙閲覧のすゝめ

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2013年9月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30  

注目情報

最新記事

MEDCHEM NEWS 34-1 号「創薬を支える計測・検出技術の最前線」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

医薬品設計における三次元性指標(Fsp³)の再評価

近年、医薬品開発において候補分子の三次元構造が注目されてきました。特に、2009年に発表された論文「…

AI分子生成の導入と基本手法の紹介

本記事では、AIや情報技術を用いた分子生成技術の有機分子設計における有用性や代表的手法について解説し…

第53回ケムステVシンポ「化学×イノベーション -女性研究者が拓く未来-」を開催します!

第53回ケムステVシンポの会告です!今回のVシンポは、若手女性研究者のコミュニティと起業支援…

Nature誌が発表!!2025年注目の7つの技術!!

こんにちは,熊葛です.毎年この時期にはNature誌で,その年注目の7つの技術について取り上げられま…

塩野義製薬:COVID-19治療薬”Ensitrelvir”の超特急製造開発秘話

新型コロナウイルス感染症は2023年5月に5類移行となり、昨年はこれまでの生活が…

コバルト触媒による多様な低分子骨格の構築を実現 –医薬品合成などへの応用に期待–

第 642回のスポットライトリサーチは、武蔵野大学薬学部薬化学研究室・講師の 重…

ヘム鉄を配位するシステイン残基を持たないシトクロムP450!?中には21番目のアミノ酸として知られるセレノシステインへと変異されているP450も発見!

こんにちは,熊葛です.今回は,一般的なP450で保存されているヘム鉄を配位するシステイン残基に,異な…

有機化学とタンパク質工学の知恵を駆使して、カリウムイオンが細胞内で赤く煌めくようにする

第 641 回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院理学系研究科化学専攻 生…

CO2 の排出はどのように削減できるか?【その1: CO2 の排出源について】

大気中の二酸化炭素を減らす取り組みとして、二酸化炭素回収·貯留 (CCS; Carbon dioxi…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー