二酸化炭素は無色無臭の常温気体。石灰石の熱分解や、有機物の燃焼によって得られます。二酸化炭素は、地表から放出された赤外線を吸収し、再放出して地表に戻す性質があるため、大量に放出すると地球温暖化の原因になると懸念されています。
二酸化炭素の状態変化
二酸化炭素は低温にすると気体から固体に変化します。この温度は1気圧の場合およそマイナス80度です。二酸化炭素の固体はドライアイスと呼ばれます。ドライアイスは低温を得るために利用されています。昇華の例としても、小中学校の理科の授業の中で、ドライアイスはおなじみです。昇華させずに、二酸化炭素の液体を得るには、少なくともおよそ5気圧の加圧が必要です。
二酸化炭素の水溶液
二酸化炭素は水に少し溶け、炭酸となって電離するため、水溶液は弱い酸性を示します。炭酸は2価の酸です。口の中で気泡がはじける感触がここちよく、これらは炭酸飲料として市販されています。
二酸化炭素とアルカリの反応
二酸化炭素はアルカリ水溶液に吸収されやすい性質があります。例えば、水酸化ナトリウム水溶液の場合は、二酸化炭素が吸収されると炭酸ナトリウムを生じます。水酸化ナトリウム水溶液を作り置きして放置することが好まれない理由は、このためです。
また、水酸化カルシウムの場合は二酸化炭素と反応すると炭酸カルシウムを生じます。炭酸カルシウムは水にほとんど溶けないため、白い沈殿が見られます。これは、小学校から中学校・高等学校まで理科実験で二酸化炭素の検出によく使われる性質です。さらに二酸化炭素を封入し続けると、水溶液のアルカリ性が弱まり、こうなると沈殿していた炭酸カルシウムは炭酸水素カルシウムになって再び溶けます。この沈殿と再溶解は、鍾乳洞の形成を理解する上で重要な項目の1つです。
二酸化炭素とヒト
ヒトを含め多くの生き物は呼吸をします。ヒトの吐く息には、吸う息よりも多くの二酸化炭素が含まれています。密閉された室内に人がたくさんいると、二酸化炭素の濃度が高まり、頭がぼーっとしたり、気分が悪くなったりすることもあるので、こまめに喚起しましょう。
ヒトの味覚と言えば、古典的には甘味・酸味・苦味・塩味・旨味です。辛味は痛みと同じため除外します。シュワシュワ感の中でわずかにある炭酸の味は少し変わっています。最近になって、クエン酸など一般の酸味は分かるものの、炭酸の酸味は分からないマウスが作られ、わたしたちが炭酸の味を感じる仕組みが分かりました。酸味は舌の特定の細胞にあるPKD2Lイオンチャネルというタンパク質で感知されます。このイオンチャネルがなければ、通常の酸味も炭酸の酸味も分かりません。クエン酸など一般のカルボン酸と比べて炭酸は弱い酸であり、割合としてかなり多くが水素イオンを放出せずただの炭酸のかたちで水に溶けています。新たに判明したところによると、PKD2Lイオンチャネルが発現している舌の細胞には、炭酸脱水素酵素CAR4がいっしょに発現しており、これが炭酸を炭酸水素イオンに変換し、放出された水素イオンを感知しているというのです。実際、CAR4遺伝子を欠損したノックアウトマウスでは、神経細胞の活動を調べたところ、クエン酸の酸味は分かるものの、炭酸の酸味は分かりませんでした。このことから、炭酸の味を感じるには、炭酸脱水素酵素CAR4が不可欠であると考えられます[2]。
参考文献
- 数研出版・高等学校教科書・化学・306 (http://www.chart.co.jp/goods/kyokasho/26kyokasho/rika/kagaku/)
- “The Taste of Carbonation.” Chandrashekar J et al. Science 2009 DOI: 10.1126/science.1174601