ヨードホルムCHI3はハロアルカンの1つです。常温で黄色の固体、特有の匂いを持ちます。エタノールよりは強く、次亜塩素酸ナトリウムよりも弱い程度の消毒能力があります。
ヨードホルムはハロホルム反応で作れます。すなわち、水酸化ナトリウムなどでアルカリ性にし、アセトアルデヒド(CH3-CO-H)やアセトン(CH3-CO-CH3)などのメチルケトン(CH3-CO-R)や、エタノール(CH3-CH2-OH)やスレオニン(CH3-CHOH-CHNH3COOH)のようなメチルカルビノール(CH3-CHOH-R)に、ヨウ素I2を作用させると得られます。高校設備でも手軽にヨードホルム反応の実験が可能であり、大学入試問題では有機化学分野の構造決定問題など、作題の都合で大人気の分子です。
ヨードホルム含めハロホルム反応の反応機構は、カルボニルの性質を理解する上で優れています。確かに、電子の流れ図を書いて説明できるようになれば、大学教養レベルはひと満足と言えるでしょう。ただし、専門としてそのまま役に立つかというとそうでもなく、わずか数例を除いて実際の有機合成でのハロホルム反応の適用は限定的です[1]。
ヨードホルムの分子モデル